私はブロック塀に背中を預けたまま、目の前に立つ彼の気配に震えていた。
「……ねえ」
自分の声が、思った以上に震えていて驚く。
彼は、さっきまで店内で見ていた「仕事中の彼」とは別人のように、必死な顔で私を見つめていた。眼鏡の奥の瞳が、暗がりの中でも潤んでいるのがわかる。
「……もっと、見たい?……それとも、触って、みる……?」
喉の奥がカラカラで、やっとの思いで出した言葉。
彼は「……っ」と短く息を呑んで、立ち尽くした。
さっき私に「大きい声出しますよ」って言われて、あんなにビクッとしてたのに、今はもう、私のことしか見えていないみたい。
「僕は……っ、……触っても、いいんですか」
彼の声も、情けないくらい掠れている。
「……いいよ」
私が小さく頷くと、彼は壊れ物を扱うみたいに、恐る恐る手を伸ばしてきた。
私の指先も、彼の手も、寒さと緊張で同じようにガタガタ震えてる。
やがて、熱を持った彼の指先が、はだけたブラウスの隙間から、私の肌にそっと触れた。
「あ……」
冷え切った肌に、彼の体温がじわっと染み込んでくる。
彼はベージュのレースの縁をなぞるように、でも、どこか戸惑いながらゆっくりと指を動かした。
「……本当に、ブラウス一枚だったんだ……。……冷たい……」
「……っ、……寒いから」
私が身を縮めると、彼はハッとしたように顔を上げて、私の目を見た。
その距離は、お互いの吐息が重なるくらい近くて。
彼はもう片方の手で、私の腰をそっと、でも逃がさないように引き寄せた。
「……こんなこと、するから……。……もう、帰せなくなっちゃうじゃないですか」
※元投稿はこちら >>