階段道を下りきりました。
いま降り立ったこの川べりのお風呂が男湯です。
そして、あっちに見える古びた木戸の向こうが女湯の入口でした。
山の谷間の素晴らしい景色が目の前に広がっています。
渓流のせせらぎと遠くの鳥の声が、私たちを迎え入れてくれていました。
「すごく素敵」
ロケーションに感激しているふりをします。
「いいところですねえ・・・」
野天風呂ならではの開放感に、
「これなら誰かに見られたって気にならないでしょ?」
まゆげさんが、わざとらしく私のことをからかってきました。
「やめてくださいよ」
もちろん相手に悪気がないことぐらいわかります。
でも、私は・・・
(この人、セクハラするタイプだな)
このおじさんの本性を垣間見たような気がしました。
「あなた、スタイルもすらっとしてるもんね」
ムキになった口調で、
「そういうの本当にやめてください」
あからさまに嫌そうな顔をします。
そのうえで、
「私、泣いちゃいますよ」
拗ねた子どものように口を尖らせて、ふたりの笑いを誘いました。
「ごめんごめん」
「冗談ですよ」
おじさんたちが、にこにこ見ています。
「でも、来てよかったぁ」
「こんな素敵な温泉、初めてです」
景色に目を奪われているふりをしながら、しみじみとつぶやいてみせました。
そして、
「それじゃあ、どうも」
にこやかに会釈を交わして、ふたりから離れます。
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