俺には妻がいる。結婚してもう10年。今でも笑い合えるいい関係だと思っている。
ある日、妻が突然こう言った。
「ねぇ、私にも“嫁”が欲しい。」
「……え?」
耳を疑った。いや、俺の聞き間違いか?
だが妻は真顔で言い直した。
「私の“嫁”。掃除してくれて、料理してくれて、文句言わずに話を聞いてくれて、記念日にはケーキ買ってきてくれて、たまに褒めてくれる人。」
俺は言葉を失った。
つまりそれ、俺にやってほしいってことか。
「……なるほど、つまり俺が“妻の嫁”になれって話か。」
妻は笑った。「察しがいいのは結婚してからかもね。」
その日から、俺は“妻の嫁”業に勤しむことになった。洗濯物をたたみながら、「けっこう奥深いな、この嫁業」と思ったりする。
世の中には、いろんな夫婦の形があるらしいけど、うちは「妻に嫁がいる」形でも、案外うまくやっていけそうだ。
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