年末から年始にかけて、居候との出会い、続編です
暫く二人とも無言で抱き合って寝ていた
胸に顔を埋めた彼女が、鼻をすすり出した
泣かせた様だ
天真爛漫の文字を、人間にすると、彼女に成るんではないか?と思わせる位、泣き顔の似合わない女の子を、泣かせた
抱かれない事が、理由の筈はない
頭を撫でながら「どうして泣くの?」と聞いてみた
すすり泣きだったのが、聞いたとたんに、本気泣きになって、声を出そうとしても呼吸が合わないのか?、言葉にならない
取りあえず、落ち着かせ様と頭を撫でながら、髪にキスを繰り返した
大分落ち着いてきたみたいなので、「もう大丈夫?どうした?」と聞いた
すると彼女が「私の事、嫌いにならないで!なんでもするから、言う事も絶対聞くから、嫌いにだけはならないで!」と泣きながら、嗚咽しなから言ってきた
「嫌いになんかなってないよ。キミはいつもいい子だから大丈夫。心配しなくていいんだよ」と言って頭を撫でてやった
落ち着いた彼女が言うには、Hを途中で止めたのは、自分を嫌いになったからだと思った
1人でコンビニに居る時に、不安で不安で仕方ない時に会って、ず~と優しくされ、今までされた事が無い位、大事に扱って貰って、嬉しくてたまらなかったのに、急に避けられて、嫌われたと思った
また、家を出されたら、コンビニの時に戻ると思うと、怖くて不安でたまらなくなって泣いたそうだ
考えてみれば、賢い子だと言っても18才の女の子なんだよな
言う事も、やってる事も、大人と同じでも、まだまだ自分の感情をコントロールしたり、伝えるのは難しいんだな
冷静に戻った彼女に、約束をした
母親が旅行から帰ってくる3日までは、責任を持って面倒は見る
何があっても、出て行けなんて言わない
今まで通り仲良く過ごす
3つの内、2つは彼女が付け足した
約束をすると安心したのか?すぐに腕の中で、寝息をたてて寝てしまった
時計を見ると、6時前だった
泣いた子をなだめるのに、こんなに時間が掛かるのが分かっていれば、自分の信条なんて捨てて、抱いておけば良かったと反省
この状態で、直ぐに寝れる神経であれば、今後、胃潰瘍やストレス等に苦しめられる事はないだろう
寝れない…
熟睡しているのを見計らって、そっと腕を外し、枕を頭の下に入れて、ベッドを出た
リビングは、冷蔵庫の様に寒かった
エアコンを点け、テレビを点け、寒さ凌ぎにウイスキーをストレートで一気に一杯飲んだ
途中迄見ていた、映画の続きを見ていたら、部屋が暖かくなってきて、ウイスキーの効果も手伝って、そのままソファーで寝てしまった
起こされたのは、昼過ぎだった
何処からか毛布を出してきて、掛けてくれていたので、風邪もひかず、熟睡出来た
しかし、起こし方がヒドイ!
ベランダ側の、大きな窓を全開にし、折角掛けてくれた毛布の足元を、パタパタしている
パジャマ代わりのスウェットに、素足の足元をだ
寒さを感じ、足元を見ると、満面の笑で、小悪魔がパタパタしていた
「何してるの?」と、まだ起きて無い頭で聞くと、「おはよ!お昼ですよ!」と言うではないか
俺が聞きたいのは、(こんなに室温下げて、気持ち良く寝てる相手に【何をさらしとんじゃ~~!!!】)って事なんですけど?
なんて言える筈も無く
「おはよ。起きるから、パタパタ止めて」とお願いした
すると、不敵な笑みを浮かべながら、「起きるんだから、毛布はいらないね~!」と一気に毛布を剥ぎ取られてしまった
ソファーの上で、メタボ中年が、丸くなって、小鹿の様に震えてるのを見て、彼女は「ご飯、用意出来たよ!」とだけ言った
余りの寒さと、驚きで、飛び上がって寝室に逃げ込み、着替えをして、身支度を整え、リビングに戻ると、窓も閉めて、暖かいいつもの風景があった
「冷めるから、早く食べよ」と笑顔の彼女が鬼に見えた
食事をしながら彼女が言うには、目が覚めたら、俺が居なくて、心配して探したらソファーで寝てた
何度か起こしたが、一向に起きないから、風邪をひかない様に毛布を掛けた
食事の用意をして、起こしたが、一向に起きる気配も無いから、実力行使にでたというものだった
ものには限度がある事を、彼女に教えなくては…
昨夜、あれだけ泣いてた子は、どこに行ってしまったのだろう?
また、女が分からなくなった…
今日は大晦日、食事も終わり、何をしようか?と考えていた
普通なら、大掃除とか、餅つきとかになるんだろうが、1人暮らしの、ほとんど家に居る事がない部屋は、散らかる事も、汚れる事も無く、今さら大掃除する所も無い
彼女も、その点は誉めてくれた
綺麗好きでは無いが、余分な物が無いので、散らからないだけである
出かけるにも、昨日の件で懲りてるし、きっと、部屋で、ゆっくり映画なんて見させてくれないし
こうなったら、焼けクソで、初詣に遠い神社に行こう!今から出て、向こうで新年を迎えれば、時間も潰せるし、初詣も済ませるし、一石二鳥だ
カウントダウンドライブ計画を彼女に話すと、大乗り気
どうせ行くならと、有名な神社に行く事にする
片道4時間の計画だ
決まれば、行動は早い、彼女も用意万端、後は見つからない様に、車に乗るだけだ
自宅の扉を開けて、左右確認、エレベーターまでは人は居ない、一気にエレベーターまで走って乗る
一階のエントランスが鬼門だ、おばさん連中の、井戸端会議が無いことを祈る
エレベーターが一階に着いて扉が開くと、ダメだ!
イベント好きの住人が、エントランスで、餅つきをしている
冷静に考えれば、回覧板で餅つきの事が書いてあって、会費の千円も徴収されたんだった
エレベーターから出ると、世話好きの、同じ階の奥さんが話掛けてきた、「あら!お出掛けですか?今、出来たところだから、どうぞ!」
このおばさんは、世話好きの話好き、ミセススピーカーの様な人だ
終わった…
言い訳を考えながら、後ろに居る筈の彼女を見ると、居ない!
辺りを探すと、平然と歩いて、エントランスを出る所だった
おばさんに餅を渡されて車に行くと、車の陰から彼女が出てきた
「早く行こ!」とドアを持ってる
何も言わず、後部座席に寝転び、身を隠している
駐車場から出た所がエントランスで、住人だらけの中を脱出成功!
また、彼女の気転に助けられた
手を繋いで出てくれば、バレるだろうが、不特定多数の人間が出入りするマンションのエレベーターで、他人と乗り合わすのは、日常茶飯事
住人も、知らない人には声を掛けない
車も、助手席に座れば、外から見えるが、後部座席に寝転べば、外からは簡単には見えない
完璧だ!
この子は、どこかの国のスパイかも知れない!?
少し走った所で、「前に座りたい~!」と甘えた声で言ってくる
車を停めると、後部座席から、助手席に移ろうと、ミニスカートにも関わらず、大股を開いて尻餅をついて「手伝って~!」と言っている
どっちが本当の彼女なんだろう?
今度、後ろから石でも投げてみようか?と真剣に考えていた
自宅から、東に向かって高速に乗る
ETCも彼女は初体験だった様で、「ぶつかる~!」と大声を出されて、本当に料金所に、当たりそうになった
帰省ラッシュもピークを過ぎていた様で、順調に流れていた
急に「運転上手だよね。彼の車に乗ったら、いつも車酔いするから、あんまりドライブ好きじゃないけど、昨日も平気だったし、今日も楽しいもん」と笑顔で話し出す
「多分、車が良いからだよ」と謙遜して言うと「そうなんだ!彼の車ボロいからね」と納得してしまった
クソ~!謙遜なんかするもんじゃないと心に誓った
そのまま順調に進んでいたが、このままでは、余りにも早く着きそうだったので、降りる手前の大きなSAに寄る事にした
車から出ると、大晦日の風は流石に寒い
温かい格好をしてきたつもりだが、風があるので余計に寒く感じる
隣を見ると、彼女はミニスカートで生足!
見てるこっちが、震えてきそうだ
「寒い!寒い!」と言いながらも、足踏みして笑顔
おしゃれは、やせ我慢!と言うが、俺には無理!
トイレに行って、軽食コーナーでコーヒーを飲んで彼女を待っていた
トイレの方から、彼女が足踏みしながら入ってきた
隣の若者グループの1人が、彼女を見つけて、仲間に「可愛い子が居るぞ!」と言っている
隣でザワザワ相談してる様だ
彼女は、俺を見つけて、笑顔で手を振りながら、こっちに向かってくる
勘違いした隣の若者が、手を振り返してる
当然、彼女は俺の横に座って、腕を組んで「寒い~!」と言いながら、飲んでいたコーヒーを奪い取って飲み始める
隣の若者の(チェッ!)と言う顔と(エッ!マジ!)と言う顔が忘れられない
勝ち誇った気分で席を立ち、(若者よ、男は運が大切なんだぞ!)と背中でアピールしながら出て行った
車に戻って、この格好では、夜はもたないんじゃないか?と話し合った結果、服を追加で買いに行く事にした
つづく