(9つめです)
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自分の視界から肌色の突起物が消えたことで、僕は安心していた。猥褻物は間違いなくいきり立っていたが、スリットの奥に呑み込まれ、隙間なく密着した僕と彼女は、外界からイチモツの姿を完全に消すことに成功していた。
足が細いせいか、彼女のももの内側は圧迫も無く少しひんやりとしていて、挟まれてしごかれているというより、ただフワッとその空間にペニスを置かせてもらっているような、刀を鞘に収めているような感覚がある。
一方で、秘部を隠匿するために密着したせいでお互いの下腹部は広い面積で触れ合っているし、ペニスの上面に触れるシルク越しの温かさが彼女と結合している感覚を強く意識させる。
女性と向き合ってこうして腰を突き合わせている事は、それだけで十分に異常事態であり、至近距離にある彼女の顔を見るのが恥ずかしくて遠ざけようと体をのけぞらすほど、かえって下半身の密度は高まるばかりだった。胸は当然当たっていた。僕は緊張で動くことができないまま、恥ずかしさに耐えながら、しかし顔には出さないようにして、ただただ彼女と繋がっている感覚を反芻していた。それだけで十分すぎる刺激だった。
「ねぇ」
しかし彼女は決心したように、こっち、と言って再びスカートを持ち上げた。片方の手でスリットを、もう片方の手で中のショーツに手をかけ、真ん中をグイっと下げた。ショーツは全体が下げるわけではなく、前面の生地が力任せに伸びて、中から逆三角形が現れる。一瞬彼女が何をしたいのかよく分からなかったが、どうやら恥骨とショーツの間に隙間にソレを差し込むよう、僕を誘っているらしかった。
唖然とした。
これまで彼女と僕の間に必ず布があった。それは色々な意味でのセーフティネットで、それはお互いの分泌物を防ぐという生理衛生的な意味でもそうだし、布を介してさえいれば、これまでの行為はある意味で“たまたま衣類が擦れ合っていただけ”という弁解も(苦しいけど)成り立つはずだった。
でも0と1は違う。布ゼロ枚の世界は、僕と彼女のの身体が直接触れ合うことを意味する。行為がエスカレートしてもそこまで達することはないと思っていたし、さすがにためらいがあった。
「来ていいよ」
いいよと言っているものの、僕に拒否権はない。彼女は自分の手に入れかけているペニスを股間に沈め、完全に隷属させることを望んでいる。整えられた薄い陰毛が見える。布を引き払った世界に何が待っているのかという誘惑と、ひとかけらに残った理性が交錯するが、しびれを切らした彼女はペニスを握ると、一気にそこへねじ込もうとする。今日一番の強引な姿に、彼女の気持ちの強さを感じた瞬間だった。
狭い空間で曲がるように力がかかり、ペニスが悲鳴を上げる。痛さに耐えかねて腰を落とすと、先端と恥骨の高さが揃ってしまう。彼女がすかさずカリの裏にショーツの端をひっかけると、ペニスの先端は彼女に引っ張られ、茂みのあたりにセットされた。
上から恥骨、下からショーツのゴムの力に挟まれて、水平方向に押さえつけられたペニスは、亀頭が茂みのあたりに半分だけ頭を突っ込み、奥に進むのを待つばかりとなった。“腰の高さを調整した”僕に、彼女は今日初めて表情を崩して満足そうに笑うと、口角を上げただらしない顔で僕を誘った。
「おいで」
彼女がやさしく耳元で囁き、握りしめたペニスを引き寄せて動くべき方向を指示する。彼女が僕を誘い込む景色がこの上なく妖艶で、もはやその誘惑に勝つことはできなかった。全神経をペニスの先端の一点に集中してショーツの暗闇へとゆっくり圧し込む。
彼女がペニスから手を離すと、外界に晒された肌色の肉棒が、徐々にに奥へと飲み込まれ消えていく。膣に入っているのではない。ストレッチしたシルクの生地にガイドされるようにして、ショーツと秘部の間の狭い空間をペニスが押している。
僕が動き出したのを確認すると、彼女は僕の後ろに手をまわして、抱き込むように力を加えてくる。もう後戻りはできない。恥ずかしさも爆発しそうな心臓の鼓動もすべて彼女に預けることに決め、僕はゆっくりと腰を沈めていった。
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