「土曜日」
目覚めると一人で夫は何処へ出掛けたのかいませんでした
休みの筈なのにと思いながら買い置きのパンを食べて薬を飲みました
まだ下腹は重い感じがしましたが痛みは無く楽になっていました
暫くすると主任からメールが届いて
夫が事務室に怒鳴り込んできたと書かれていて驚きました
スーパーへ行く前に病院へ行ったらしく
膀胱炎と貧血と過労だと聞かされて怒鳴り込んだようです
パートにそんな重労働と厳しい環境を強いているのか…と
この数日、寝室では無く居間のソファに崩れるように寝ている…と
私は結局、夫にもまた愛され守られていたのだと思いました
夫はこの日、夜遅くに少し酔って帰宅するとソファに倒れてしまいました
直ぐに毛布を取ってきて掛け、暫く側に座っていましたが
夫を見詰めながらもシクッとする下腹の痛みに
やはり今は彼だけと背徳や裏切りという思いよりも強く彼の事を思い
静かに離れて寝室で眠りました
「日曜日」
夫も私も特に変わりはありませんでした
薬のお陰で身体も楽になりスーパーに買い物にも行きましたが
皆の様子も変わりなく倒れた事を心配してくれていました
(皆で抗議しといたからね、倒れる前、主任は美由紀さんばかり…)
驚きましたが夫が怒鳴り込んだ事で皆も彼に詰め寄ったそうです
皆から見ると彼に私が虐められているように感じていたようです
(あ、ありがとう、でも平気よ、ちょっと疲れちゃっただけだし)
何だか少し可笑しくて笑いながら事務室に寄ると彼がいて
「どうしたの?」
訊かれたので大体のところを話すと苦笑いしていました
(ありがとう、ほんとに全部負わせてしまって…)
軽くキスをしながら抱き合い帰宅しました
『なんだ、言えば買い物くらい行ったのに…』
帰ると草むしりをしていて気付かなかった夫が少し怒っていました
その姿が何だか可笑しくて笑うと
『な、何だ、笑うな、ほら、片付けるからよこせ』
(平気よ、もう痛くも無いし歩いて行けるんだから)
荷物を取ろうとする夫を制止して片付けて飲み物を用意して
(大体、何を何処に片付けるかなんて知らないでしょ)
『そんなの、見れば分かる…、ほら、桜が咲き始めた』
(ああ、ほんとだね)
ふと、窓の外の団地の周りの桜が咲き始めていたのも
こうして夫と話したのも何時以来なのか気付かなかった事を
気付いた事で自分が可笑しくなって笑い始めていました
一時は、やり手の有望株、大きな契約を失敗して窓際へ
それにも耐えてやっと最近中間部署に戻されて
文句も小言も愚痴も言わずに二十数年の結婚生活
気付けばそんな会社にもう三十数年勤めている夫
感心し切りで夫を見ていると
『あ、あのな、浮気か本気か知らんがな』
(えッ?、何言ってんの?)
『良いから聞け、相手はアイツだろ…ま、まあ良い』
『別れてはやらんし身なんか引かんからな』
『どうせ若くて直ぐに結婚もするだろうし、お前は歳も取るし』
『俺はお前がここに戻れば良いし、元気でいてくれれば良いし』
『セックスはどうせもう役に立たんし、満足させられんし』
『ただな、、ただ、お前はここに帰って来い』
『良いか、必ずここへ帰って来い』
(貴方)
『忘れるな、俺達は夫婦で、離婚しないし、一緒に墓に入るんだ』
『良いな、忘れるな』
(どうしてそんな事…そんな事言うのよ)
『うるさい、お前は俺の妻だ、中身が別の男で一杯でも俺の妻だ』
『これで終わりだ、ゆっくり休め、また彼となんだ、その…無茶するな』
(は、はい…あなた、愛してる、ありがとう…)
『うるさい、もうちょっと草刈りしてくる』
そう言うと軍手とタオルを持ち行こうとするのを止めて
強く抱き付いてキスをしました
「その後」
今週一杯、お休みです
彼も丁度治すのに良いと笑っていました
来週から、もう少し考えて大人らしい行為をしようと
二人でメールで話しています
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