西東京で、
アパート貸しをしている者です。
アパートと言っても
相当に古い物件で、低所得者層向け
に貸し出しをしています。
こんな物言いは不遜ですが、
入居者のほとんどは「底辺」の方たち
ばかりで、家賃滞納はザラにあります。
その内のある入居者が、
母と娘の二人暮らしをしています。
母親は30半ばくらいで、
地元のパッとしないスナックで
働いている「疲れた女」です。
他入居者の話では、頻繁に男を
替え、パチスロ狂いのバカな女、
とのことです。
娘さんは「マリコ」と言う名前の
中学生で、あんな母親にはもったい
ないくらいの真面目な娘です。
今年に中学3年になったようです。
私はアパートから少し離れたところに
家を持ち、アパート設備の保全や掃除
のため、時たまアパートへ行くのですが、
マリコちゃんが母親の酒やタバコを
買いに行かされたり、ケンカをして
居室外に閉め出されているところを
何度か目撃していました。
昨年の年末のことです。
夜が更けてから、入居者の1人から、
共用スペースの蛍光灯が点滅していて
気になる、というクレーム電話を受け
私は交換しにアパートへ行きました。
するとマリコちゃんが、
部屋の外の隅にうずくまっていました。
外気温は相当に下がっています。
また母親とケンカをしたのかい、と尋ね
たところ、うん、と彼女は頷きました。
「その後に男の人が来て、そのまま
出掛けちゃって、、、私の鍵が部屋の
中にあるから、入れなくて」
マリコちゃんは
弱々しく笑ってそう言いました。
私は正義感なんて高尚なものは、
持っていませんが、流石に彼女が不憫
に思えました。連絡さえくれれば、
すぐにスペアキーで解錠してあげられた
のに、、、。
「おじさんが今開けてあげるよ。
ちょっと鍵を取りに行ってくるから、
待っていなさい」
そう言って、
私は自宅に戻り、マリコちゃんの家の
鍵を持ち出そうとした時、、、私は人
として最低なことを思いつきました。