レンタカーを自分で運転していました。
〇〇県にある〇〇川の上流を目指しています。
今日もとんでもない暑さでした。
(初めて来たのは)
(何年前だったかな)
酷暑の日々が続くと来てしまいたくなる場所・・・
冷たい川の流れでの水遊びが最高に気持ちいいことを私は知っています。
(どきどきどき)
でも今日はちょっと違いました。
もちろん清流に涼を求めてきたというのも事実です。
だけどわざわざやって来たのは、やましい衝動からでした。
非日常のどきどきを味わいたくて、最初からそっちをいちばんの目的にしてやって来たのです。
(もうすぐ着く)
車窓から清らかな流れを見下ろしながら川沿いの道を進んでいました。
私が心の中でポイントゼロと呼んでいる場所を通過します。
そのままさらに車を走らせました。
(近づいてきた)
やがて道が二股に分かれる地点まで到達します。
本道から離れて、川に近い側のわき道にハンドルを切りました。
(どきどきどき)
わき道に入ってからは、もう前にも後ろにも他の車のかげはありません。
なおもしばらく走っていくと見覚えのある場所が見えてきました。
道端の狭いスペースに駐車します。
(着いた。。。)
ドアを開けてとりあえず車外に出ました。
(誰かいるかな?)
期待に胸を膨らませながら、道を渡る感じでガードレールに近づいていきます。
川を見下ろしました。
(え、あっ・・・うーん・・・)
人がひとり、いることはいます。
でも微妙な感じでした。
これまでの経験上、釣りをしている人と遭遇することが多かったので・・・
そんなイメージを膨らませてきてしまっていた私です。
でも、河原にいたのはお年寄りの男性でした。
川のほうをむいてしゃがんでいるので顔はよくわかりませんが、なんだかみすぼらしい雰囲気です。
すごく失礼ですが、最初はホームレスの人かと思ったぐらいでした。
(いや、そうじゃない)
(よぼよぼなだけ)
車に戻ります。
ちょっと当てが外れた感が否めません。
でも、シチュエーションとしては文句なしでした。
貴重品や自分の身元のわかるようなものは、すべてグローブボックスにしまいます。
必要なものだけトートバッグにつめて車外に出ました。
(暑っちー)
万一の紛失を避けるため、車のキーをとある場所に隠します。
そして、小さな包みも近くに隠しました。
中には予備のTシャツとショートパンツが入っています。
念には念を入れて、服を盗まれたり奪われたりしたときの備えとしてあらかじめ準備しておくものでした。
とりあえずこういう準備をしておけば、私自身が安心なのです。
(しっかし暑い・・・)
(暑すぎる。。。)
あのおじいさん、あんなとこで何やってんだ・・・
いちおう日陰にしゃがんでいたけど・・・
ガードレールをまたぎました。
斜面を下るようにして、岩場に降り立ちます。
そして河原へと近づいていきました。
(どきどきどき)
緊張の瞬間です。
相手がどんな人なのか見当もつきませんでした。
まずはしっかり様子見しなければなりません。
あえて、おじいさんのそばを通るような感じで・・・
50メートルぐらい離れたところにある岩壁のほうに歩いていきました。
そのときにさりげなく観察している私です。
(かなりお年寄だ)
(80ぐらい?)
小柄で、がりがりに痩せているおじいさんでした。
去年遭遇した鶴のような痩せぎすジジイを彷彿とさせる外見です。
片耳にイヤホンをしてラジオを聞いているようでした。
折りたたんだ新聞に、赤ペンでいろいろ書き込みをしてあるのが見えます。
(競馬とかそういうのかな)
(どうしてわざわざ)
(こんなとこで)
近くを通り過ぎていく私にチラチラっと目を向けてきていたのがわかりました。
でも、とにかくラジオの中継(?)に真剣な様子です。
(こんな暑いのに)
(そんなとこにいて大丈夫なの?)
そういえば、近くにはとまっている車もバイクも自転車も見かけませんでした。
(ということは・・・)
(歩いてここまで来たの?)
この暑さの中では、そんなのちょっと考え難いことです。
もしかしたら、この近くにお住いの人なのかもしれないと思いました。
まあ確かに、ああして日陰にいるぶんには・・・
川からの風が心地良いので居心地は悪くありません。
(さすがにこのおじいさんじゃ)
(ちょっとなあ・・・)
決心がつきませんでした。
どきどきさせてもらう相手としてはいまひとつで、躊躇する気持ちを払拭することができません。
岩壁をまわりこんで誰もいないスペースに来ていました。
持ってきたレジャーシートを日陰のところに敷いて、トートバッグを置きます。
(まあとにかくせっかく来たんだから)
(早く水浴びを・・・)
Tシャツとショートパンツを脱ぎました。
中にはビキニの水着上下をつけてきてあります。
使い捨てることも念頭において量販店で買った超安物の白ビキニでした。
サンダルのストラップをきつく締めて、水辺に歩いていきます。
(びょええー)
(暑っちいいー)
おじいさんの姿が見えるところまで出ていました。
相変わらずさっきと同じ状態のまま、あっちの日陰のところにしゃがんでいます。
それを遠目に見ながら、
「じゃば、じゃば、じゃば」
川に入っていきました。
ひざぐらいの深さのところで、水の中に腰をおろします。
(ひーーー)
最初は氷のように冷たく感じる清流に、
『ぶるぶるぶるっ』
全身が震えました。
でも、すぐにからだが慣れてあっという間に天国になります。
(ひいいーー、気持ちいい)
(最高。。。)
プールのようにばしゃばしゃ泳ぐわけではありません。
ただ、川の浅瀬に座っているだけでした。
たったそれだけのことで、
(あああん、最高すぎる。。。)
もう猛暑も酷暑も関係ありません。
一瞬にして、日々のストレスをすべて忘れてしまえている自分がいました。
(気持ちいい。。。)
背中を後ろに倒し気味にして、
(ひーーー)
脳天から川の流れをざばざば受け止めます。
青い空と、清らかな水の流れ・・・
知る人ぞ知る、最高の避暑でした。
大人になってからも川遊びをしたことがある人でなければ、きっとわからない感覚です。
(ひーーー、ひいいいーー)
一気にからだが冷えてしまうのは危険でした。
いちど立ち上がって、
「じゃばっ、じゃばじゃば」
川からあがります。
ラジオのおじいさんがこっちを見ていました。
あの年齢でもまだ女に興味があるのかどうなのか、私にはよくわからないけど・・・
白ビキニのほっそりした姿が日差しの下で映えているはずです。
(最高だ・・・最高すぎる・・・)
(川で水浴びするのって最高・・・)
岩壁のこちら側で日陰スペースに身を隠しました。
おじいさんには見えていない場所です。
トートバッグの中からスポーツタオルを取り出して・・・
水着姿のままささっとからだの表面を拭きます。
すごい温度差でした。
冷たい水の中からあがって、急に『暑い』空気を感じているのに・・・
まるで寒気を感じるときと同じように身体が反応して、
『ぞくぞくぞくっ』
全身に鳥肌が立っています。
そして、
(うー、暑っつい)
(もう汗が噴き出してきた)
ペットボトルのキャップを開けて水をごくごく飲みました。
トートから日焼け止めのチューブケースを出して、
(暑い、暑い、暑い・・・)
肌に塗ろうとしますが噴きだす汗の勢いに追いつきません。
(意味ない)
(ぜんぜん塗れない)
だったらと思い、また立ち上がっていました。
川からは今あがったばかりですが、からだが再び涼を求めています。
水辺へと出ていって、
「ざばっ、ざばっ」
そのまま浅瀬に・・・
川水の冷たさが、一瞬にして汗を流し落としてくれていました。
石のごろごろした川底に腰をおろしたまま、背中を後ろに倒して・・・
顔以外の全身を水に沈めます。
「ざばざばざばざば」
頭に、耳に、水が当たり続けて水のざばざば以外に何も聞こえません。
太陽のまぶしさに目をかすませながら、
「ばしゃばしゃばしゃ」
顏にも水がかかりまくっています。
(ひいん、冷たい)
(最高。。。)
上半身を起こしました。
そのまま立ち上がって、今度こそちゃんと日焼け止めを塗ろうと河原にあがっていきます。
おじいさんが遠目にこちらを見ていました。
怖くなんてありません。
むしろ、
(ビキニの私を見て見てー)
ってそんな気持ちでした。
私は(いちおうまだ)ぎりぎり30代の会社員です。
自分で言うのもなんですが・・・
普段は本当におとなしくて、真面目そのものの日々を送っている人間でした。
そんな私が、からだにこんな安物のぺらっぺらなビキニだけをまとって自然の中にいます。
(私・・・こんなに)
(自由に振る舞ってる)
しゃがんでいたおじいさんが腰をあげているのが見えていました。
こっちに近づいて来ようとしているのがわかります。
私は、そっぽを向いたまま・・・
自分の荷物のある岩壁のこちら側に入っていきました。
(なに、なに、おじいさん?)
(どうしたの?)
川岸近くまでせり出した岩壁のこちら側で・・・
ペットボトルの水を口にします。
(来る)
怖くはありませんが緊張しました。
なぜ近づいて来ようとしてきているのか見当もつきません。
(何か私に)
(言いたいことでもあるの?)
石だらけの河原ですから足音が聞こえてくるはずでした。
そして案の定、
「がちゃっ、ざりっ」
岩壁をまわりこんでくる気配が耳に届いてきます。
・・・が、すぐそこで止まっていました。
(ん・・・どうした?)
岩壁のところから首を伸ばすようにして、おじいさんがこちらを見ています。
話しかけてこようというよりも、
(嘘でしょ、ほんとに?)
それはまさに『覗き』の行動でした。
(え、でも・・・ばればれなんだけど)
(ほんとに覗きなの?)
視界の端っこで捉えながらも、私は気づかないふりを続けています。
信じられない気分でした。
80オーバー(いや、もしかしたら70歳ぐらいなのかもしれないけど)のお年寄りが、水着の女を近くで覗きたいなんて思うものなのでしょうか。
しかも、近づいてきたのも覗いているのもバレバレで・・・
それでこっそり覗いているつもりなら、そんな相手のことがなんだか無性に不憫でかわいそうになってきます。
(おじいさん。。。)
ペットボトルを置いて、日焼け止めを手に取りました。
気づかないふりのまま、
(私のおっぱい見たいですか?)
ビキニブラを首の下までたくしあげます。
その瞬間、耳がかーっと熱くなりました。
おじいさんに胸が見えるようにしたまま、日焼け止めクリームをからだに伸ばしている自分がいます。
(私なんかのでよければ)
(今のうちに『そっと』見て)
ほんとは覗きなんかしたらだめなんだよ・・・
他の女にやってたら、騒ぎになっちゃってたかもよ・・・
(ごめんね、私のおっぱい)
(小っちゃくてごめんね)
ビキニブラを元どおり直しました。
レジャーシートに腰をおろします。
もういちどペットボトルに手を伸ばしかけたところで、
「ざりっ、じゃりじゃり」
いきなり足音が復活して・・・
目の前におじいさんが登場していました。
私は、初めて気づいたようなふりをしてあげます。
(どういうつもり)
(もしかして私、何か怒られるの?)
何の用か本当にわからなくて、
(どきどきどき)
内心緊張しました。
「あの・・・どうかなさっ・・・」
私が声を発しかけたその瞬間・・・
その場に腰をおろして、
『ざりっ』
地面に座ってしまったおじいさんです。
顔をしかめていました。
「どうしたんですか」
「大丈夫ですか」
明らかに怪しいなと思いながらも、心配になって寄り添ってあげた私です。
でも・・・瞬間的に見抜いていました。
お年寄りですが、ものすごくいやらしい目をしています。
(嘘っぽい)
そして確信していました。
なんだよ、
(びっくりさせて)
この人、ただのエロじじいじゃんか・・・
一瞬にして演技だとわかります。
見た目のみすぼらしさも相まって、そこまでしてくる相手にかえって憐れみと同情心を抱いてしまう私でした。
(わざとらしすぎるよ)
(おじいちゃん)
これでも普段は楚々とした『美人』で通っている私です。
若い子には私なんかおばさんなんだろうけど・・・
このジイさんには、
(いま私のことが)
天使に見えてるんだろうな・・・
「どうしたんですか」
「大丈夫、おじいちゃん?」
ボケてるわけではなさそうでした。
そういえば、この人・・・
つい今しがたまで競馬かなにかをラジオで真剣に聞いていたぐらいです。
ボケているどころか、あざとさがにじみ出ていました。
私に向けている眼差しに、セクハラ気質な下心がみえみえです。
(こんな人に)
(負ける気はしないけど)
おじいさんの手が本人のひざの上にありました。
ためしに、
「大丈夫ですか、脚が痛いんですか?」
心配そうにしてあげると、うんうんと頷いています。
(嘘ばっかり)
(目がいやらしいってば)
われながら、なんて『善良』な女なんだろうと思いました。
一見ホームレスと見間違うかのような相手のふくらはぎを、やさしくさすってあげている彼女です。
ビキニの女に甲斐甲斐しくされて嬉しそうなお年寄り・・・
露骨にいやらしくなってきていました。
寄り添ってあげている私の胸もとを覗き込もうとせんばかりに、前のめりに顔を近づけてきます。
(ひいっ近いよ)
「ちゃんと水分とってますか?」
「熱中症になっちゃいますよ?」
そう声をかけてあげたとたんに白々しくぜいぜいしたふりを始めたので、
「脱水してるの?」
心配そうに顔をみつめてあげました。
キレイな女にこんなにやさしくされて、
(いまどんな気持ち?)
噓つきジイさん・・・
でもやっぱり、この人じゃどきどきできない・・・
いくらなんでも無理すぎる・・・
困ったな、
(邪険にあしらうわけにもいかないし)
どう追い払おう・・・
こんなふうに書くのは本当に申し訳ないけど、
(汚い顔だなあ)
年齢を刻んだからというだけでなく・・・
余計なことをしたらすぐに怪我でもさせてしまいそうに、非力でよぼよぼな印象です。
そんなおじいさんが、私の前でわざとらしい演技を続けていました。
急に「あーーー」とか唸りながら、
(いやん)
私にしなだれかかってきます。
(えー・・・ちょっと・・・)
(すごいセクハラ)
両腕で抱きとめてあげました。
しかたなく、まだ良い人を装い続けている私です。
「大丈夫!?具合悪い?」
若干パニックになっている『善人』の彼女・・・
ビキニの胸に顔を埋められてしまっているのですが、慌ててしまっていてそのことに意識がまわっていません。
「救急車呼べばいいの!?」
「どうしよう、スマホ持ってきてないよ・・・」
天使のままでいてあげました。
年老いたジイさんのからだを水着姿でぎゅっと抱きしめたまま、どうすればいいのかわからずに焦っているふりをしています。
(いやっ、そんなに押しつけないで)
(それじゃ痴漢、痴漢だよ・・・)
正直、このジイさんやりすぎだろと思いました。
もう本当にわざとらしすぎて・・・
しわくちゃの小汚い顔を、私の胸の膨らみに押しつけまくりです。
さすがに耐えかねて、
「誰か呼んでこなきゃ!」
「待っててください」
おじいさんのからだをぐいっと離しました。
いとも簡単に離れて、
(ずいぶん力が弱いんだな)
そう思ったのを憶えています。
でも次の瞬間、状況が一変していました。
ひょいと両方の手が伸びてきて・・・
ビキニの上から左右の胸をがばっと鷲掴みされます。
「えっ・・・」
反射的に演技していました。
信じられないという顔で硬直したまま、一瞬動けない彼女・・・
ビキニブラを強引に捲り上げられそうになって、
「きゃっ」
乳房を半分出させられたまま本気で嫌がってみせます。
「きゃあっ、なんですか」
「いやっ、やめてください」
演技を続けながらも頭の中が真っ白になりそうでした。
めくれあがったビキニブラから手を放してもらえずに、右のおっぱいがまる出しになっています。
(ひいいん、超はずかしい)
泣きそうになってみせますが・・・
同時に一瞬にして脳がフル回転していました。
このおじいさんなら、本気を出せば力でも負けることはありません。
(ああん、もっと)
内心、自信に満ちている『私』がいました。
そんなことしてくるなら、
(利用してやる)
年寄りだからって遠慮するもんか・・・
だったらこのまま、
(嫌がる私を)
(無理やり全裸にしちゃってよ)
そしたら私・・・
お嫁にいけないぐらい恥ずかしい・・・
どうせ周囲に人の目はないのです。
いざとなれば、素っ裸のままだろうと車まで走って逃げればいいだけの話でした。
というか、むしろそんな展開をイメージして興奮している自分がいます。
「やめてください、やめてください」
弱いふりをしました。
地面に尻もちをついたまま、すでにブラは首からぶら下がっているだけになっています。
露わになった胸を必死に手で隠すふりをしました。
おじいさんが私の腕を掴んでずらそうとします。
「やめてください、やめて」
泣きそうな声で、
「いやああ・・・」
阻止しようと頑張るふりをしてみせました。
そのまま気弱を装うチャンスを見計らいます。
「〇〇〇〇、〇〇〇〇〇のかーっ!」
いきなり一喝されました。
が、活舌が悪すぎて何を言っているのかほとんどわかりません。
でも、怒鳴られたのは好都合でした。
反射的にからだがすくんで萎縮してしまった演技をします。
無抵抗のままそっと腕をどかされる彼女・・・
(どきどきどき)
かわいそうな自分に興奮しました。
岩陰からこっそり覗かれるのとは違って、すごく被虐的なシチュエーションです。
左右のおっぱいを出させられて、
「ぃゃぁぁ」
死ぬほど恥じらってみせました。
でも、なにもかも自分の計算どおりというわけにはいきません。
否応もなく揉みしだかれてしまいます。
(ひいいいいー)
いやんいやん、それはやめて・・・
本当にイヤっ、
(ふざけんなよ)
くそじじい・・・
屈辱的でした。
私は『恥ずかしがりたがり』で、そのために他人の視線を利用したりするけど・・・
決してさわられたいわけではありません。
ふれられることを望む気持ちは1ミリもありませんでした。
しかも、こんな老人なんかに。
「は、恥ずかしいです・・・」
「やめてください、恥ずかしいです・・・」
振り払って勢いよく立ち上がればいいだけでした。
でも我慢します。
私は悪くない・・・
ここで終わりにしたくありませんでした。
奥歯をかみしめてうつむいてしまっている気の弱い女を演じてやっています。
両方の腕をつかまれていました。
次の瞬間、無理やりバンザイみたいにさせられて・・・
無防備になった私の胸に、エロじいさんが吸いつこうとしてきます。
(いやんいやん)
むしゃぶりつかれていました。
このときばかりは本当に嫌で、振りほどいて突き飛ばしてやろうかと思ったぐらいです。
もうずっと何年も、誰にも許してこなかった自分の胸なのに・・・
そう思うと涙が出そうでした。
よりによってこんな年寄りなんかが、その老いた口に私の乳首をふくんでいます。
耐えられませんでした。
「やめてよおっ!」
ジイさんのからだを突き放します。
泣き崩れるふりをしてみせました。
「なんで、なんで・・・」
さすがにまずいと思ったのか、
「あんたが〇〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇〇〇」
ジイさんが急に猫なで声になっています。
でも、やっぱり何を言っているのかよく聞き取れませんでした。
神妙な顔で、
「〇〇〇〇、人妻なら〇〇〇、〇〇〇〇なさい」
なにやら諭すように話しかけてきます。
地面にへたりこんだまま泣いている私をそっと抱きしめてきて・・・
でも、相変わらずの嘘くささでした。
けっきょくこの人は、女に対していやらしいだけなのです。
やさしく抱きしめているふりをして、どさくさ紛れに私の背中を撫でまわしています。
(何言ってんだよ、人妻ってなんだよ)
(人妻じゃねーよ)
心にぽっかり穴があきました。
そしてなんだか急に、何もかも馬鹿らしくなってきます。
(こんな人なんかに)
(なんで私が)
演技するのをやめていました。
イメージするような展開をこの人に期待しても無駄です。
(もう関係ない)
(どうでもいい)
帰ろうと思いました。
演技をやめた私は、まるで何事もなかったかのような平然とした顔で立ち上がります。
その豹変ぶりに、ぽかんとしているおじいさん・・・
(おっぱい吸われた)
(こんなじじいに・・・)
あまり実感がありませんが、私なりにけっこうショックでした。
もうここにいたくありません。
まだそこにいるジイさんに目もくれず帰り支度をはじめますが、その前に・・・
首にぶら下がっていたビキニブラを外しました。
トートバッグの中に放り込みます。
「ざりっ、じゃりっ、ざりっ」
トップレスのまま、ひとりで水辺に歩いていきました。
浅瀬に入っていって、さっきのあたりの場所に腰をおろします。
「ざばっ」
澄んだ水流に全身を清められながら、
(ばか、ばか、ばか)
虚しい気分そのものを洗い流していました。
(あああ、ああーーー)
(気持ちいい。。。)
まるで思考が抜け落ちたみたいに・・・
ちっぽけなことなんて本当どうでもよくなります。
川底に座ったままあぐらをかくような格好で、はいていたサンダルを脱ぎました。
河原に向けて、
『ぽーーーん』
放り投げます。
河原の丸太(流木?)に腰かけたジイさんが、にやにやこちらを眺めているのが見えていました。
私は、もう目線を合わせすらしません。
(そんなにおっぱいが好きなら)
(好きなだけそこで見てたらいい)
背中を倒すようにしてからだを流れに沈めました。
『ざばざばざばざば』
頭から冷たい流水を受けて、
(ひいーーーん)
例えようのない気持ちよさです。
(もう知ったことか)
その格好のまま、ビキニパンツに手をかけました。
水中で脱いでしまいます。
足首から抜けた瞬間、そのまま流れていってしまう水着・・・
(あああ・・・)
なんなのでしょう。
水着があるかないかだけでこんなに違う気持ちよさは・・・
すっぽんぽんで仰向けに寝泳ぎしていました。
まばゆい日差しに目を細めていると、気持ちの憂さも消えていくのを感じます。
(ひいん最高・・・)
からだが冷えてきているのがわかりますが、
(ああ・・・この開放感・・・)
ぜんぜん川からあがる気がしませんでした。
わずか数十センチの浅瀬の水面で、澄んだ清らかさと一体になる私・・・
世の中における自分の存在なんて豆粒のようなものにしか思えなくなってきます。
(帰るか)
上半身を起こして、
「ざばっ」
一糸まとわぬ姿でその場に立ち上がりました。
私のことをじっと見ているギャラリーがあそこにひとりいます。
ねえ、ジイさん・・・
(私を見て)
はだしの足裏を怪我しないように気をつけながら、
「ざばっ、ざばっ」
河原にあがっていきました。
サンダルを拾って手に持ったまま、荷物のところに戻っていきます。
オールヌードの自分が快感でした。
丸太に腰かけているエロじいさんが、目を見開いたまま私の下半身をみつめています。
(ごめんね、おじいちゃん)
(私が誑かしたようなものだもんね)
でも、もう相手にしませんでした。
その視線を完全無視して、敷いていたレジャーシートを両手で持ちます。
空中で何度かはためかせるようして、
「ばさっ、ばさっ、ばさっ・・・」
砂利を払いました。
適当にたたんでトートの中に突っ込みます。
どうせニ度と会うこともない人でした。
全裸のままどこも隠さずに荷物を片付けてみせています。
(あああん、恥ずかしい)
(超にやにやしてる)
そう・・・ニ度と会うこともない・・・
極論ですが、自分の知人にバレさえしなければここで何をやっても私の日常に影響はありませんでした。
サンダルを手に持って、丸太に腰かけているジイさんのほうに歩いていきます。
(どきどきどき)
理性が頭の中でやめてやめてと言っていました。
その葛藤を振り払いながら、全裸な自分に興奮を昂らせます。
(だめえ、だめえ)
わざわざ目の前1メートルの至近距離まで近づいていって、真正面に立ちました。
くるっと背を向けて、
『ぽたっ、ぽとっ』
足もとにサンダルを置きます。
両足ともはきました。
腰かけているエロじいさんの目と鼻の先に私のお尻があります。
そのまま思いっきり前屈みになって・・・
(ひいいいー)
ここで社名は絶対に明かせませんが、私の正体は〇〇〇の支社に勤務する普通の会社員です。
その私がジイさんの顔前にお尻を突き出して、
(ひいいいん)
かかとのストラップを締めていました。
左右に開き切った無防備なお尻を、これでもかというぐらい目の前に近づけてやっています。
(あああ、だめ・・・)
背徳的な快感が脳の中にどばどばあふれ出ていました。
大胆な前屈みポーズのまま、
(死ぬ・・・恥ずかしすぎて死ぬ・・・)
もう片方の足も、かかとのストラップをしっかりと締めます。
そしてからだを起こしました。
またくるっとジイさんのほうを向きます。
(ばくばくばくばく)
私の行動に唖然としているおじいさん・・・
その顔を見た瞬間、
(あああ、私・・・)
猛烈な後悔が押し寄せていました。
私、わたし、最低だ・・・
(人まえでなんてことを)
ごめんね、ごめん・・・
すさまじい罪悪感に襲われて胸を締め付けられます。
思わず、
「ああぁ、嫌あぁ」
まっすぐ前に近づいていました。
呆然と腰かけているジイさんの後頭部に両手をまわして強引に引き寄せます。
棒立ちな自分の股間に顔を埋めさせました。
(ああああ・・・許して)
(これで許して)
自分でもわけがわかりません。
半泣きになりながら、
「ごめんなさい、ごめんなさい」
毛量の薄いアンダーヘアをジイさんのおでこに押しつけていました。
そして白状します。
「私、あなたのことを・・・」
いや、やっぱり言えませんでした。
利用しようとしたなんて。
その代わりに、
「キスして、キスして・・・」
顔をかがめて自らジイさんの唇を奪う私・・・
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ」
そして駆け出していました。
トートバッグを拾い上げて、
「ざりっ、ざりざりっ、じゃりっ」
岩壁の向こうへと、砂利の河原をサンダルひとつの素っ裸で走ります。
(ひいいいん)
一目散に道路への斜面を上がっていきながら、心臓のばくばくがとまりませんでした。
水着の下は川に流されてしまいましたが、Tシャツとショートパンツはこのトートの中に入っています。
予備の服の包みも車の近くに隠してありました。
(やばい、あああ、やばい)
逃げるのと服を着るのと、どっちが先?
(ひいん、ひいいいー)
けっきょく全裸のままガードレールをまたいでいました。
誰もいない灼熱の道路で慌てて服を着ます。
隠していた車のキーと包みを回収して、車内に飛びこみました。
(ばくばくばくばく)
車の中でサンダルをスニーカーにはきかえながら・・・
今頃になって、
(ひいいいー、恥ずかしい)
死にそうに自尊心を掻きむしられている自分がいます。
後ろめたさいっぱいの気持ちのままエンジンをかけて、すかさず発進させる『私』でした。
(PS)
長文にお付き合いくださってありがとうございました。
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