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下着越しにふれあっていた時のシルキーさとはまるで違う何か生々しい感触がする。最初は、肌と肌がこすれて痛いかもしれないと思ったが、薄い陰毛は湿り気でぺったりとしていて抵抗がなく、彼女に歓迎されているのだと知る。伸びたショーツの生地が、ゴムの復元力で強力にサポートするので、陰茎は勃起のチカラ以上に押し上げられて陰唇にタイトに密着するし、陰唇は圧を受けるとぬるっとめり込んでソレを受け入れ、まとわりつく。
乱暴にこすり合わせるのが怖かったし、変に腰を振ることもできなかったので、満員電車の中で許される限られた可動域を使って、ほんの少しだけ感部に体重をかけてみる。すると、面に沿った陰部の重なりが少しだけ増えて、彼女との距離が半歩の半歩だけ縮まる。電車が揺れる度にペニスが外れそうになるが、ショーツがハンモックのようにキャッチして、無理やり彼女へと引き戻し、元の鞘に収める。動きが無ければ性器と性器は自然と密着した。
ショーツはぴったりとペニスに寄り添っていて、ペニスが少しでも道を外れようとすれば、それを引っかけて生地とゴムの復元力でグイグイと押し返してくる。よくできているな、これはもう逃げられないなと、トラップにかかった小動物のように妙に関心する。他方で、ふとした動きで密着から解かれた性器たちが、次の瞬間にその重なりの幅を数ミリ増していることに気が付くと、彼女が近づいて来てくれていることが分かってなんだか嬉しく、心が高ぶってしまう自分がいた。
あくまでも電車の揺れをアリバイにしながら、僕たちはじりじりと歩み寄っていった。ほとんどの時間静止しているため、たった十数センチの距離が、気の遠くなるような長さに感じられる。周囲から見えないとはいえ、陰部を露出している。僕も、そしてスカートの中を晒している彼女もきっと、一気に詰め寄りたいに違いなかったが、不自然な動きの一切を許さない満員電車特有の緊張感を感じて、自制しなければという心の声をお互いに反駁していた。ひと揺れごと、ゆっくり、しかし確実に…ミリの動きを感じながら、周囲を欺いていこうという暗黙の了解を交わすなかで、共犯関係のようなものが出来ていった。
お互いの足を踏んでしまったりしながら一番奥まで進みきると、ついに僕と彼女の下腹部がぶつかった。自然を装って動いたはずなのに、いつの間にか二人とも背中を弓なりに張ってのけ反るような姿勢になっていて、太ももの前から股間のあたりが密着している。少し動くと互いの陰毛が交わって擦れて、ジャリっと音を立てたような気がした。
(「そのまま」)
僕たちはちょうど”人”の字のように、互いの腰を突き出して支え合っており、交錯する陰部に圧がかかる。ペニスが熱い。隔てるものがなくなって、じかに熱が伝わってくる。衣類という薄皮一枚の有り無しでこんなにも違う。面で囲まれているから温かいのではなく、彼女と触れ合っている表面の突起の一つひとつが熱を持っており、触れる度にその熱源の存在を主張する。僕が感じるように、彼女もきっと、僕の熱を感じているに違いなく、これが生身の男女のふれ合いなのかと思うと鮮烈で、それだけで卒倒しそうだった。
かばんや衣服で隠したその下で、僕たちは生身の身体を重ねて連結している。熱く湿ったものを共有する二人だけの空間があって、涼しい顔、澄ました顔で平静を装いながら、その根元で誰にも言えないような秘密を共有しているのだ。彼女は、自分がついに手に入れたモノが間違いなくそこにあること噛みしめるようにそっと内股を閉じると、熱いものを抱えたまま、じっと動かなくなった。
恥ずかしい部分が隠れて安心したところで、改めて彼女の顔を見た。アラサーくらいかと思っていたが、よく見るともう少し年上、30代半ばのようにも見える。目立ったシワやシミがあるわけでもないのに、10代の目から見ると、大人の女性特有の忍び寄るの影のようなものが感じられ、僕はそれに気が付いて一瞬自分が萎えたのだろうと思った。そんな年上の女性を異性として意識したことが無かったからだ。
しかし、ひとたび意識のスイッチが入ると、この妙齢の女性の色っぽい点ばかりが目について、頭を離れなくなった。彼女は背も高く、落ち着いて清潔感があり、見た目もキレイだし、きっとオトコの事もよく知っているだろう。何より、そんな酸いも甘いも一通り楽しんで性を完成させたであろう大人の女性が、今ここで僕の未熟なペニスに夢中になっている。
昨日まで、30代なんてトウの立った、性的には終わった存在だとステレオタイプに思い込んでいた。それが目の前で春を謳歌する彼女を見て僕の認識は一変した。むしろ童貞のくせに何を根拠に若い女子信仰を信じていたのだろうか。
僕でいいんですか?なぜ僕なんですか?彼女にそう聞いてみたくて、たまらなかった。これから僕の体を使って何をするのか、僕をどこへ連れて行こうとしているのか、それを知るためにならこの体を捧げられると思った。
じっと閉じていた目を開いた彼女と視線が重なって、ペニスは一段と硬くなった。
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