私の場合、先生といっても、通ってる学校の先生じゃなくて、マンションの隣り
の部屋に越してきた、9歳くらいの女の子とふたり暮らししてる、学校の先生を
やってる男の人です。奥さんは気の毒なことに早くに亡くなったらしく、娘さん
の珠美ちゃんと私は、通路や近所のコンビニで挨拶してるうちに、部屋を行き来
するようになりました。私も一人っ子で、親が共働きで、結構寂しかったので今
ではうちの両親も珠美ちゃんをかわいがってるくらいです。先生もとてもカンジ
のいい人なので、先生が遅い夜など私が珠美ちゃんの面倒を見に行っても、特に
何も言いませんでした。
その夜私は、なんとなくつきあっていたバイト先の先輩と別れてきました。
雨がひどい夜で、なんとなくつきあっていたので、別れても寂しくないと思ってた
のですが、やっぱり、涙がこぼれそうになりました。雨のせいかも知れません。
親は二人とも不在だったので、私は部屋に帰ってゆっくり泣こうと思い、エレベー
ターにのりました。そしたら、先生が来ました。私はこの先生のことを、好きだっ
たんだと思います。だからほっとして泣いちゃったんだと思います。泣いちゃった
んだと、思います。
「え?ええっ?」と先生はすっごくビックリした声をあげ、「どうしたの?どっか
いたいの?」と珠美ちゃんをあやすように大慌てしました。優しくされるとますま
す涙が出ます。「ふられちゃったの。そんなに好きじゃないのになんか涙がでる
の」
などと私は口走ってました。先生はほおっとため息をついて、私の肩をたんたんと
叩いて「9F」のボタンを押しました。
「先輩は最後までそっけなかった私は優しくされたかったのに」言いながら私は
(ああそうかだから涙が出るんだ)などとあらためて思い知らされました。
そして9Fにつきました。「珠美が起きてると思うけど、よかったら飲む?」
先生は言ってくれました。普段は絶対にそんなこと言わないけど、言ってくれまし
た。よほど私がかわいそうに見えたのでしょう。
珠美ちゃんはしばらくはしゃいで私と先生と一緒にジュースを飲んでましたが、し
ばらくするとウトウトし出しました。先生が珠美ちゃんを部屋に寝かしつけて戻っ
てきたとき、私は居間のチェストの上に置かれた若い女の人の写真を見てました。
亡くなった珠美ちゃんのママ、先生の奥さんです。「死んだ人は誰かの中で唯一に
なれるね」私はグラスに氷とレモン酒をいれてなめて、そんなことを言ってまし
た。
「でも。写真や思い出には体温がないんだよ」先生がしんみり言いました。私たち
は並んでソファに座っていました。「体温?」私はレモン酒のグラスを置いて、そ
の手で先生の頬に触れました。多分、お酒のちからでしょう。「先生さみしい
の?」
「どうかな」先生はまっすぐ私を見て苦笑いしました。私は今度は、両手で先生の
頬をはさみました。「あたしの手、あったかい?」「うん」「これが体温?」私は
すごく嬉しくて、笑いました。そのまま先生が私の両方の腕をつよくひっぱっり、
私は流れのままに、身をゆだねてました。「ふられてヤケになってるの?」声が耳
元でしました。先生の前髪が耳をくすぐります。「そうゆうことにしてもいい」信
じられないくらいしおらしい声が出てしまいました。先生は答えずに、そのまま私
の耳たぶから、首すじにおでこをつけていきました。「確かに今したらすごく気持
ちいいだろうな」苦笑いして囁きます。私は言葉が出ず、はあっとため息をもらし
て、うなずいてました。「きもち、いい」先生の手が私の体じゅうを撫でいくと、
もう普通にしゃべることができなくなって、そっとソファに倒れこみながら胸を優
しく撫でられたとき「ん。あぁっ」ついに声をあげてしまいました。私が敏感に反
応したところを、先生は繰り返してきます。「あっあっ、きもちいいよぉ」それか
らしばらく、先生は私の上におおいかぶさり、むさぼるように体を愛撫しました。
あまり経験もなく、そんなふうに求められたことのなかった私は、おかしくなって
しまいそうでした。でもしばらくすると、先生がぱったりと動きを止めて、息をつ
きながら、思いつめた表情で私を見ました。こんなにまぢかで見たのは初めてでし
た。「だめだよこんなの」先生が言うと、私はだだっこのようにいやいやをしまし
た。「だめでもいい」「だめだ」「いやぁ」「だめだよ。こんな弱みにつけこむよ
うに」先生はぐったりと私に体重を預けてきました。それは心地よい重みでした。
「きみの親にあわす顔がない」先生がうめくように言いました。「じゃあ先生が好
きだから抱いてって言えいえばいいのかな」私はぼんやりとつぶやいていました。
「今言うのは逆効果だ」先生が神妙な顔で私を見てます。そして私の体をそっと抱
きおこしてくれました。「ゴメン。こわかったよね」「ううん・・・あの・・・キ
モチよかった」「ふるえてたくせに」私達はちょっと照れながら、ソファに並んで
座りました。そして私がおねだりして、触れるだけのキスを、繰り返してもらいま
した。「まだ奥さんが好きなの?」「きみの言ったように唯一だよ」「ん」「でも
体温はない」「私はあるもん」「そうだね」先生はちょっと笑って私の髪を撫でて
くれました。そのまま私たちは毛布を持ってきて、ソファの上で眠りました。
体温をわけあって、眠りました。私の投稿はここでおしまいだけど、私と先生のエ
ピソードには続きがあるといいな・・・