(続きです)車をスタートさせながらも、(最低・・・最低・・・)無理矢理さわられたときの『茶髪』の手のひらの感触・・・まだそのまま残っているかのような感覚があります。(二度と、こんなところ来ない)ミラー越しに遠ざかっていく駐車場をみつめながら、自己嫌悪でいっぱいでした。(はやく帰りたい)早く帰って、きちんとお風呂に入りなおしたい・・・嫌悪感に苛まされて、いらだちが収まりません。すべてを洗い流したい気分でした。もういちど、きちんとお風呂に入りたくて仕方ありません。国道へと向って山道を走らせながら、アクセルを踏み込みかけて・・・でも、すぐに急停止していました。寂れているとはいえ、いちおう温泉旅館が立ち並んでいる一角です。いま通り過ぎた旅館・・・たしか『日帰り入浴』の看板が出ていたような気がします。車をバックさせました。立ち寄りでの入浴が可能とあるのを見て、そのまま駐車場に入ります。車から降りて、建物の中に入りました。こじんまりした、小さな旅館です。ちょうど、家族連れの一行がチェックアウトするところでした。フロントの男性に日帰り入浴のことを尋ねます。すると、「午後は、○時からなんです」すごく申し訳なさそうに言われてしまいました。(ついてないときは、とことんついてない。。。)でも、仕方ありません。現実とは、いつもそんなものです。なんだか、がっくり疲れてしまいました。お食事処があったので昼食をとることにして、おそばを注文します。食べ終わってからも、しばらく『ぼーっ』としていました。出されたお茶をいただきながら、いろいろなことを考えます。(あんな嫌な思いまでして)こんなところまで来ておきながら、私はいったい何をやっているのでしょう。私はこんな、みじめな人間じゃないはずです。会社では、気づかないふりをしてるけど・・・遠くからいつも私を見ている男性たちが何人もいることを、私は知っています。(本当は臆病な私だけど。。。)どんなときだって、この外見の容姿だけは常に私の味方をしてくれるはずでした。(私が本気を出せば。。。)心のどこかで、そんな驕りがまだ消えません。旅館を出て、深呼吸しました。午前よりもはるかに暖かくなって、いい陽射しになっています。そう・・・私は今、こんな山の中に来ています。私のことを知る人が誰もいない、自分だけの世界にいるのです。どう考えても、このまま帰るのはしゃくでした。車に乗りこんでエンジンをかけます。『二度と行かない』そう思ったのは、ついさっきのことなのに・・・あの露天温泉へと、また車を向けている自分がいました。(今度こそ)唯一心配なのは、『茶髪』たちの存在でした。彼らがいなくなっていることを祈りながら、車を運転していきます。左に寄ってくれた自転車3台を、一気に追い越しました。駐車場が見えてきます。(あ・・・よしっ)彼らのオートバイは、もうありませんでした。他の車も見当たりません。急に、運が向いてきたような気がしました。おそらく、あの露天温泉はいま無人のはずです。すべてがリセットされたような気持ちになりました。あの先には・・・また私だけの世界が待っています。いちばん奥に車を駐めて、荷物を準備します。ちょうどそのとき・・・向こうから自転車が入ってきました。制服姿の男の子たちです。さっき私が追い抜いた3台でした。(もしかして)胸の中で、心臓がどきどきしてきます。
...省略されました。