去年まで近所の銭湯に週2回のペースで通っていました。
多くの人が利用するスーパー銭湯ではなく、住宅街にある番台式の銭湯です。
スーパー銭湯はお湯がぬるくて温まらないうえに、だだっ広い洗い場や浴槽には人が多くて騒々しいのに対し、昔ながらの銭湯はこじんまりしていて、お客さんも少なく静かで、熱めのお湯を湛えた浴槽、白いタイル貼りの洗い場、板張りの脱衣場に心身ともに癒されます。
お店が小さいので洗い場も狭く、カランの半分にしかシャワーが付いていないなど使い勝手は少し悪いのですが、浴槽のお湯の温度がまさに適温でした。
私が利用する夕方の時間帯、番台にはいつも年輩のご主人が座っていました。
脱衣場はひどく手狭なうえに、ロッカーは全て壁面に設置されているので隠れるスペースもなく、ご主人の目の前で服を脱いで裸になったり、お風呂上りのカラダをバスタオルで拭ったりするような感じになります。
女湯のお客さんは40歳代後半の私を除いて高齢者ばかりなので、そんなことを気にしている様子の人はいません。
自宅から徒歩10分で通える距離にあって、入浴料も350円と安く重宝したのですが、残念ながら去年廃業。
今回は、去年このお店で経験したちょっとHで間の抜けた出来事を披露します。
2月上旬の平日の午後、1カ月ぶりに銭湯に行きました。
新年早々に体調を崩し、肺炎と診断されて2日間の入院点滴治療を受け、その後も仕事を休んでしばらく自宅で療養していたのです。
その日の午前中、病院の先生から完治のお墨付きを貰うと、その足で買い物を済ませ、午後は行きつけの銭湯に普段より早く出かけました。
建物に入って時計を見ると3時過ぎで、番台にはいつものようにご主人。
洗い場にはすでに先客が2人いましたが、脱衣場は私1人でした。
服を脱いで裸になると、洗い場入り口の横にある旧式のアナログ体重計に乗りました。
療養中も食事はきちんと摂っていたのですが、発熱や激しい咳でカロリーを消費したせいか、体重が2kg以上も減って50kgを割り込んでいるではありませんか!
久しぶりの銭湯で気分がハイだった私は、「嬉しい、体重が落ちてる!」と思わず声を上げてしまいました。
それに呼応して、珍しくご主人の方から声をかけてきたのです。
「しばらく顔を見なかったけど、どこかに行ってた?」
気分がハイだったせいか、私は体重計から下りるとタオルで前を隠すこともなく、文字どおり素っ裸で番台の真ん前まで行きました。
これまでそんな真似をしたことはありませんでした。
「ううん、肺炎で寝込んでたの。40度の熱が出て大変だった!」
「えー、まだ若いのに肺炎だって?俺も10年くらい前に肺炎で入院したけど、年寄りだけじゃねーんだな!」
ご主人は目の前に全裸で立っている私を見詰めたまま、喋り続けています。
少し垂れ気味の乳房も、閉経以降ピンク色に変わった乳首と乳輪も、最近富みに薄くなり白いものも目立つようになったヘアとその隙間から顔を覗かせている縦筋も、ご主人には手に取るように見えているのでしょうが、イヤらしい視線は感じられませんし、表情にも特に変化はありません。
暖房の効いた狭い脱衣場とはいえ、素っ裸で番台のご主人と喋っているうちに私は寒さを感じてきました。
「オジサンもまた肺炎にならないよう気を付けてね!」と言い残すと、お風呂道具の入った籠を手に私は洗い場に入って行きました。
カランの前に据えた緑色の低い腰掛に座って、黄色いケロリンの桶に汲んだお湯でカラダを洗い流していると、以前に年輩のお客さんとの会話の中でご主人が、「女の裸を見ても、俺はもう何ともないんだよ!」と話していたのを思い出しました。
すると、ご主人の目の前に素っ裸で立っていた、さっきまでの自分の姿を想像して、思わず吹き出してしまいました。