そんな風な生活を送っていたその夏に健さんに出会ったのでした。その日、母の姉が家を訪ねてきました。叔母は珍しく乗用車で乗り付けて来て、運転手はお兄さんというより若いおじさんで、その人が健さんでした。「健さんが免許取ったんで乗せてきてもらったのよ」そんなことを言っていました。早速家に上がってもらうわけですが、健さんは「いや、自分は…ここで」とぼそぼそ言って車に残るのでした。応接室に入ると「健さん、あまり人付き合いが得意でないからね」などと言っています。叔母は三十歳で再婚し相手はなんと六十近い大工の棟梁でした。その人の息子が健さんで、叔母の義理の息子になります。母と叔母が話している間、私はなんとなく健さんが気になって、母に「ちょっと自動車に乗せてもらっちゃう」と断り外に出ました。昔のエアコンなんか無い車ですから窓は全開です、座っている健さんに外から「乗せてぇ」と甘えた声で言うと、ちょっと驚いた風に見えましたが「ああ、」と言ってわざわざ外に出て助手席のドアを開けてくれたのでした。二人で並んで座り「カッコいい」とか「どのくらいのスピード出るの」とかもっぱら私が他愛ないことを話しかけます。健さんはぼそぼそとぶっきらぼうに答えます。実は健さんは名前に健が付きますが、あの国民的大スターとは別の名前です。しかしイメージ的にちょっと似ていなくもないと(欲目)(笑)。皆さんはあの健さんを思い浮かべてください(笑)
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