年末から年始にかけて、居候との出会い、続編です
ウキウキ・ワクワク・キョロキョロと車の中から落ち着かない彼女とショッピングモールに向かった
前に2人で来た時は、夜だったので人も少なかったが、不況の所為か?近場で過ごす人で賑わっていた
俺がショッピングモールを選んだのは、映画館が併設されてるのと、食事する店選びに困らないからだ
しかし、彼女はショッピングモールはショッピングする所と決めてるようで、服選びをし易いように、簡単に脱ぎ着出来る服を選んで来た
別に買ってやっても良いのだが、服を選んでる間、待ってるのが辛い
若い女性向きの店の前や、特に下着専門店の前などで待っていると、通り過ぎる人に、変態と見られないか?と心配になる
若いカップルは、男も下着専門店でも構わず入って行くのには驚いた
今日の彼女は、いつもに増してハイテンションだ
2店舗行ったが買う気配がない
予算を決めてやって無いから、言い難いのかと思って聞くと、まず各店舗の商品を見て、気に入ったのを覚え、手持ちの服とのコーディネート考えてから、実際購入する服を、再度廻って選ぶのだそうだ
説明を聞いてるだけでも疲れた
前は、手持ちの服が無い状態で選んだから、早かったんだと言った
確かに無駄も減るし、衝動買いもなくなるので、財布には優しいが、待つ身には厳しい
来る場所を間違えた
気が遠くなるような買い物に付き合ってられないので、待ち合わせの時間と場所を決め、多目にお金を渡した
「こんなに買ってもいいの?」と目をキラキラさせて言われて、一度出したお金を引っ込めるのもカッコ悪いので「いいよ」と見栄を張った
2時間後に設定したが、時間が惜しいのか?彼女は、走って店に向かった
これといって欲しい物も無いので本を買い、フードコートでコーヒーを飲みながら読んだ
待ち合わせの時間が近付いたので、席を立った
待ち合わせの場所に着くと、買い物袋に囲まれて座ってる彼女に、2人の若い男が話掛けていた
ナンパでもされてるのか?と近付きながら見ていると、彼女の腕を掴んで立たせようとしだした
頭にきたので、読んでいた本で2人の頭を叩いて「俺のツレに何か用か?」と睨んでやった
すると彼女が「クラスメイトなの」と言い、叩いた2人は、頭を押さえながら「痛っ~」と声を揃えた
強引にナンパされてると、早合点した事に気付いたが、後に引けなくなったので「どっか行け!」と言って手の甲を振った
2人は「すいません」と頭を下げながら去った
彼女は「おじさんも、あんな怖い顔するんだね!」と言って、笑いながら腕を組んできた
ちょっと嬉しい
10分位前に着いて座っていたら、クラスメイトに声を掛けられ、ジュースを飲みに誘われ、断ったら、手を引かれたそうだ
知り合いだった点を除けば、間違っていなかったので、ホッとした
買い物途中にも、3回ナンパされたそうだ
彼女を、1人に出来ないと思った
一度車に戻り、大量の袋を置いて、遅い昼食をした
映画でも見ようと思ったが、買い物待ち疲れで、気力が無くなり帰る事にした
家に着いても、彼女のテンションは変わる事なく、俺は、1人のファッションショーを眺めていた
何でどこにも行かないのに、邪魔臭い着替えをするのか?理解に苦しむ
着替えに寝室に行った彼女が、携帯を持って帰ってきた
彼女「ママから電話で、『夕飯を一緒にどうですか?』って」
俺「えっ!今から?」
彼女「そう言ってる」
俺「どこで?」
彼女「分からない、(ママ、どこで食べるの?)分かった。家か?どこかお店でどうですか?って」
俺「ん~。じゃ、美味しい焼肉屋にしよう」
彼女「(焼肉に行こうって)分かった、時間決めて連絡するね。じゃ、後で」
突然の誘いに戸惑い、母親の好き嫌いも聞かず、俺の好物の焼肉を言ってしまった
それより、どうしよう?
挨拶もまともに考えてないのに、会って話せるか?不安になった
俺「お母さん1人かな?」
彼女「多分、あのオッサン付いて来るよ!厚かましいから」
俺「じゃ、2人共、焼肉で大丈夫?」
彼女「ママはお肉大好きだよ!私も好き!オッサンは知らない」
俺「そっか。店、予約するね」
いつも行く、美味しい焼肉屋を、一時間後に予約出来た
彼女に電話で伝えて貰ってる間に、挨拶は?服装は?と必死に考えていた
この母娘に、予定を立てる習慣は無いのか?
いつも唐突な申し出に困惑する
俺の心配を他所に、「臭いが服に付くからな~!」と、彼女は嬉しそうに服を選んでいる
俺は悩んだ挙げ句、服も変えず、挨拶も考えず、行き当たりばったりを選んだ
スーツなんかで行くと、「そうくると思った!」と言われそうなので、裏をかいてみた
車で彼女の家に着くと、2人は家の前で待っていた
俺「こんばんは」
母親「こんばんは。娘がお世話になり、申し訳ありません。急なお誘いで、すいませんでした」
俺「いえ。お気になさらないでください」
母親「こちら、○○さんです」
彼氏「初めまして○○です。お噂はかねがね伺っております。本日は、私まで誘って頂き有り難うございます」
俺「初めまして、○○です。ここで立ち話もなんですから、店に行きましょうか?」
彼女の言うオッサンは、第一印象は好印象だった
車に乗る前に、彼女が小声で「誘ってないのにね」と言うので、笑いを堪えるのに苦労した
車の中では、女2人は楽しそうに話し、男2人は沈黙していた
店では、個室の上座に母親カップルに座って貰い、俺の前に彼氏が座った
注文も済み、俺が母親に挨拶をしようとすると、彼氏が横から「今日はそう言う固い話は無しにしませんか?」と割って入ってきた
ここで済ましておけば、後が楽だと思い、「いいえ、この度、思いがけず彼女と暮らす事になり、本当ならお宅に直ぐにでもお邪魔させて頂かないといけなかったのですが、お許し頂けたお礼の順番が後になり、申し訳ございません」
母親「いいえ。こちらこそ無理なお願いを聞いて頂いて、すいません。こんな我が儘な娘に育てたつもりはないのですが、よろしくお願いいたします」
俺「そう言って頂けると、助かります。これからも宜しくお願いいたします」
母親「こちらこそ、お願いします」
無事?挨拶も済まし、和気藹々と、時間を過ごせた
皆口々に「ホントに美味しい!」と言ってくれたので、この店にして良かったと胸を撫で下ろした
確かに下ネタの多い会話だが、彼女が言う程は、嫌な感じではなかった
それでも時々、彼女が俺の腕を掴むたび「お熱いですね!」と彼氏が言うのが鬱陶しかった
これが本当の父親なら、殴られそうだ
2人を送って家に帰った
彼女が「ありがと!ママと凄く楽しそうに話してたから嬉しかった」と言ってきた
「俺も、お母さんにお礼も言えたし、楽しかったよ」と答えた
彼女「どう?あのオッサン」
俺「彼氏か?いい人なんじやないかな?お母さんとも仲良かったし」
彼女「ママは、おじさんの前だから我慢してたんだよ、いつもはもっと『しっかりして!』って怒ってるもん」
俺「そうなんだ。でも俺は嫌いじゃないな」
彼女「ふ~ん、そうなんだ。きっとおじさんも『嫌い!』って言うと思って、心配して損した」
俺「基本、人を嫌いにならないからね」
彼女「ふ~ん。なんか大人って感じ!」
話をしながらソファーでイチャイチャしていた
買い物と挨拶の緊張疲れから、風呂に入って、直ぐに熟睡した
昨夜の疲れからか?2人共珍しく朝寝坊をした
時計は、11時前を指している
彼女が先に起き、「もう昼前だよ!」と揺すって起こされた
まだ眠かったので、座って揺すってる手を掴み、布団に引き入れ、強く抱き締めて、黙らせた
「息が出来ない~!」と叫ぶので、抱き締めた腕の力を抜いた
布団を跳ね除けて、座った彼女に「殺す気か~!」と怒られた
拗ねてる彼女を宥めながら、身支度をしてリビングに行った
昨夜の食べ過ぎで、2人共晩御飯まで食べない事にし、明日彼女が帰ってしまうので、今日は2人でのんびり過ごす事にした
明日になれば、この同棲生活も終わってしまう
久しぶりに、自分以外の人間を、大切だと思わせてくれた彼女に感謝してる
彼女は「卒業したら、また帰ってくるから、同棲から恋人に一時逆戻りだね!」と笑って言った
嬉しい反面、本当にいいのか?と、いつも葛藤している
母親は「気にしてない!」と言ってくれたが、父親には聞いてない
近隣は嘘を信じてくれてるが、本格的に一緒に住むとなれば、そのままという訳にもいかない
いろんな対応を、考えなくては…
まるで猫のようにじゃれてくる彼女の髪を、手でとかしながら考えていた
日も落ち暗くなると、流石に腹が減ってきた
最後の夜なので、始めて俺が腕を振るった
学生時代に、一人暮らしだったので自信があった
食べながら彼女が「美味しい!こんなに上手いなら、もっと作って貰えば良かった!」と悔やんでいた
「最後の夜だからだよ」とは言わなかった
つづく