旅館に戻って、寝る前にもういちど宿のお風呂に入りました。
何の変哲もない、よくある普通のお風呂です。
虚しさと寂しさで、気持ちが『無』になっていました。
洗い場のイスに腰かけて、備え付けのボディソープを手に取ります。
アンダーヘアに泡立てました。
わき用の、T字カミソリを当てます。
生涯、初めてでした。
無心でアンダーヘアを剃り落としている自分がいます。
もともと、私はかなり薄いほうでした。
それがつるつるになるまで、すべて丁寧に剃ってしまいます。
シャワーを浴びて、湯船のお湯につかりました。
別に、なんの感慨もありません。
本来あるべきものがないという違和感があるだけでした。
お風呂を上がって、脱衣所の鏡の前に立ちます。
不思議な感覚でした。
まるで洋服屋のマネキンでも眺めているような、無機質な気持ちです。
自分の部屋に戻ってから・・・
長い夜を過ごしていました。
なんだか、ぜんぜん寝付けません。
ひとりでビールを飲みながら、いろいろ考えていました。
将来のこと・・・
そして、これまで歩んできた自分の人生(?)について・・・
考えたところで、もちろん答えなど出るわけありません。
ビールの酔いに誘われて、
(私って、なんなんだろうな)
いつのまにか眠りについていた『私』でした。
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