コンペの前日、自分を鼓舞する為に、オシャレをして街に出る。
アガってしまって、プレゼンで失敗しないよう、注目される事に慣れておく必要がある。
頭の中で、堂々と発表している自分の姿をイメージしながら、挑発的な格好で夜の繁華街を歩く。
オンナに飢えた♂が、一人歩きしている無防備な私を狙って、鋭い視線を送ってくる。
翌日に、大事な仕事を控えている緊張感もあって、ドキドキする。
アダルトショップに入ってみた。
同僚や友人とは、絶対に入れないお店の中には、裸の女性が写ったポスターや商品が並び、卑猥な言葉が文字になっていた。
「いらっしゃい、こういうお店は初めて?」
母親ぐらいのトシの女性に声をかけられたので、思わず
「はい」
と正直に答えてしまった。
「今日は、何をお求めかしら」
と聞かれたので、私は
「勝負下着です」
と答えた。
特に何も買うつもりは無かったけど、店員に声をかけられて、思わず嘘を吐いた。
「今夜はデート?」
「羨ましいわね」
と言いながら、売り場を案内する彼女の後を付いていった。
露骨に男性器を型取った商品が並ぶ通路を抜けて、カップルとスレ違っていると、緊張が興奮に替わって行った。
下着売り場は、卑猥な売り文句と、挑発的なポーズをした女性の写真で飾られ、その空間にいるだけで、吸い込まれて行きそうになった。
「これにしようかな?」
と手に取った商品は、通販サイトで見かけた商品で、店長のオススメと書かれていた。
「うーん、アナタにはコチラの方が、似合うと思うけど」
と言って、店員がススメて来たのは、女王コスを思わせる黒光りした下着だった。
「自信を付けたいんでしょ?」
と言われて、思わずハッとした。
私は、自分に自信が足りないから、夜の街に来た事を再認識した。
彼女のススメてくれた商品を買ったら、小さな小瓶に入った香水をオマケにつけてくれた。
「頑張ってね」
と励まされ、
「はい」
と微笑み返して店を出た。
翌日、勝負スーツの下に勝負下着を着て、コンペの会場に入ると、ライバル会社の担当者からも注目を浴びた。
でも、その視線に恐怖心は無く、見られる事がむしろ快感になった。
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