数年前、友人一家とバーベキューをしたことがきっかけでその家族とも親しく付き合うようになりました。当時、友人の娘さんは中学3年生で思春期の真っ只中。私のような父親世代の男性を避けるのは当然だと思っていました。こちらも特に気にすることなく、ただ適度な距離感で接していました。
ところがそれから約3年が経ち、娘さんが高校3年生の卒業を控えたころ様子が少し変わり始めました。何かのタイミングで話しかけてくることが増え、以前とは明らかに違う親しげな態度を感じるようになったんです。
娘さんと奥さんの二人がいる場で会話をする機会がありました。そのとき、奥さんが笑顔でこんな話を始めました。「この子、首が太い人が好きでね。ちょっと離れた年上が好みなのよ。いい人いませんか?」と。驚きました。なぜかその話の特徴が、私を指しているように思えました。その間 娘さんは私の顔をじっと見つめながら笑っていて、奥さんもまた同じようにこちらを見てくる。どう返していいのかわからず、ただ曖昧に笑ってその場をやり過ごしました。
その出来事を境に、少しずつ意識するようになりました。すると不思議なことに、進展とも言えるような出来事が次々に起こりました。学校帰りの娘さんが制服姿で自転車に乗って私の工場に立ち寄ってきました。驚きましたが、親しい間柄とはいえ何の用事だろうと思いながら迎え入れると、どうやら特に用事があったわけでもないようでした。それどころか娘さんは家がうるさいからという理由で、私の事務所の一角で自習を始めたんです。
制服姿で工場に来る娘さんの姿を見れば、周囲は親子にしか見えないです。疑問を抱きつつも、娘さんの自然体な態度につられて私もその状況を受け入れるようになっていきました。この不思議な展開から、事務所で自習をする娘さんとの距離が縮まるのに時間はそれほどかかりませんでした。気がつけばソファーに並んで座ることが多くなり、私がサポートしながら関係を持ちました。この関係は卒業を迎えるまでの短い間に、自然と何度も繰り返されるようになりました。
就職を機に連絡は途絶えましたが、今でも目に焼きついています。私はどこにでもいる普通の自営業で、地道に仕事をしているだけの男です。私が特別な人間だとは思えませんが、そんな私と関係が築けたのも父親である友人と似ていたからかもしれません。娘さんは奥さんと非常によく似ていました。仕草や表情、時折見せる笑顔までもがそっくりでした。意識的に好意を持っていたというよりも、本能的な何かが作用していただけなのかもしれません。私自身、特別な魅力を持っているわけでもなく、気づかない何かが働いていたのかもしれません。
ちなみに友人は「娘がどんな人と遊ぼうと、俺が知らなければいいんじゃない」と酔いながら言っていたことがあります。