息子は中学の間にもう一度さきちゃんに大きな恩を受けています。
二学期に入り高校受験のための模試が何度もありました。
息子はさきちゃんとの事はまるで気にした様子もなく、以前の通りに周りの人には自信に溢れて格好良く振る舞っていましたが、9月にあった模試で自分で信じられない悪い点を取ってしまいました。
元々数学等理系が得意だったのですが、社会や国語の暗記科目が出来なかったと言っていました。
記憶力も悪くない筈ですし、現にこれまではちゃんと出来ていたのですから、たまたま調子が悪かっただけ、と義父義母も友達達もそう慰めました。
それがどうしたことか10月の中間テストでも暗記科目の成績が悪かったのです。
それで息子はノイローゼ気味になりました。
それまで落ち込んだ経験が無いだけにすっかり自信を無くしてしまい、それが生活態度にも現れてしまいました。
家では私だけでなく義父義母にも乱暴な言葉を使うし、学校でも荒れていると聞きました。
する必要も無い喧嘩をしたこともあり、その時は先生がまだ息子に好意的だったために大事に至りませんでした。
当然取り巻きだった女の子達も息子の側に寄らなくなったようでした。
それなのに学校ではさきちゃんだけが生真面目に、会長、会長、と呼んで息子を立ててくれているようでした。
そんな息子が劇的に変わったのがもう11月になった時です。
土曜日の午後に帰ってくるなり、
お母さん、ごめんなさい。
僕がみんなに迷惑掛けてた。
と言い出しました。
まさか変な気でも起こしたのでは、と心配したけどそんな様子は無く、それからは人が変わったみたいに真面目に勉強してくれました。
この時も何の根拠もありませんでしたが私は、
もしかしたらさきちゃんが..
と思いました。
毎週のように家に来ていたさきちゃんがしばらく来ていない。
息子にさきちゃんは?と聞いたら困ったような顔をして何も言わない。
私は遂にさきちゃんの家の近くでさきちゃんが帰ってくるのを待ち伏せしました。
さきちゃんは私の姿を見ると路上で立ちすくみました。
前の時の様に顔を伏せはしなかったけど、すごく動揺している顔でした。
そして私が何も言わない前から、ごめんなさい!と謝るんです。
周りには人はいなかったけど路上ですから色々は話せませんでした。
私が、したの?と聞くと、はい、と答えました。
好きなの?と聞くと、困ったような顔をして
恋人とかならなくて良いですから...
と言うともう一度、ごめんなさい、と言って走って行ってしまいました。
その時はさきちゃんにも息子にも詳しくは聞けませんでした。
でもそれから息子が少しは真面目に勉強にも取り組み、それに伴ってまた成績も上がり周囲の目も元の通りになりました。
なんとしてもさきちゃんに恩返しをしなくては、と思いました。
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