(続きです)
会場は最寄り駅から程近い立派なシティホテルの一室でした。
100人は入りそうな部屋には既にテーブルや食器が配置されていて、立食パーティーの準備がたった今されているところでした。
部屋の入り口には受付も用意されていて、まだ人はいないものの、相当の人数の招待客がくることを推測させました。
先生は、私を準備作業中の部屋に背中を支えるように案内してくれました。
部屋の奥の一角に移動式の間仕切りがあり、間仕切りの裏を案内されると、たくさんの名前入りの花束がおかれていました。
「今日の体調はどうだね?」
いつものように私を気遣ってそう尋ねてくれました。
「大丈夫です」
私は少し緊張もあり、静かに答えました。
「どうした? 元気ないな」
「大丈夫です。緊張しているだけです」
「そうか」
先生は花束の中の中央の1つを抱き抱えるようにして移動しました。
その花束を移動したときに、初めてそこに椅子が置いてあることに私は気付きました。
椅子は中世のヨーロッパのお城に似合いそうな形態のものでした。
「下のカフェで、お茶でも飲もうか?」
先生は私の背中をやさしく支え、エレベーターに乗り込み、1階のボタンを押しました。
(続きます)
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