翌日・・・
宿をチェックアウトしてから、しばらくドライブをしていました。
行き先のあてなどありません。
ただの時間つぶしです。
朝、起きたときから自分の中で何かが吹っ切れたような気がしていました。
(帰ろう)
(自分ちに)
そう・・・何の変わり映えもしない、日常の生活に。
でも、
(その前に・・・)
待っていました。
あの公共温泉がオープンする時間になるのを。
(だめで、もともと)
オープンと同時ではなく、その30分後ぐらいのタイミングを狙っていました。
以前にも使った同じ駐車場に、運転してきたレンタカーを停めます。
お風呂道具の入った袋を持って、あの『混浴』の公共浴場へと歩いていきました。
人通りの少ない、町のはずれの方角です。
(ただお風呂に入るだけ)
(なんでびくびくしなきゃいけないの)
心の中で必死に強がってみせてはいますが、すでに心臓はばくばくでした。
建物が見えてきます。
(けっきょく)
(また来ちゃった)
脱衣スペースに入りました。
(どきどきどき)
でも・・・誰もいません。
使用中の脱衣カゴはありませんでした。
引き戸を開けて浴場の中を確認しますが、やはり誰もいません。
私ひとりでした。
(どうする?)
ちょっと迷いました。
・・・が、お風呂に入って浴場で待つのはやめておきます。
この脱衣場で誰かが来るのを待つことにしました。
もし現れたのが、多少なりともリスクを感じさせるような人だったら・・・
そのまま、さっと帰ればいいからです。
(どきどきどき)
脱衣場にひとりで立ちつくしたまま、胸苦しいような緊張感と戦っていました。
1分が、10分にも感じられるような感覚です。
(ああ、どうしよう)
(男の人が来ちゃったら)
それを望んでいるくせに・・・
一方では、そうなることの重圧に耐えられない心境の自分がいます。
(ああ・・・)
(だめだ・・・)
待ち受けることのプレッシャーに押しつぶされていました。
たぶん15分ぐらい粘って・・・
でも、それが私にとっての精神的な限界でした。
(無理、無理、無理)
持ってきた荷物を抱えて、スニーカーに足を突っ込みます。
そして、
(もう帰る)
打ちひしがれたような気持ちで駐車場に戻る私でした。
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