(続きです)
ザワザワしていた会場が次第に静まり返っていきました。
先生はマイクで、私の育った家庭環境や、学生時代のエピソードにも触れ、私が優等生としての十代を過ごしてきたこと、あまり世俗の垢にまみれていないお嬢様育ちであることなどを強調しました。
会場からは再びざわめきが起こり始めました。
「どうぞ、みなさん、ぜひ私のオブジェを間近でじっくり観察してください」
今まで静かに話していた先生は、強い口調でそう言いました。
私に向かって、足音、人間の気配が近づいてくるのがわかりました。
「さあ、どうぞ! 遠慮は要りません。今、ここでしかご覧いただけません。さあ、どうぞ!」
先生は繰り返しオブジェを近くで見るように訴えかけます。
私は、あまりの恥ずかしさと緊張で、気を失いそうでした。
私の前にジワジワと人だかりができていくのを感じました。
「さあ、みなさん! お近くに! さあ!」
先生が繰り返します。
「オブジェのすぐ脇に筆を用意しました。グラスに入った透明の液体を筆につけて、オブジェへのペインティングをしてみてください」
(あの筆が・・、やっぱり・・)
気が変になりそう・・
助けて・・
(続きます)
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