ある日の夕暮れ、私は河のほとりに座っていた。この河は都市を流れる一級河
川で、両側の堤防地帯のには、狭いながらも草野球ができるほどのグラウンド
が備わっていた。座っている所のすぐ脇には、赤い大きな陸橋が渡っていて
自家用車や作業車がひっきりなしに、忙しそうに行き交っていた。
私はぼんやり川辺を眺めて、少し前の自分の人生を思い返していた。
住宅会社を脱サラして始めたマンション販売が当たり、一人で始めた会社が
3年で従業員20人を抱えるまでに成長した。飛ぶ鳥を落とす勢いで業績は拡
大していったが、過度な設備投資、忍び寄る不況、そしてリーマンショックが
追い打ちとなり、私の会社は倒産した。住宅地に建てたマイホームも担保に入
っていて、銀行の差し押さえとなり、妻と二人の娘は妻の実家に移り住んで行
った。
それから二カ月後、妻から離婚届けが送られてきて、私は人生のすべてを失っ
たのだった。そして今は。。。20畳もあった社長室の高級な椅子に座ってい
た私の世界は、6畳に薄汚れた流し台の付いただけの家賃4万円の部屋だけに
なった。何もかも無くなり、私はただ惰性で生きているだけとなった。
キラキラと輝きながら流れて行く川辺を眺めていると、その河面の下には
永遠に続く、静かな、豊かな、癒しの世界があるように思えた。
その時だった。私のすぐ後ろから、鈴の鳴る様な透明なトーンの声が聞こえて
きたのだった。
「おじさん・・危ないよ。そこ」 振り向くと少女が立っていた。
「あ・・うん。ありがとう。もう行こうと思ってたんだよ」
ウソだった。ずっとずっと、ここに座っていたかったのだった。
「ここね。ウナギが釣れるんだよ^^。ワタシね、小さい頃から、ここにお父
さんと来てるんだ。でもよく落ちるんだよ、河に。この前も男の子が^^」
「そうなんだ・・・・・」
少女は美和子と名乗った。16歳で高校2年生だと言う。背は高く無いが
今風の目が大きく、薄い茶色の目が印象的だった。ショートカット気味の茶色
の髪で胸のふくらみが大きく、きっと学校で男の子にモテるタイプだろうなと
想像できた。
手にスーパーの袋を提げていて、白いねぎが顔をのぞかせていた。
「おじさん。ドコ住み? 夕食の材料買って来たんだけど・・・意味無くなっ
ちゃったの。一人で住んでるんでしょ?^^ 作ってあげるから、いっしょに
食べようよ。一人で食べるのって寂しいよ。ね? ^^」
「その通りだけど・・・僕が恐く無いの?大丈夫か?」
「大丈夫だよ。だっておじさん・・・安全パイっぽいもん」
どんな確信なのか、さっぱり解らなかったが、確かに今の私には、少女をレイ
プするような激しい情熱などまったく無かったし、雰囲気も無かっただろう。
「いいのかな・・・そんなの・・」そんな事を思っている私を置いて、美和子
は歩き出していた。ミニスカートのお尻が、左右に揺れていた。
可愛いお尻だった。自分の娘も、あと10年もしたら、こんな少女になるのだ
ろうか・・・そんな事を思っていた。
私の薄汚れたアパートに行く道中、美和子はいろんな事を話してくれた。家は
すぐそばで、父親と二人暮らし。母は小さい時に死別し、妻の様に父親の世話
をしているのだと、大笑いしながら話してくれた。一人で頑張ってくれている
父親が大好きなのだと、笑顔で話してくれたのだった。
私の部屋の狭い台所で、美和子は手際良く、みそ汁とサラダと2品のおかずを
作ってくれた。とても良い味で、きっと手慣れているのだろうと思えた。
「しっかし汚い部屋だねー 掃除しなきゃだめだよ。 こんな部屋にいたん
じゃぁヤル気も起きないでしょ?」
美和子の作った夕食で心が温まったのか、私は久しぶりで他人と会話をしてい
た。さっき初めて会った16歳の少女と40オーバーのオヤジが小さなちゃぶ
台を囲んで夕飯を食べている。思えばとても不思議な状況だったのだが、
そんな事どうでもよくなって、私はしゃべり続けた。今までの人生、会社の倒
産、家族や従業員達への申し訳無い気持ち・・・いつしか私は、大粒の涙を流
しながら、16年しか生きていない少女に、まるで、牧師様に懺悔している罪
びとのように、思いを吐きだしていた。いつの間にか、隣に座ってくれていた
美和子は、相槌を打つでもなく、感心するでもなく、ただ黙って、薄く笑いな
がら聞いていた。その顔は、見たことも無いのだが、不思議にも菩薩のように
思えた。
「大丈夫だよ。頑張って『生きていたら』・・きっと大丈夫。。。」
いきなり私を抱きしめると、美和子は自分の胸に私の顔を押し付けた。
私は、美和子のなすがまま胸に顔を埋め、目を閉じた。不思議な感覚だった。
豊かなふくらみは、柔らかく暖かかった。花の様な匂いが、鼻腔に広がった。
なんの香りだろう?・・・香水?? いや、花だ。ラベンダー・・・
そうだ・・・ラベンダーの香りだった。私は、透明になっていくようだった。
美和子の手が、いきなりベルトにかかり、それをはずし始めた。
「いや、そんなつもりじゃないんだ。。。やめてくれ。」
「大丈夫。可哀そうだなんて思って無いよ。元気にしてあげる。
ワタシけっこう経験あるんだよ^^ まかせて・・・」
美和子の口の中で、私は大きくなっていった。こんな感覚は、何年ぶりなんだ
ろう・・困惑しながらも、私は美和子の頭を、私の性器に押し付けていた。
大きく怒張した私の性器は、美和子の喉の奥まで収まっていた。じっと目を閉
じていた美和子の目が開いて、下から私を見あげた。目が合った。潤んだ優し
い瞳だった。私は美和子の口の中で果てた。
「ああ。。。すまない・・ごめん・・・ほんとうに・・」
「いいから。じっとしてて。まかせて。」
それから私達二人は、もつれ合うように、薄く冷たい布団に入った。私はまる
で、女を知らない少年のように、美和子の服を脱がした。ニットのセーターを
脱がすと、見るからに高級そうでは無いブラジャーだったが、もどかしい気持
ちでブラジャーをはぎ取った。細い体には不似合いな豊かな乳房で、ピンク色
の小さな乳首が、アンバランスで逆にいやらしかった。固くなった乳首を口に
含むと、美和子は小さく、子猫が泣いているような声を上げた。私は夢中で、
大人にもなっていない少女の乳房をもてあそんだ。ミニスカートとタイツを脱
がすと、ブラジャーとは柄の違うサイドにリボンの付いたパンティーが現れ
た。私はその可愛いパンティーに顔を押し付け、若い香りをいっぱい吸い込ん
でみたかった。そんな思いを解っているかの様に、美和子は細く長い足を広げ
て、少し腰を浮かせてくれた。少し湿った美和子のアソコの部分は、大人とも
子供とも言えないような、それでいてオスの欲情を掻き立てるに十分な匂いだ
った。若いころ、付き合い始めた彼女と初めてセックスした時、初めて嗅いだ
女性器の、快くもあり臭くもあり・・説明できないような動物の匂い・・
そんなものを思い起こさせてくれるような匂いだった。
ついさっき射精したばかりなのに、私はまた勃起していた。荒々しく、パンテ
ィ-を剥ぎとって、私は美和子に押し入った。十分に潤っていた美和子の性器
は、私を優しく迎え入れてくれた。経験は豊富だというように、確かに男を包
み込むような、大人の女性を思わせる性器だった。白く透き通るような肌。き
め細やかな滑るような肌。16歳の女の肌を、手にした経験など一度も無かっ
た。これからもきっと無いだろう。壊れてしまいそうなくらい、私は美和子を
抱きしめていた。愛しくてたまらない気持とは裏腹に、容赦なく美和子の性器
を責め立てていた。
「ああ・・・気持ちいい・・・○○、おっきいね・・・固い・・・
気持ちいいよ・・・ ああ・・・」
私は夢中で、美和子の性器に挿入し続けた。途中、美和子は大きくのけぞり。
糸の切れたモペットのように崩れ落ちたが、かまわずに挿入を続けた。
美和子の絡みつく様な愛液は、私を溶かしてしまうほど暖かく、きつく締まっ
た膣は、私を包んで離さないと言っていうかのように思えた。
「あ。。いきそうだ・・・ゴムが無いんだ。。ちょっと待って・・」
「いいよ。そのままで。出していいから。大丈夫。心配いらないよ・・」
そんな言葉に疑いの気持ちも持たなかった。美和子の中で私は溶けていった。
長い、長い時間のように思えた。美和子の中で、私はまるで子供のように
甘えていた。ゆっくり体を離すと、そのまま美和子の胸に顔を押し付けた。
美和子は腕枕をしてくれて、頭をゆっくり撫でながらこんな事を言った。
「ワタシね、よくね、雲に乗って、どこか遠いとこに行く夢を見るんだ。
孫悟空みたいだよね^^ 乗ってるの、雲の上に。。。 」
それから、美和子はほとんど毎日部屋に来るようになった。父親が帰ってくる
までに帰ればいいという言葉に甘えて、私は美和子に夕食を作ってもらい、
セックスをして、一緒にお風呂に入ったりした。いつも、9時くらいに
家に送って行き、そのたびに美和子はキスをしてくれた。
「明日も元気でいられるように、キスしてあげるね^^
オヤスミナサイ・・・・・」
すこし寂しそうに笑顔で送ってくれる美和子は、私にとってまるで天使のよう
だった。若い恋人を持つ若者のような感覚になっていく自分がおかしかった。
そんな美和子のおかげなのか、小さいながらも住宅会社で働き始めるようにな
り、忙しくなってきた。会社から帰る時間も遅くなり、外食をするようになっ
たため、美和子とは玄関ドアの手紙だけのやり取りとなった。
父親の病気の知らせの手紙を最後に、そんな手紙も途絶えるようになった。
やっとのことで、携帯電話を持つようになったので、美和子に連絡を取りたい
と思った。思えば、美和子のケータイ番号も知らなかった。
やっと人生が少しづつ上手くいくようになってきて、すごく美和子に会いたか
った。あの笑顔があれば、きっと何でも上手く行くような気がしたのだ。
美和子と出会って、あっと言う間に2カ月が経っていた。
いつも送って行く家まで行ってみたのだが、家に人の気配が無かった。
父親が病気だと言っていたから、入院でもしたのだろうか・・・心配だった。
しばらく、家の周りをうろうろしたのだが、怪しまれるのも嫌なので立ち去ろ
うとすると、そばを通りがかった一人の老人が声をかけてきた。
「この家になんか用事かね?」
「あ、はい。ここに美和子さんという方が住んでみえませんか?
お渡ししたいものがあるので。留守のようですが・・・」
「ああ・・・ あんたご存じ無いかね?・・」
「え?何がですか?」
「ええ子やったけどなぁ。美和ちゃんな。可愛い、気立てのええ子やったがな
ぁ。 あんた、ほんとに知らんのかね?」
「 ええ・・・・どうかしたのですか?美和子さん」
「そうか。なら教えないといかんな。もう一年くらい前になるかな。お父さん
と二人暮らしやったんだがな、そのお父さんがな、身体壊してしまってやな。
仕事もよういかん。前途を悲観したんやな。美和子ちゃんの首締めてしまって
やな。自分も、あそこの河に身を投げてしまったんや。あの赤い鉄橋のとこ
や。1週間もみつからなんでなぁ。下流で見つかったわ。美和子ちゃんも可哀
そうやったなぁ。
母さんを早くに亡くしてな。仲のええ親子やったがな。。。」
「・・ええっ!!?? ちょっと待ってください・・・ええっ???」
「美和子ちゃんも・・・一年前に亡くなったんですか?」
「そうや。うちの息子の嫁が見つけよった。様子がおかしい思って、家に入っ
てみたんや。 寝ているような、安らかな顔やったと」
「・・・・そうだったんですか・・・・」
私は、キツネにつままれた思いで河原まで歩いていった。整理もなにも・・・
どんなことが起こっているのか、かいもく検討が付かなかった。
美和子と出会った河辺にたどり着いた。たどり着く頃には。。。
やっと理解できた。そう思えた。美和子は、きっと大好きだった父親を助けた
かったんだろう。死なせた事を、残念に思っていたに違いない。
ここに来て、身を投げようとしてた父親を、止めたかったのだろう。
だからきっと 私を父親と重ね合わせて、救ってくれたのだろう・・・
そう思うのが一番普通だと思った。美和子には、きっと、もう二度と・・・
会えないだろう。でも心は、とても健やかだった。
「ありがとう・・・美和子・・・・」
見上げると、空には大きな雲が流れていた。ゆっくりと風に乗って流れて行
く。 ふと後ろから声が聞こえたような気がした。
「もう大丈夫だね?^^ 頑張れっ!! 」
後ろを振り返ると 土手に薄い紫の花が一輪咲いているのが目に飛び込んでき
た。 ラベンダーの花だった。ラベンダーが一輪、風に揺れていた。
私は、一回大きく背伸びをして 歩きだした。