大変な寒さと雪です。
交通事情の為に、今日予定していた用事が出来なくなり、また家に戻りました。
私が受けた寒さ責めについて、前に少し書いたことがあります。
でも所詮舞台で行われるショーの中であって、本当に寒さで死にそうなものではありませんでした。
氷水に浸けられた時間も短く、ちゃんと身体を拭くタオルも温かいストーブも楽屋に用意されていました。
しかし、世の中には寒さで凍え死ぬかもしれないような責めをされていた人がいる話を母から聞いた事があります。
昭和の20年代の前半、世間全体がまだ戦後の混乱と貧しさの中にあるころ、母がその家に女中のとして短い間働いた時に実際に見た事だそうです。
その家は家族が四人と住み込みの女中さん一人の五人が住んでいて、女中さんが病気になったから、治るまでの間だけ女中として働らかないかと話があり、当時は食べるためにどんな仕事でもありがたいと思ってその日から仕事に出たそうです。
しかし四人は家族ではなく、女の人は皆全裸で鍵つきの足枷の鎖で繋がれていて、ただ男の人から責められるために住んでいました。
冬でしたが家の中の火の気は男の人のいる座敷の火鉢と母が煮炊きする台所のかまどしかなく、しかも昔風の古い大きな家だったから、重ね着をして火を炊いていても寒かったそうです。
そんな家の土間にむしろを敷いた上に三人の女の人は繋がれており、寒さに耐えるためにいつもお互いに抱き合っていたそうです。
まだ食糧難で白米のご飯を食べるのは贅沢だったのに、その家では三度とも白米を炊き、それを男の人が存分に食べた後に母も好きなだけ食べさせてもらえたそうです。
しかし三人の女の人の食事は男の人と母の食べ残した僅かな残りであり、三人に見られながらの食事では食べた気持ちにならなかったと言っていました。
三人は普段は男の人から命令されない限りは喋らず、母も話をしたことがなかったそうです。
一度だけ中の一人が「お許しください」と一言喋ったことで、三人とも全身に赤く痕がつき気絶するほど激しく鞭で叩かれ、その肌に塩を塗られたそうです。
その三人が大晦日の夜に家から外に放り出されました。
小雪が舞い風が激しい夜だったそうです。
たとえ僅かな温もりでもある家の中から、寒風の吹き雪が舞う外に出されて、三人は喋る許しもないのに「お願いです。入れてください。」「凍えてしまいます。」 「お助けください。助けて。」と泣き叫び、それに対して男の人は無情にも母にバケツに水を汲ませ、それを三人に掛かるように何度も撒いたそうです。
最後はガクガク震えながら抱き合って庭の土の上に座り込んだ三人に男の人は「一人選べ、あとの二人は許してやる」「一人は一晩木に吊るす」と恐ろしいことを言いました。
一晩吊るされたら多分死にます。
誰も名乗り出なかったら、業を煮やして男の人は「お前や」と言って一番背の低い小柄な女の人を引っ張りだしました。
それから母に「縄と滑車あるとこ分かるかい」と聞きましたが、母はあまりの恐ろしさに声も出なかったそうです。
すると男の人はむしろ上機嫌な声で「分からんやろうな、良いで、わしが出す」と言うと滑車と縄を持ち出し、引き出された女の人を縛り上げると、今度はその縄尻と滑車を持ってするすると家の前の大きな木に登リ、枝に滑車を取り付け縄を掛けました。
木から降りるとあとの二人に、「何をしとるんや、引き上げんかい」と命令し、二人に縄を引かせて縛られている女の人を吊り上げたそうです。
人の身体は重たいものです。
私も吊られたことはありますが、殆んどは電気で動く滑車で吊られました。
人力で吊り上げるのも見たことがありますが、大の男が三人かかりでした。
それを女の人二人で引き上げさせるのは無理だと思いましたが、母の話では二人とも死にもの狂いになって縄を引いたそうです。
友達を吊るすため、吊られたために友達が凍えて死ぬかもしれないのに、逆らいもせずに働くなんて私には考えられません。
しかし母はそのように話してくれました。
吊るされた女の人は、軒の高さより高い位置まで吊られていて、風に身体がブラブラと揺れていたそうです。
男の人は縄をくくりつけて固定し、二人の女の人に「ようやった、入って良いで」と言うと先に家の中に入りました。
二人の女の人が家に入る前に吊るされた女が小さな声で「さよなら」と言うと二人はコクンと頷いたそうです。
もう死ぬ覚悟が出来ていたのかもしれないと思ったと母は話していました。
家に入ったら男の人は上機嫌になって酒を飲み、二人の女の人を四つん這いにして犯し、その後に二人にも少しお酒を飲ませるように母に言いつけて寝たそうです。
母は恐い男の人が寝てる内に助けた方が良いのではと考えて二人に話したところ、「やめて」「仕方ないの」と泣きながら言われました。
それでは警察とか他の人に助けを求めたらと言うと、また泣きながら「家族が…」「私たちはもう死んでるんだから…」と複雑な事情を話してくれたそうです。
しかし母はやはり他の人に助けを求めて来ようと考えていた時に、外から「なんだ?」「人か?」と何人もの男の人の声がして、しばらくして女の人の悲鳴のような声で「ほおって置いてください」「早く行って」と聞こえました。
母が外を伺うと消防団の夜回りの人達が吊るされた女の人に気付いたようでした。
二人が寝室の男の人に教えたところ、「ああ、面倒やな」と言って外に出ていき、しばらくして母に「酒を二本出してくれ」と言うと、その酒を消防団の人に渡し、すでに下ろされていた吊るされていた女の人に「今日は仕方ない、入りな」と言って中に入れました。
家の中では、あとの二人が吊るされた女の人を前後から抱き抱えるようにして温めてあげ、母が男の人に「あの人にも少しお酒をあげても良いでしょうか」と聞くと、「あいつ、命拾いしたな。まあ良いわ、飲ませてやり」と言ったそうです。
すみません、母の話だけでなく途中で私の推測とかも入ってしまってると思います。長くなって申し訳ありません。
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