数日後、学部長の車を見かけた。運転手を探した。学長と副学長の運転手は職員がやってて、車は大学のもの。学部長の運転手は 人材派遣会社からの派遣。車は大学のリースで、(月)~(金)は基本的に大学が費用を払って、それ以外の時間や夜間は どうなっているかは知らない。以前、学部長が「派遣の運転手やから、人が入れ替わるし、いろいろ難儀やわ」と言っていたのを思い出した。
運転の技術よりも 人柄やマナーなんかを言っているように聞こえた。
運転手は学食にいた。私は彼に「ここ、エエかな!?」と声を掛けた。運転手は「どーぞ」と答えた。
運転手の向かい側に座ってカレーライスを食べながら話し掛けた。
私「この前は どーも 」
運転手「?」
私「この前、学部長の新年会で。」
運転手「あー、そうでしたか」
運転手は 加藤という名前で 歳は32歳。年よりは若く見える。ヨレヨレのスーツを着て、覇気の無い感じの中肉中背。
私「仕事は、きつい?」
加藤「いいえ、でも、だるいッス。待ち時間が多くて…今日もあと二時間待ちッスよ」
私「この仕事ながいの!?」
加藤によると、大学を出て2年間サラリーマンをしていたが、上司とケンカをして辞めたそうだ。それから派遣会社に登録をして、配送センターなどで働いていたが、運転手になってから三年目。独身。
学部長についてからは
一年半だそうだ。話をしていて、この男の掴み所の無い感じが伝わってきた。単調なしゃべり方、目には力がなく、人間的魅力に乏しい感じがした。
私「学部長はよくあの二次会の店を使うの!?」
加藤「たまに行きますね。送って行くだけですけど」
私「料亭から、あの店まで結構時間掛かったよね!?」
加藤「ゆっくり幹線道路を安全に行けって指示やったから。幹線道路は混むからね。普通に行けばもっと早いのに。」
私「だろうなぁ。俺たちの方が早く着いたもんなぁ」
加藤「まあ、あの人にも意図があったんちゃいます!?」
私「意図って?」
加藤「僕らには守秘義務ってあるんスよ。電話の内容とか他の人にしゃべったらアカンとかね。」
私「そうなんや。」
私は彼の何とか加藤から車の中のことを聞きたかったが、すぐには無理そうだった。
私は彼に接近することを考えた。
趣味やお酒、好きな食べ物などを聞いて、「まあ、これからもよろしく♪また飯でも行こうや♪」と言った。
加藤は無表情のまま「はあ」とだけ答えた。
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