20分ぐらいタクシーに乗って、その町に降り立ちました。
普段は完全に生活圏外の町なのですが、まるでホームタウンに戻ってきたかのような気分です。
(また来ちゃった)
もう雨はやんでいました。
傘をさす必要はありません。
(天気が悪かったからかな)
(人も少ない)
今年の1月、ひとりで初詣に来た帰りに寄ったのが初めてでした。
その後、何回か訪ねてきているので・・・
もう5回目?
そのカフェは神社とは線路を挟んだ反対側にあります。
(静かな町だなあ。。。)
はだかにレインコートをまとったこの服装で、どきどきしながら歩いていきました。
数分でお店が見えてきます。
(どきどきどき)
入店してコーヒーとケーキをオーダーしました。
何度も来ていますからこのお店の勝手はわかっています。
トレイを受け取って、
「とん、とん、とん」
2階席へと幅の狭い階段を上がっていきました。
この瞬間がちょっと緊張です。
(どきどきどき)
2階席が混んでいるかどうか・・・
運命の分かれ道でした。
これだけは運とタイミングに賭けるしかありません。
(あれっ・・・)
びっくりしました。
誰もいなかったからです。
狭い2階席はいつもたいてい人が少なくて、だからこそ狙い目のお店だったのですが・・・
さすがに誰もいないということはまずありませんでした。
(よーし)
(ついてる)
次に来た人が男性客だったら、いきなり1対1のシチュエーションです。
逆に女性客だったら長居されてしまう可能性が高いので、
(難しいかな)
そのときは早々にこの場を見切ったほうがいいように思えました。
ちょっと迷いながら、いつものスツール席のテーブルにトレイを置きます。
(次に来た人はたぶん)
(向かいのそのソファ席に座る)
いろいろ計算していました。
隣の席にミニリュックを置きます。
たまたま今は私しかいないとはいえ、すぐにも他の誰かが来るのは確実でした。
無人なのにすでにどきどきしています。
でも、
(逆にいえば今は・・・)
(誰もいないんだから)
レインコートのボタンを、
「ぼちっ、ぼちっ、ぼちっ」
ひとつずつ外しました。
(どきどきどき)
そのまま脱いでしまって、
(ひいいん。。。)
一瞬でまたすぐに着られるかたちに広げて横の席のテーブルに置きます。
防犯カメラがないのは知っていました。
露わになったおっぱいに鳥肌がたっています。
(ひいー)
非日常のシチュエーションに、心臓がばくばくしました。
身につけているのは、スニーカーとソックスだけです。
普通のカフェでパンツすらはいていない自分に興奮をおさえられませんでした。
全裸同然の姿で優雅にスツールに腰かけます。
(私、やばい・・・やばすぎるよ・・・こんなとこで)
(なんて格好・・・)
人に見られたらおしまいでした。
ハラハラなんてものではありません。
心臓が喉までせりあがってきそうな気分でした。
はだかのまま、びくびくしながらコーヒーを口にします。
(だめえ、だめえ)
(早く着ないと)
こんな状況でコーヒーの味なんてわかるはずがありませんでした。
だけど、高揚感も尋常ではありません。
スツールから降りて、
(ああ、私・・・)
みつかったら死んじゃう・・・
すたすたとセルフの給水機の前まで歩いていきました。
(ひいい、死ぬ・・・死ぬ・・・)
どきどきしながら全神経を研ぎ澄ませています。
緊張と興奮で、股からあふれたおつゆが太ももまで垂れていました。
だいじょうぶ・・・
誰かが階段を上がって来る気配があれば、すぐに音でわかります。
プラスチックのコップに注いだ水を、その場で飲み干しました。
空になったコップを、隣の食器返却棚に置きます。
(ひいんもうだめ)
(心臓がやばい)
ほんと、普通に『普通』のカフェの中で素っ裸同然でした。
こんなこと誰かにバレたら、
(死んじゃう)
おそらく会社のクビも免れません。
(あああ、ああああ・・・)
返却棚に置かれた食器に、誰かの食べ残しのホットドッグがありました。
手に取って太ももに挟みます。
パンの固い表面が肌にざらざらしました。
かじりかけの部分で内ももに垂れた恥ずかしいおつゆを拭います。
(ああああああ)
(もうだめ)
限界でした。
背徳感にひざががくがくしてまともに立っていられません。
自分の席に駆け戻っていました。
泣きそうになりながら、
(ひいいいい、ひいいいー)
慌ててレインコートに腕を通します。
ペラペラなナイロンのレインコートなのに・・・
素肌にその1枚をまとっただけで、心底『ほっ』と安堵することができました。
(とにかく・・・とにかく・・・もうだめ)
(こんなことしてちゃだめ)
平常心を取り戻そうとコーヒーを口にします。
ケーキをひとくち食べて、
(どきどきどき)
懸命に気持ちを落ち着かせました。
レインコートのボタンはひとつも留めておらず、まだガウンのような状態です。
でも、これならいつでも一瞬で前を閉じることができました。
(ああん、乳首が痛い)
(固くなって痛いよ)
愚かすぎる自分の行為に泣きそうになります。
強烈な自己嫌悪に襲われていました。
友だちはみんな、
(幸せに家庭を築いてる)
それなのに・・・
私なんて、
(あんな『メガネおやじ』なんかに)
おっぱい見られてニヤニヤされて・・・
(まじめなのに)
本当は私がいちばんまじめなのに・・・
ばか、ばか・・・
すごくみじめでした。
そのくせ、その感情とはまったく別の思考回路で、
(だいじょうぶ)
この格好でいれば大丈夫・・・
心の奥底のもうひとりの自分は、冷静に状況を分析しています。
(だいじょうぶ)
(もう危ないことはしないから)
スツールから降りました。
レインコートを肩まではだけると、からだがほぼまる出しになります。
下着すらつけていない私のヌードでした。
頭の中がすーっと白くなっていくのを感じながら・・・
カフェの真ん中で立ち尽くしている自分がいます。
見知らぬ男性がそこのソファからにやにや見ているのを想像するだけで快感でした。
(ああ、みんな)
(私のことを嫌いにならないで)
脳裏に職場の人たちの働いている姿を思い浮かべます。
私は誰にも迷惑かけてない・・・
だから、
(こんなことしてる私を許して)
私はただ、私ではない『私』にどきどきしてるだけなの・・・
(でもわかってる)
(こんなことしてたらいつか破滅する)
さっき水を飲んだばかりなのに、もう喉がからからでした。
すぐに前を閉じられるように身構えながら、
(もうやめよう)
こんなこと、もう今日でやめよう・・・
もういちど給水機のところに行きました。
コップに水を汲んで飲み干します。
(帰ったらもう全部捨てる)
(あの下着もスカートも)
柱のこちら側の席に、誰かが忘れていったビニール傘が置きっぱなしになっていました。
帰り際に店員さんに届けてあげようと思って手に取ります。
もう卒業しよう、
(あぶない橋を渡るのは)
露出とか、なんの意味もないのに馬鹿げてる・・・
今日を限りに、もう金輪際しないと決心していました。
私は変なところに頑固な性格で、いちど決めたら意思は固いのです。
(それにしても)
(さっきの痴漢)
電車の中でのことを思い出していました。
どこの誰だか知らないけど、
(ふざけんなよ)
あのとき、パンツはいてないってバレでもしてたら・・・
危なかったかもしれません。
(あれだって)
(運がよかったから助かっただけ)
もし、バレてたら・・・
手にしていたビニール傘をくるっとひっくり返して持ちました。
柄の『J』型の部分で引っ掛けるようにして、
『ひょい』
背後からレインコートの下をめくります。
(やだ、やめて)
(お尻出ちゃう)
自分の意思とは関係なく、傘の『J』が私のお尻を撫でまわしていました。
(だいたい何なの)
(あの態度)
心の中ですべてを他人のせいにします。
メガネおやじ、
(あなたが悪い)
私のことを、あんな『上から目線』の態度で手招きするなんて・・・
(私はあなたを喜ばせてあげたのに)
(なんでそんなに偉そうなの?)
自分は何もしないくせに・・・
私あなたに、
(何の義理もないんだよ)
なのに見れて当然みたいな顔しないでよ・・・
傘のJの先端が、無遠慮に私のお尻の穴を掻いていました。
私だって本当は、
(普通の真面目な女なんだから)
その私が・・・私なのに・・・
いやんいやん、
(そんなとこ)
さわんないで・・・
(変態・・・変態・・・)
傘のJが、前にまわってきます。
もう危ないことはしないと決めたばかりでした。
それなのに、
(いやっ、いやっ)
まるで押し倒されたかのように目の前のソファ席に身を沈めている私です。
(こんなとこで)
(だめ・・・だめ・・・危なすぎる)
誰かの固い手(傘のJ)が、貧弱な私の胸を押しつぶすように嬲っていました。
気持ちの中で必死に嫌がってみせますが、
(あああん、やめて。。。)
容赦なく乳首にぶつかってきています。
自分でも信じられない早さでした。
大げさでもなんでもなく・・・わずか10秒かそこらで、もうあそこからおつゆがあふれています。
(私がいちばん美人なのに)
(あんたなんかに見せたくもない)
傘の持ち手を替えました。
Jの先端が太ももの内側を狙ってきて、
(ああっ、あっ、あっ)
股間の割れ目を何度もなぞります。
(やめてよ、意地悪、いじわる・・・)
敏感な部分にふれて、全身がびくびく痙攣しました。
瞬時にしてすでにイきそうなモードです。
やばいとわかっていました。
場所が場所だけにリスキーにもほどがあります。
(だめえ、やめて)
(人が来たら死んじゃう)
ぬるぬるに任せて入口に押し当てました。
さすがに挿れはしませんが、
(いやあ・・・嫌ああ・・・)
股の割れ目で柄の先端を挟んでいます。
(しないって決めたのに)
(危ないことしないって)
声を漏らすわけにはいきませんでした。
奥歯を噛みしめたまま、
(あっあっあっ)
かわいそうな自分を想像します。
メガネおやじにイタズラされている自分を脳裏によぎらせました。
傘のJの先端を震わせて・・・
喘ぎをこらえるあまり鼻で息ができません。
まだ始めて1分なのに絶頂の兆しが一気に迫りつつありました。
頭の中にふわーっと霧がかかっていきます。
(やめてやめて、イっちゃうよ)
(こんな場所でイっちゃう、ああああ)
跳ねるように飛び起きていました。
一瞬にして席に戻って、
(ひいいいい)
腰かけながらレインコートの前を合わせます。
と同時に足音が上がってきていました。
コーヒーのトレイを持ったお兄さんがひとり現れます。
(ああああああ)
ほんと、ぎりぎりすぎて死ぬかと思いました。
紙一重の切迫感に恐怖を覚えて、本当は動揺しまくっている私・・・
何事もなかったかのようにカップを手にして、平然とコーヒーを口にしてみせています。
(どきどきどき)
男性が私をちらっと見ました。
不審がる様子もなく、ソファ席に荷物を置いています。
(だいじょうぶバレてない)
(見られずにすんだ)
正直、生きた心地がしませんでした。
レインコートの前をかろうじて合わせてはいましたが、なんとか腕で押さえているというだけです。
何食わぬ顔をしてみせていながらも心臓がばくばくでした。
すぐに出ていこうと思って呼吸が落ち着くのを待ちます。
(どきどきどき)
若い男性でした。
せいぜい20代半ばぐらいでしょうか。
2席で一対になっているソファのうち、私に背を向ける側の席に腰かけていました。
だいじょうぶ・・・
とりあえず危機を切り抜けた状況にあります。
(帰ろう、今のうちに)
(ぼろが出る前に)
レインコートのボタンを、
「ぽつ・・っ・・・ぽつ・・っ・・・」
ひとつずつ静かに留めました。
ミニリュックを手もとに引き寄せて帰り支度をします。
(ああだめ、立てない)
(力が入らない)
文字どおり、まさに腰が抜けてしまったような状態でした。
そして、ものすごい罪悪感にかられます。
私は・・・私は・・・
(バレなかったとはいえ)
悪い人間でした。
自分のやったことに対する後ろめたさが半端ではありません。
(だめ、いま泣いちゃだめ)
(こんなとこで泣いちゃだめ)
まだカップの中にコーヒーが残っていました。
ケーキなんてほとんど手つかずです。
(だめだ)
(涙が・・・)
スツールを降りてリュックを背負いました。
返却棚のところまで歩いていって、トレイを置きます。
そのまま階段を下りていきました。
(ひいいー)
逃げるような気持ちでお店から出ます。
みじめさに耐えられなくなって、歩きながらすすり泣いていました。
「ぐすっ、ぐすっ」
でも本当は、
(あああん、最高。。。)
背徳的な感情の余韻に心が満たされていく私です。
『今日でやめよう』とか『もう卒業しよう』とかそんなふうに思うのは毎度のことでした。
だけど、この興奮を忘れられるはずがありません。
(早く帰って)
(ちゃんとオナニーしよう)
線路の向こうに陽の光が差していました。
もう雨なんて降っていないのに、レインコート姿の私です。
降ってなくても、
(どきどきどき)
このレインコートは脱ぐことも前を開けることもできませんでした。
だって、中には何も着ていないんだから。
見ず知らずの人たちが私とすれ違って歩いていきます。
電車に乗って、
(よかった・・・すごく)
心晴れやかに帰途についた『私』でした。
(PS)
長文にお付き合いくださってありがとうございました。
私は書くこと自体は好きですが・・・
書いたものを投稿するかしないかは、もう自分の気まぐれでいいと思うようになりました。
投稿の催促とか、他のも読ませろとか、ご容赦ください。
ますます投稿する気が失せるだけです。
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