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そこからは延長戦のようなもので、彼女が想いのままに股間を愛でるのに対し、僕は体を張って彼女の体重を支え、彼女が集中できるよう周囲の状況を監視した。幸い、他の乗客がこちらに意識を向けることはなく、車端部の袋小路は二人だけの世界となった。線路から絶え間なく提供される騒々しいノイズは、僕たちをキャビンから遮る通奏低音となってかえって心地よく、レールのつなぎ目で生じる振動は、ともすれば固着しそうな僕たちの連結部に適度な上下動の刺激をもたらす。
周囲に悟られないこと、できる限り動かないことを暗黙のうちに是としていた僕たちは、ただ静かに向かい合って微動だにせず、遠く窓の外を見つめては何物にも無関心で無機質な通勤客の風を装いながら、しかしその水面下では腰をぴたりと密着させて、互いの異物を融け合わせて同化する作業に没頭した。時々大きく呼吸をして血流を巡らせると、ペニスの息づかいを感じた膣口はうねうねと起伏を埋めるように動いて、確実に僕の形を捉えてくる。下の唇がそんなにも雄弁な時でさえ、平静を装った表情は一切崩れることがないのだから、大人(の女性)って怖い。
窓の外の視界が開け、列車が新都心のエリアに差し掛かかると、もう次の駅は近い。ラストスパートなのか、彼女の意識は次第に、内壁のもっと内側、膣の奥の方へと向かっているようだった。時折足を広げたり腰浮かせたりして、ペニスの先端をひだの内側に巻き込もうと模索しており、彼女が縫い目を貫きたいのが、ありありとわかる。突き立てる、と言うには当たり方が浅く、門前払いされて勢いの余ったそれはひだをえぐるようにして入口の前を右往左往する。この体勢では挿入が叶わない事は童貞でもなんとなく分かるし、そんな事は彼女も承知しているはずなのに、自分の望むものを刷り込むように、彼女が執拗にその動きを繰り返すので、否が応でも割れ目の奥の世界を連想させられてしまう。
縫い目の湿度は十分に高く、奥に続く道に障害がないことは疑いがない。僕のペニスはと言えば、特段立派なものではなかったが、あえて例えるなら、先端に向かうにつれて細くなっていく、根本の太いアスパラガスのような容貌をしていて、過度な装飾がない代わりに先端部は小回りが利くはずだ。いざ送り込めば…というか、なんというか、ほんの角度さえ合えば、彼女にするっと侵入できそうな錯覚を抱かせる。一瞬、自分の肉棒が彼女のぬかるんだ襞を道なりに滑って”もっと熱いところ”に到達している姿が脳裏をよぎる。想像の中の彼女は、待ちわびたものを受け入れて苦悶の表情を浮かべている。
きっと彼女もいま、そう遠くない光景を想像して希求しているのかと思うと、性的な承認欲求は最高潮に高まった。下半身から伝わる感覚、頭の中にあるまだ見ぬ女の肉感、想像を現実にしようとする彼女の所作と視線。現実と非現実が入り乱れてもっとも都合の良いストーリーを合成し、脳を痺れさせていく。情報の氾濫にもうこれ以上太刀打ちできるとは思えず、限界であることを首を振って、目で彼女に訴えかけた。
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