小生の最大の危機は今から〇〇年前の高校生時代の事であった。当時にしてすでに4~5年のキャリアを持つ小生はもっぱら某駅ビルのトイレを愛用していた。そこは婦人服売り場がメインのフロアであり女性利用客が8割を占めるトイレなのであった。そして男女それぞれの入口ドアには青と赤のプラスチック板が貼ってあり、これがうまい具合にドアの角度を調整すれば片方ではトイレに向かってきた人間、もう片方では女子トイレの洗面台が反射を利用して写る仕組みになっていた。そしてトイレに来た人間が男なら大の方に隠れ、女なら直接は見せずに反射を利してOを見せると言うもので、今にしても最強のポイントであったと思う。逃げ場が無い事を除けば、であるが。その日、小生は母から頼まれた買物をしに駅ビルに寄ったのだが例によってRを行う事に決めた。入ってきた女性の何人かに反射Rしていたのだがその日はまだ気付いてくれる人はおらずやっと気付いてくれた20台前半とおぼしき女性にはハッとされた後に即座に去られてしまい、しばらく空白が続いていると侵入者チェック側のドアプラスチック板にガードマンとおぼしき奴がトイレ通路を覗きこんでいるのを発見。そこで通報された事を悟った小生は出るに出られず大の方に閉じこもった。便器の中で必死に言い訳を考えているとやがて複数の足音からノックの音。「具合悪いんですか」わざとらしい奴だ…。他に言うべき言葉も見つからず「今出ます」と小生。ドアを開けた途端に身体検査、そして有無を言わさず任意同行。通用口から駅前の交番へ連れていかれる中で周りの冷たい視線。交番の周囲には何故か人だかり。知っている人がいたらどうしよう。やがて交番奥でカーテンを引かれ事情聴取。何もしていないとしらを切る小生の耳にカーテンの向こうから通報者と思しき女性から事情を聞いているKの声が耳に入る。「…で、勃起していましたか」「えっ…」と戸惑う様子。結局、勢いあまって通報したのは良いけれど、あまりの騒ぎに女性の方が驚いてしまいきちんと証言するのを拒んだらしくうやむやになってしまい、その件は自宅に連絡され無事帰宅と相成った。その夜、話を聞いた父が交番に文句を言いに行き、Kも間違いだったと謝ってくれたらしい。もちろんそのポイントにはほとぼりが醒めるまで近付けなかったのは言うまでもない。やがてそのトイレは改装され、たくさんの思いでとともに消え去って行ったのだった。