アイドルとしては失格ですが

私が１９歳の専門学校生の頃なので、今から５年ほど前の話になります。

当時私は地元密着型のアイドルグループに所属し活動していました。
クラブ活動の延長みたいなノリでアイドルとしての収入なんて無いに等しかったのですが、人前に立って注目されたいという持って生まれた願望には抗えず、土日や祝日を中心に活動をしていました。

アイドルとしての活動は、地元のお祭りやショッピングセンターでのミニライブなんかが大きな仕事くらいで、大抵は駅前や大き目な公園でのストリートライブがメインでしたね。
時には近隣のゴミ拾いや募金活動のようなボランティア的な事もしていました。
そんな超マイナーなアイドルグループでも熱心なファンはいるもので、毎回必ず顔を出してくれるファンが数人いたりして、そういう人が一人でもいる限り頑張らなきゃって気持ちでモチベーションを維持していました。

ただ、当時９人いたメンバーの中で私は一番人気が無かったです。
私はメンバーの中でも一番身体が柔らかかったもののダンスが苦手で、ちょいちょい振付を間違えたり立ち位置を間違えたりするミスが多かったし、それよりも完全モブ顔の目立たない地味な存在だったからでしょうね。

地道に活動しているうちに、やがてライブの様子を動画サイトにアップしてくれるファンも現れるようになりました。
そこで私の人気の無さを改めて実感したのが、投稿された動画に映し出されているのは人気があるメンバーが中心で、端っこでパフォしている地味顔女なんか殆ど映ってなかった事です。
グループ自体がマイナーな存在だけに動画の再生数もあまり伸びず、コメント欄を見ても人気メンバーに対しての応援レスが数件あるくらいでした。

人気の無さを自覚してたとはいえ、「底辺中の底辺」な存在である自分が今後アイドルとしてどうしていけばいいのか悩み始めたちょうどその頃、なぜか人気の無い私にフューチャーした動画がバズったのです。
なんと、それまでせいぜい1,500そこらだった再生数が５桁にまで増えたのです。
とある商店街のイベントに参加した私たちはお揃いの法被を身に纏っていたのですが、来場者の声援に両手を挙げて手を振る私の腋の下に注目が行っている動画で、コメント欄を見ると、
＜ジョリ腋最高！＞
＜ちゃんと処理しようねｗｗｗ＞
＜今度見に行ってみよっかな」＞
などのレスが寄せられ、たちまち私が注目される存在になってしまったのです。
腋の処理はしっかりしてたつもりでしたが完全に油断していました。
私は新陳代謝が激しいようで、２日前にしっかり処理してはいてもポツポツと黒い点々が腋の下のあちこちにあったのです。

ひょんな事から注目されてしまいめちゃくちゃ恥ずかしかったのですが、形はどうあれ初めて自分が注目される存在になれた事が妙に嬉しく感じてしまう複雑な心境に陥りました。
男性チーフマネージャーからは「気を付けてよ」の一言だけで私にお咎めが無かったのは、事故とは言えこれで少しはグループの知名度が上がるきっかけになるかもと期待しちゃってたからだと思います。
勿論、その後は腋の処理を怠らないようにしていましたが、私の腋動画だけが一人歩きするだけでグループ全体の知名度アップまではなかなか繋がりませんでした。
この一件以来、ファンの間から私の事を「ジョリー」と呼ぶようになりました。

少しだけバズった私の腋動画も一周してしまったようでその後の再生数は伸びず、グループ全体の知名度もさほど上がる事ないまま半年ほど経った時です。
ついに腋動画を超えそうな勢いのバズり動画がアップされたのです。

『見せパンの隙間から見えていけないものが！！』

そんなタイトルの動画の主人公も私でした。
某大学の学園祭の前座として出演した際、メンバーそれぞれ特技を披露するくだりがあるのですが、そこで私は軟体を活かしたＹ字バランスを披露したのです。
脚を振り上げて５秒ほど静止して軟体具合を披露する訳ですが、投稿された動画を見るとペチコートの隙間にスタンプが貼られていたのです。
投稿主の説明によると、ペチコートの隙間からはショーツはおろかそこからはみ出しているアンダーヘアまでが見えてしまっていたのです。

「miyabiやり過ぎやり過ぎｗｗｗ」と最後の２秒間くらいは隣にいたメンバーが私の前に立ち塞がって隠してくれたのですが、最初の３秒間くらいはずっとペチコートの奥が丸見え状態でした。
立ち塞がって隠してくれたメンバーはあくまでもお約束的な行動で、まさか見せパンが役に立っていないとはその時気づいていなかったらしいです。
高さのあるステージだったので、撮影した投稿主からは斜め下から見上げるような角度で絶好のアングルになったようです。

この動画を見たメンバーから同情や慰めの言葉をもらいましたが、逆にチーフマネージャーからはかなりのお咎めを貰う羽目になってしまったのです。
動画サイトではスタンプを貼られていたものの、投稿主のＳＮＳの裏垢ではスタンプ無しの静止画が投稿されていて、ショーツからはみ出したアンダーヘアがバッチリと写っていました。
数万人という不特定多数のネット民に晒されてしまう結果になってしまったのですが、実は私の中では大成功でした。

だって、わざと見えてしまうように自ら仕掛けたんですから。

ペチコートの裾にはゴムが入っているのでまず奥まで見える心配は無いのですが、私は自前でペチコートを購入してわざとゴムが入っている部分を切り落として裾をめちゃくちゃ緩くさせていたのです。
鏡の前に立って、見えてしまう脚の上げ方まで研究しました。
あくまでも事故を装っているので、たとえ万人の目に晒されても被害者面できるし、年齢的にも潮時かなと思ってた頃だったので、アイドルを辞めるタイミングとしても好都合でした。

当初チーフマネージャーは気付かなかったみたいですが、女性スタッフからはわざと私がペチコートに細工している事が即バレしてました。
結果的に私はグループをクビになってしまいましたが・・・
専門学校生でしたけど、そもそも私がアイドル活動をしている事すら知られていなかったし教えてもいなかったので、私がＳＮＳで晒されてる事実すら知られる事はありませんでした。

アイドルは可愛いに越した事は無いですが、地味でちょいブスな私でもエロ的要素が加われば、形はどうあれ注目される存在になれるんだと思えた出来事でした。