満開になった桜が、夜空を埋め尽くす。4月の暖かな風に乗ったピンクの花びらが、ふっと視界の端を横切っていく。
今夜は絶好の花見日和でした。
近年、自粛ムードが広がっていた酒宴の席もようやく緩やかになり、私は友人に誘われて桜並木がある小さな公園に来ていた。
久しぶりのお花見ということもあってか、私の気分はハッキリ言って浮かれていた。
公園の一角にブルーシートを広げ、友人の作ってくれたお弁当をつまみながら、缶ビールをあおる。その様子を見て、友人が言った。
友「ちょっと、久美子飲み過ぎじゃない?」
久「ええ〜〜、まだ全然酔ってないよ」
友「いやいや、あんたの酒豪伝説は色々有名だよ!」
私とよく飲み歩いた彼女は私の酒豪と酒乱の両方を見ており、私の失敗やそれに巻き込まれた経験も有りお酒の怖さを良く知っている。
そう思うと、いつも危ない目に合わせてしまい、申し訳ない気持ちになる。
久「仕事の後はこれしか楽しみが無いのよ」
友「そんなに飲みたいなら、今度私の家で飲みなさいよ」
久「全然大丈夫だよ」
友「もうビールはお仕舞い、お茶にしなさい」
言われてみれば開けた缶ビールの本数はいつの間にか二桁に達している。
私は渋々、近くにあったペットボトルのお茶を手に取り、キャップを開ける。
そしてそれを胃に流し込んだ。すると友人は周囲を見渡して言った。
友「私、ちょっとトイレ行ってくるけど、荷物見てもらってていい?」
久「いいけど、まだ来たばっかりなのに、もう行きたくなったの?」
友「馬鹿ね。ここはトイレの数が少なくて、長い列ができるのよ。今のうちに行っておかないと、泣きを見ることになるのよ」
しみじみと言う友人に私は深く頷く。その言葉にはとても深い意味がこもっており、私にも経験が有ったからだ。
久「もしかして、間に合わなかった?」
友「う、うるさい。私だって失敗はあるわよ!」
久「解った、解った。じゃあ、今日は漏らさないようにね」
友「漏らしてない!」
私が友人の失敗を茶化しながら言うと友人は顔を真っ赤にして否定した。
お酒も入っていたせいかその必死さが可笑しくて、私は腹を抱えて笑い転げた。
漏らしていないのなら、何を失敗したのかと。
その時、私はほんの微かでしたが尿意を感じた。笑った事で膀胱が圧迫されたのだろうか。
しかし今すぐトイレに駆け込まなければならない状態では無かったため、友人をトイレに送り出した。
久「あいつ、全然かえってこないべ」
待てど暮らせど、トイレに行ったはずの友人は帰ってこない。
もう三十分近く経っている。
(ああ~私もおしっこ行きたくなってきた)
お酒を飲んだせいなのか、いつもとは違う速さで膀胱におしっこが溜まるのが解る。
このままでは漏らしてしまうのでは、と不安になるくらいの急激な尿意でした。
トイレに行くことも考えるが、流石にここの荷物をそのままにしてはおけない。
最悪貴重品だけでも持っていくことも考えましたが、それは最終手段だろう。
元はと言えば、お酒やジュースを馬鹿みたいに飲んだ私が悪いのです。
そのことで、友人に迷惑はかけられない。世間が自粛ムードに染まってしまってから友人と会える機会は減ってしまった。そのため少しでも楽しい時間を過ごしたい。
暫くして友人がトイレから戻ってきた。
友「ご免、ご免、遅くなった」
久「ほんと、遅いよ」
友「近場のトイレが混みすぎてて、ずっと先のコンビニまで行っちゃった」
久「え~マジで!!!」
友「って、どうしたのよ!?」
私の姿を見た友人は、素っ頓狂な声を上げます。
それもそのはずです。私はブルーシートの上で正座をし、女性の大切な部分に踵をぐりぐりと押し当てているのですから。
本当は、今すぐにでも両手で股間を鷲掴みにしたいくらいなのだが、公衆の面前でそんなはしたない真似をするのは、どうしても憚られた。
友「そんなになるくらいだったら、荷物置いて、トイレに行けば良かったのに」
久「だって居ない間に誰かに盗まれたどうするの?」
私は、半泣きになりながら言い訳をする。
友「馬鹿ね。荷物なんて盗られたって大した物ないでしょ」
いいから行くわよ、と私の手を取ってくれる友人。しかし余りに突然の行為に私は悲鳴を上げる。その衝撃で、おしっこがちょっと漏れてしまったのだ。
久「待って、待って。足が痺れてて、動けないの」
下着の中に広がる温もりを感じながら、お腹に声が響かないように静かな声で言うと、友人は呆れたと言うように天を仰いだ。
友「仕方ない。こうなったら腹を括りなさい」
友人は、真剣な眼差しで私を見つめてくる。
久「腹を括るって? 何?何?」
友「ブルーシートで隠してあげるから、ここでしちゃいなよ」
久「え!? そんなことできないよ」
私が泣き言を言うと、友人はきっと鋭い目つきになって言った。
友「言っておくけど、私はしたわよ。この場所でね」
久「やっぱり、漏らしてないってことは、そういう事だったんだ。そりゃあ、ここのトイレ 事情にも詳しいわけだね」
それで、と私は続ける。
久「一体、誰と来たの? 彼氏?旦那?」
友「今はそこじゃないでしょう。いいから、するの、しないの、どっちなの?」
久「する!するけど、せめて人気がないところでさせて!」
私が涙ながらに懇願すると、友人から冷たく突き放されました。
友「駄目よ。この時代、いつどこで盗撮されるか解らないんだから」
「さっき見てきたけどトイレの裏なんて、あんたみたいな女を狙う奴らでいっぱいよ」
その言葉で私は絶望した。勿論、友人に冷たく扱われたからではありません。
今の自分の置かれた状況が八方塞がりだからです。
友「いいから、シートの裏でやっちゃいなさい(笑)」
久「解ったから、耳塞いでてね」
友「馬鹿ね。そんなことしたら、あんたを隠すために持ち上げてるシートが落ちちゃう
でしょ。女同士なんだから我慢しなさい。私だって、恥ずかしい経験を話したんだら
これでおあいこよ」
彼女の言葉に色々と返したかったが切迫した尿意の前に、私は抵抗することを諦めた。
友人にブルーシートの端を持ち上げて貰い、目隠しを作ってもらうと私は周囲を警戒しつつ、スカートに手をかけバレないように下着を下ろす。
そして、私は友人からシート一枚隔てた場所で放尿を始めた。
シュゥゥゥーッという甲高い音と共に、おしっこがシートに叩きつけられる。あまりにその音が大きかったので、私は手近にあったタオルを手に取ると股間へあてがった。
くぐもった音を立てて、真っ白だったタオルが私のおしっこを吸って黄色に染まっていく。
近くで飲んでいたグループが騒がしく時折、男性の雄叫びが聞こえてくる。
あまりに大きな声が聞こえた時、身体が反応してビクッと震える。
(恥ずかしいよ、早く止まって・・・)
ブルーシートの上には、大きな水溜まりがみるみる出来上がっていく。
そこへ風で舞い散った桜の花びらが、ちょんと落ちる。水面をゆらゆらと流れるピンク色の花びらを見ながら、
私は限界まで我慢したおしっこを絞り出す快感に身震いをした。
(やばい。これ、気持ちいいかも)
やがて長かった放尿が終わると、私はしみじみと思った。
誰かに見られてしまうかもしれない場所でのおしっこ・・・
外でおしっこをする時はいつも何処か隠れられる場所でコソコソとしていた。
こんな大勢の人が居る場所でおしっこをする経験など滅多に無い出来事でした。
親しい男性に見せたり、トイレを覗かれる時とはまた違った羞恥の行為・・・
久「こんな場所でおしっこするなんて、私初めてだよ」
友「子供の頃にしなかったの?」
久「ええっ!逆にしてたの?」
友「今でもたまにするよ」
スッキリとした私は、下着を上げながら驚きのあまり声をあげる。
まさか友達がそんなはしたないことをするような人だとは、思ってもみなかったからです。
もしかして、彼女にも私と同じような露出癖が有るのかもしれません。
久「それは普通にドン引きだわ。友達やめようかな」
友「友達はやめても、飲み友達では居てくれるんでしょう?」
久「それはどうかな?」
そんな他愛もない事で私達は大笑いしました。
(それは置いといて、この汚れたブルーシートどうしよう・・・)