深夜勤務を終え車で帰宅中、交差点で信号待ちをしてると左手から人影が近
づいてきた。
時間は午前4時を過ぎていたので早起きして散歩する老人かと思い、「元気
だよなぁ。」などとぼんやりと考えていると、街灯に照らし出されたのはシ
ョートカットの女の子であった。
ライトブルーのパーカーに黒っぽいTシャツ、デニムスカートにスニーカー
という服装。キャリングバッグを引きながら、角を曲がり僕の進行方向へと
歩いていく。確かにこの先には駅はあるが始発が来るまでは1時間以上あ
り、ましてや平日のこの時間に私服の少女が一人で向かうのは不自然な状況
だ。何か理由があるのかもしれない、そう思い少女を追いかけた。
少女の近くで速度を落とし助手席の窓を開けて声をかける。
「こんな時間にどこ行くの?」ビクっとこちらを向く。しかし、すぐに立ち
去ろうとする。当然の反応かもしれない。
「送ってあげるから乗っていきなよ。警察に見つかったら補導されるよ。」
足が止まった。こんな時間だ。もちろん補導され親に連絡がいく。普通の親
が送り出す時間じゃないから親バレは嫌なはずだ。
「駅まで行くんですけど・・・。」顔に緊張感を漂わせ答える。「じゃあ、送っ
てあげるよ。今の時間じゃ始発まで時間あるし待ってるうちに捕まるかもし
れないし。一緒に車で待てばいいよ。まだ寒いだろ?」
少女の軽装では明け方の冷え込みは堪えていたのだろう、ゆっくりと車に近
づいてきた。
駅には直接向かわず近くの大きめの公園の駐車場に車を停める。(駅には定
期巡回が来るからと理由をつけた。)
少女はめぐみ。JC1だった。
車中の暖かさがめぐみの口も軽くしたのかもしれない。少しづつ自分のこと
を話してくれた。
学校でイジメにあい不登校になりかけている時に大学生とネットで知り合
い、今日から無理に学校に行かされそうなのでそいつのトコに家出するつも
りだったらしい。うまく口説いた奴もいたもんだ。しかしここからだと、そ
いつの街までは結構な距離である。
「めぐみちゃん、電車でずっと行くの?結構料金かかるよね。」「うん。で
も急だったから足りないかもしれなくて・・・。」俯き加減で話すめぐみは買っ
てあげた缶紅茶を見つめ不安に押し潰されそうな表情をしている。
「もし着いてもギリギリだと不安だろ?めぐみちゃん次第ではお金は渡して
あげられるんだけど。」あくまで選択権を残した言い方をしながら様子をみ
る。「・・・あの、それってどうしたらいいんですか?」顔を上げこちらを見
る。「少しの時間、僕を助けてほしいんだ。それで旅費は出してあげるか
ら。」「本当ですか!?」「ああ、本当だよ。」めぐみの少し安堵した顔を見
つめつつ鼓動が高鳴り始めるのを感じていた。
続きはコメントにて。