楽しみにしてくれているのでしょうか? ありがとうございます。頑張ります。
これで11個目です。
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こんどは彼女が前から後ろに戻るようにゆっくりと腰を動かし始める。カリが何かに引っかかると彼女から吐息が漏れた。そこが好きなのか、左右に腰を揺すったりしながら彼女は執拗にそこを押し付ける。やはり僕たちは数ミリずつしか動けなかったが、お互いの小さな起伏を感じ取るにはかえって好都合で、僕にとってはモザイクの向こうの世界が解像度をもって立ち現れてくるような感覚がした。
重なる場所が少しずつズレるたびに、新しい所から愛液が溢れて、周辺の摩擦が小さくなっていく。二つのの液が混じりあって粘り気のある潤滑油となり、性器のまわりをねちゃねちゃにする。彼女が数往復もする頃にはペニスの表面は乾きを失って、陰唇とショーツの間はすっかり湿ったもので満たされていた。もう皮膚をこすり合わせる恐怖はなく、入れ替わるようにして彼女との間にある人としての境界のようなものが消失していった。呼応するように、彼女は腰のストロークを大きくし始めた。
彼女が体を近づけるとき、どわっと圧倒的な何かが僕を覆いつくしていくような感覚があり、呑み込まれてしまたいと思ってしまう自分がいる。自分でない何かが浸食してきて表面を覆い、融着して、ひとつになると言ったらいいだろうか。搾り取られるという一般的なイメージとは違って、彼女が僕に重なると触れ合ったそのポイントが熱くなって、彼女のエネルギーがペニスを通じて体内に入ってくる。彼女に何かを抜き取られるのではなく、彼女から流れ込み、しみ込んで何かを与えられているような気分にさせられる。こんな感覚は初めてだった。
反対に、彼女の腰が離れペニスの根元が冷たい外気に触れると、僕と彼女の間に何か空疎な筒が出現したような感覚に陥いる。陰茎の先端は彼女の一部となって自分ではない何かに変質し始めているのに、自分だけはそこから切り離されてしまったような、猛烈な喪失感に襲われるのだ。
だから彼女が腰を引きすぎて外れてしまった時には、心にぽっかりと穴が開いたような気分になって、どうしたらよいかわからず落ち着かなかった。それを見透かした彼女は、肉棒を握るとわざと外で待機させ、勿体ぶってから熱々のショーツの所へ戻すことで、ペニスが帰るべきハウスはどこなのか示してみせた。所在なく胸が騒いでどうしようもなくなったら、奥へ戻って融合すれば心の穴を埋め戻せるのよ、と教育しているようだった。ナイーブな僕は、彼女の元に戻りたくなる引力に説明を得たような気がして、抗うことをやめて彼女の”救済行為”を心から受け入れるようになった。
彼女に触れたことで、僕の中の何かが変わってしまっていた。犯されているという一方的で受け身な意識は消え、ただ彼女の核心に近づいて、ひとつになりたいと願うようになっていた。そして、なぜ僕なのか、何をしてほしいと望んでいるのか、その情熱に迫りたいという気持ちが強くなっていった。
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