私は、その格好のまま何枚かプリクラを撮られました。すると、二人の女子生徒が雑貨店の袋をぶら下げて合流してきました。彼女達は、袋の中から当時流行していたルーズソックスと襟に付けるリボンとビニールのケースを取り出しました。私が、靴下を履き替えると、彼女達はルーズソックスのたるみ具合を調整し、私の襟元に学校指定の物とは違う彼女達とお揃いのデザインのりボンを付けました。おそらく、ジャージ姿の女の子は学校指定のソックスとリボンしか持っていなかったので、現地で調達してきたのでしょう。そして、ビニールのケースの中に入っていた、ショートボブのウィッグを私に装着させました。私のウィッグの髪を整えていたギャルが、私の姿を見て真顔で可愛いとつぶやきました、私はプリ機に映る自分の姿を確認しました。成長が遅い私の顔は、男性的な身体に変化する前で、元々まつ毛が長く、目も二重で大きかったこともあり、とても自分自身の姿とは思えませんでした。それまで、バカにする様に私を弄っていた女子生徒達の態度もその一瞬で大きく変わりました。プリ機に写った初めて見る女の子は、客観的に見ても、その場にいる十数名の本物の女の子達より、圧倒的に可愛かったのです。口元は、自分が可愛くなったことに自然と微笑む形になり、泣いた後の潤んだ瞳の切ない感じが、ゾクッとする程、可愛い表情になっていました。私が振り返って、彼女たちを見渡すと、驚いた表情で口をおさえて、口々に可愛いとつぶやいていました。特に、しゃがみ込んで泣いていたジャージ姿の女の子が、泣くことを忘れて唖然とした表情になっていた事は、今でも忘れられません。それまでの彼女達の私を蔑んで見ていた表情が、憧れの物を見る様な表情に一変しました。冗談で「可愛いは正義」と言う人がいますが、まさに「可愛いは正義」でした。可愛い女の子に変身した私を見て態度が変わったのは、彼女達だけでは無く、私自身も根拠のない自信と優越感が湧いてきました。女としての商品価値は、私の方が高く、彼女達より高貴な存在である様な気分になっていました。彼女達も男の私に女としての魅力が負けていることにショックを受けているようでした。可愛らしさの力は、圧倒的で何の説明も必要とせず、ただ見るだけで、どちらが上かが、はっきりと答えがでる説得力が有りました。私は、彼女達の前に進み、クルッと回って全身を見てもらい「どぉ?」とイタズラっぽく微笑んで、当然返ってくる回答である「可愛い!」と言う言葉を待っていました。しかも、それまで私のことを「ゆうこ」と呼び捨てにしていたのに「ゆうこちゃん」に呼び名が変わっていました。女性が女性を呼ぶ時に使う「ちゃん」は敬称であることを、その後しばらくたって知りました。私が「ゆうこちゃん」というバカにした呼名が気に入らない不機嫌な表情をすると、彼女達は私のことを「ゆうちゃん」と呼び直しました。この瞬間、優劣が完全に逆転しました。それからは、私が主導権を握り、皆でプリクラを撮ったり、一緒に京都の街を歩いたりしました。道を歩いていても、すれ違う人の反応が男の時と、全く違っていて、徐々に優越感と自信が大きくなっていきました。それまで、一緒にイジメられていたジャージ姿の女の子を同情する気持ちが、彼女を下に見る感情に変わっていました。その日から。私の着ている制服は、私の所有物となり、彼女は制服を紛失したと先生に嘘の報告をして、修学旅行中はずっとジャージ姿のままでした。街で合った、昨日の不良グループの男子達も一様に私の容姿に驚いていました。修学旅行から帰って来ても、私のアイドル的な立場は変わらず、不良グループのリーダー格に気に入られて仲間入りをし、女の子の格好で遊んだり、今まで一緒に遊んでいた男友達をイジメたりしていました。その頃、セックスの初体験を男と女のどちらも体験しました。その年の夏休みは最高の思い出で、女友達と女の子としてプールに行ったり、お祭りに女物の浴衣で出かけたりして、数え切れない程の男性に声をかけられました。その頃、気に入って、よくしていた遊びが、見ず知らずのカップルの男性を色目使いで誘惑して、カップルを喧嘩させる遊びでした。女の子として可愛いと言うことは、理不尽な程、生きてゆく上で有利なことで、何をしても許される気がして、自分を中心に世界が廻っている様な錯覚をしていました。そんな生活が、高校受験で皆が忙しくなるまで続きましたが、その頃から体も急激に成長し、男らしい体や顔に変化したこともあり、段々と女装することから遠ざかり、高校入学で環境も変わり、男子高校生としての普通の生活に変わって行きました。
...省略されました。