(8つめです)
***
「でも・・・すごいよ(コレ)」
中身が硬いのが分かると、いきり立ったそれを手のひらで全体を包み込むように触りながら、僕を見る。目が笑っている。僕に拒否権がないことはこのテントの中身が示していると言わんばかりだった。先端に粘液で濡れたシミを頂いた赤い化繊の生地は、鈍いテカりを伴って内包物の状態を告げているので、誰の目にも卑猥な事態が起きているのは明らかだった。
先程まで彼女の温かい場所に埋もれて育てられたソレは、いまは彼女と僕の身体から離れて、二人の間で、どちらに属するでもなく、白日の下に晒されていた。先刻までそれを匿っていたスカート生地が、今度は背景になって真っ赤なテントの存在をかえって際立たせている。
彼女はしっかりとした握力で感触を確かめてはいるが手元を見ることなく、じっと僕を見ている。途方もなく恥ずかしい。そして、沈黙を合意と受け取ったのか、彼女はテントの一端を器用に手繰り寄せると、するするとパンツの中に入ってきた。ついに彼女は僕の本体を捉えた。
「いい?」「ダメです…」「(しーっ)」
周りに気付かれたくないのは僕も同じだったので、牽制されると黙る他なかい。彼女は落ち着き払った顔を作りながら、手元では反対に僕の本体を捕えて情熱的にまさぐり始めた。手のひらでペニスを包み込み、スキャンするように、根元から先端まで、長さ、硬さを確かめると、五本の指で絡みつき、筋の張り方、カリの形やひっかかりの深さ、浮き出した血管の凸凹といった隅々まで調べ上げている。それは、自分がここまで大きくしたペニスを愛おしんでいるようだった。
自慰する時の自分の左手の粗雑さと比べると、彼女の手つきは有機的で温かく、求めていたものに到達した喜びを噛みしめているのが伝わってくる。自分よりも彼女の方がこのペニスに大きな愛を持っているのかと思うと、もうこのペニスが彼女のモノになっているとさえ感じられ、まさに彼女の手に落ちている、と僕は悟った。
「(秘密にするから、ね)」「(はい)」
僕が抵抗しないのを見ると、彼女は陰茎を引っ張り出した。パンツのゴムが先端を超えて裏筋側にめくれて、本体が完全に露出する。覆いかぶさった彼女の手だけが辛うじて目隠しになってはいるが、指の隙間からもれ伝わる空気が、このわいせつ物が外界に出たことを伝えている。もうペニスを隠すものはない。
彼女が体のラインをぴったりとつけることで手元を隠してくれているが、ほんの少しでも体の角度を逸らせば、この変態的な景色が露見するだろう。首根っこをつかむという言葉があるけれど、あれは本当は首じゃなくて体の根っこの事じゃないかと思う。公の空間に晒されたペニスを根元から掴まれ、もう動くことも声を出すこともできない。彼女は文字通り僕をどうすることもできる。
こんな所を誰かに見られたくないという一心で僕の頭はいっぱいになった。もちろん、自分のズボンに戻せばいいのは分かっているけれど、大きく張り出したソレを折りたたんで中に入れるのは手間取りそうだし、そもそも、彼女に握られたソレはもう自分の所有物ではなく、自分の裁量の及ばない世界へ行ってしまっている。恥ずかしくてはずかしくて、ともかく早くどこかに仕舞い込みたいのに、自分ではどうすることもできない。猛烈な恥ずかしさで頭が沸騰していた。
そんな僕の気持ちを見透かしてか、彼女はスカートを腰から回してスリットを正面に持ってくると、スリットの頂点をすくいあげた。そのアイデアの大胆さとスムーズさに驚きつつも、すかさずスカートの裏にペニスを避難させる。僕にとってはどこに格納するかよりも、1秒でも早く肌色の肉棒を外の世界から隠すことの方が大事だった。
彼女の示した避難路を進むと、ペニスの先端がショーツの表面を撫でながら、すーっとなめらかにすべって奥に導かれる。体の出っ張った部分が、完璧な高さに設置された窪みに隠れると、面の揃ったテトリスのように、僕と彼女は密着した。ああ、このままさっきみたいに布越しに押し付け合おうという事なのかなと思った。でも、彼女の意図は少し違うらしかった。
***
※元投稿はこちら >>