調教を志願している相手と言っても、男は男。
私も会って話をするまで、凄く緊張していた。
身長は、私と同じぐらいの彼は、変態とは無縁そうな清潔感を漂わせていた。
待ち合わせ時間の前から待っていたらしく、喫茶店の個室に入ると、
「今日は晴れてるけど、寒いですね」
と、いきなり陽気の話を始めた。
先ずは減点。
初対面の相手に、ネガティブに「寒い」と言葉にするのは、マイナス評価だ。
(寒いのは私のせいじゃない)
見た目は、21以上(サークルの入会資格)に見えないほど若かった。
念のため、身分証を見せて貰ったら、私より3歳年下だけど、ちゃんと条件はクリアしていた。
しかし、既に結婚まで考えている彼女がいるらしい。
ジャニーズ系の童顔で、確かに女装が似合いそうだった。
そんな彼が向かいに座ると、お約束みたいに私のオッパイを見つめてきた。
「オッパイがキレイですね」
と言われた。
これはプラス評価。
職場ではセクハラで、免職ものだけど、イケメンにプライベートで言われるのは嬉しい。
私も
「ありがとう」
と返した。
彼の私を見る視線は、どこか普通とは違っていると思った。
私を観察しているのは間違いないのだけれど、エロい感じでもなく、羨望みたいな感覚もあった。
「女装が趣味らしいけど、私で良かったの?」
「良かったら、ソッチ方面もイケる知り合いを紹介するけど?」
と言うと、
「僕は、ソッチじゃないんです」
と答えた。
全くプレイがイメージ出来なかった。
話が噛み合わない。
ギクシャクして、話を打ち切ろうとしたら、彼がスマホの画面を私に見せてきた。
そこには家の中で緊縛されている中年女性の姿があった。
悲愴感もなく、恍惚とした表情で、撮影者を見つめる感じが、縄酔いしているように見えた。
「これって、貴方のセフレ?」
と尋ねると、
「母です」
と彼は答えた。
「え?お母さん?本当に?」
「なんで?」
意味が分からなかった。
自分の母親の縛られてる姿を、スマホに保存して持ち歩く彼の性癖に、薄気味悪さを感じていた。
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