3つめです。
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「すみません」
なぜ僕が謝らなければならないのか。しかし僕は彼女の耳もとで、彼女にしか届かないようなかすかな声で謝罪の言葉を告げた。こんなに硬くなってしまって恥ずかしかった。トンネルの轟音が僕らの会話をかき消す手助けをする。
「…うん、いいよ、大丈夫」
彼女は周りに悟られることのないよう、少し振り向いて静かにうなづいた。僕の謝罪の言葉を聞いて安心したのか、彼女はどちらともとれるあいまいな態度を捨てる決心がついたようだった。右手を後ろに回すと、カーディガンを引っ張ってめくりあげてくる。意志が感じられた。
カーディガンを取り去ったことで、布が収縮する抵抗がなくなる。ふわっとしたひだのついたAラインのスカートは、押しても押しても突っ張ることなく、連続的に供給される繊維が僕の突起部分を包み込む。そして、それを飲み込むように、お尻の割れ目からその奥へと僕を導いた。
彼女は膨らみを確認するようにゆっくりと、しかし今度はハッキリと腰を動かし始めた。彼女が腰を左右に振れば、僕のペニスはお尻の山頂と谷底を往復した。彼女はズボンの中の膨らみを山の部分で押しつぶし、その形状を事細かに調べる。それが終わると圧迫から開放してシルクのように柔らかな山肌に滑らせて麓で受け止め、今しがた調べ上げたオブジェクトが確かにその形状の通りであることを、谷間の奥に格納して確認した。
圧迫と解放のサイクルを繰り返すたび、張り裂けそうな心臓から下半身に向かって血液が駆け巡り、股間部に供給されていくのが自分でもわかる。血液を得てより大きく硬くなったソレがお尻の谷底まで落ちてくると、テントの張り出しはますます大きくなって尻肉の内側をかき分け、彼女の奥へと自身を穿ち込んだ。
「すごいね」
口パクのような小さな声で嬉しさを表明すると、自身のデリケートゾーンでみるみる成長するテントを愛おしむように、彼女の動きは立体的になった。さっきまでお尻の隅でちょんちょんと突いていただけのペニスは急速に大きくなり、飲み込んだ彼女の奥の空間を充填する。こちらが大きくなるほどに、それを受け入れる彼女の接触面積も大きくなるので、質の違う柔らかさが僕を襲う。
さっきまで剛体と軟体という異物として点で接していた僕と彼女は、その数を増して面で接するようになると善き隣人として会話を始める。ひとつの細胞が柔らかさの信号を発すれば、器官全体が呼応した刺激の束となって脳に押し寄せ、情報の洪水を引き起こした。
スカート越しに伝わる彼女の柔らかさは想像を絶するもので、これまでの人生で体感したどんなものよりも柔らかかった。布を介しているとは言え、もうそれはほとんどお尻の柔らかさそのものと言ってよく、童貞の僕にとっては膣の内壁=セックスさえも想起させるもので、かすかに残っていた抵抗の意思は、彼女が面をこすり合わせるごとに奪い去られていった。
彼女は僕が十分大きくなったのを確認すると、腰でゆっくりスカートをよじりながら布を引き込んでお尻の奥に僕を受け入れ、大きく動かさずに、ただじっと当てがって愛で始めた。すると今度は生地越しに彼女の体温が伝わってくる。冷房で冷えていたはずの生地の表面が熱を帯びて、先端から彼女の温かさが滲んでくる。
反対にお尻が接している腰骨や下腹部のあたりには柔らかな脂身の冷たさがあり、彼女が当て方を少し変えるだけで、新たに圧を受けたエリアに冷たい感触が発生しては、じわりと熱が奪われてなじんでいくので、自分も熱を帯びた存在として彼女を温めていたことに気付かされる。
大きく動けないことがかえって局部への集中力を高める。彼女は自分の細部を余すことなく愛するように、丁寧に、均等に、一つずつ僕を当てがって温めていく。1分、2分と経つうちに陰部全体に熱が拡がって、彼女と僕の境界は混じりあって曖昧になっていき、そのうち僕たちは同じ温度になった。
根元から先端まで彼女に飲み込まれている一体感は、僕が僕自身であることを忘れるのに十分で、下腹部から頭に流れ込んできた温かさで頭がボーっとなる。この何か特別なもので包まれた結合部は、柔らかいのに、固く結びついており、もう彼女の一部として機能しているとさえ思えてくる。
彼女の奥に吸い込まれてからというもの、ちょっとやそっと腰を左右に動かしたところで、深く突き刺さったこの結合が外れることはない。電車が揺れて彼女が右によろめけば僕も一体となって右に動くし、電車の揺れは狭い車内で角度を変えるきっかけを与え、むしろ僕らの結びつきを強くした。
もはや彼女の密着具合は乗車率の言い訳では説明できないほどに高まっていたが、気が付くと彼女の求めに応じるように、腰を踏ん張り彼女を支えながら、奥に強くペニスを押し返している自分がいた。共犯関係が成り立っているのが分かると、彼女はますますその圧を高めて尻を圧縮し、前へ後ろへと僕を貫かせては、自分の望む場所へと僕を押し当て続けた。
最後の抵抗として、試しに一度だけ少し離れるように体を引いてみたけれど、彼女の熱に包まれていない喪失感に襲われて、すぐに彼女へと引き寄せられてしまう。彼女も同じことを感じたのか、密着して繋がっているのが定常なのだと言わんばかりに、ますます隙間を許さなくなり、それ以降、二度と僕を放さなかった。
A駅に着くころにはもう言い訳できないくらい大きくなっていた。彼女から逃れることはついにできなかった。
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