S先生達はというと相変わらず、他の奥さま達にも、酒を勧められながらボディータッチをしている。酒癖の悪いセクラハおやじだ。
それを見て内心少しホッとしていた。妻だけを狙っているのではなく、女性なら誰でもいいんだ。
ほどなくして、中締めとなった。
皆で、万歳をして、一旦はお開き。
それと同時にS先生が口を開いた。「今日は学部長先生のお計らいで、このあとの場も用意して下さってまず!!ここからタクシーで10分程度の○○ってお店です。貸し切りして下さってます。分乗して行きましょう。あっ、参加費用は今日は学部長先生のご好意に甘えさせて頂きましょう。では皆さん、また、のちほど♪」
皆、拍手で盛り上がってはいるが、本心では「これじゃ、断れない…」って思ってる。
少し飲みすぎた私は心の中で呟いた。
「まるで踏み絵、やなぁ…」
どこの大学のどの学部にも派閥はある。誰の派閥に入れるかで、立場や環境まで変わってしまう。S先生は学部長の側近で、正に右腕的な存在で、私はS先生のお陰ですんなり学部長の派閥に入り、現在の立場を頂いた。S先生には感謝している。しかし…
私は妻に「先に帰るか!?ちょっと飲みすぎたやろ!?」と聞いたが「大丈夫、すぐに終わるやろうしね」と妻は笑顔で答えた。
店を出る前にS先生から店の名刺を渡され「タクシーのドライバーにこれを渡したら分かるわ。」と言われた。
店を出ると私よりも若い同僚がタクシーを拾うために 手を上げている。
学部長の運転手がすでに車を停め、待機していた。
学部長は「先に行って待ってるわ」と言いながら、車に乗り込んだ。S先生がすかさず「学部長、ご一緒させて頂いてよろしいですか!?」と声を掛けると、「どうぞ」と速答。
S先生は「まだ、乗れるから…あっ、ユキさん、一緒に行こう」と促した。妻は私の顔を見たが、私は何も反応することが出来なかった。
後部座席には学部長が乗っている。
妻は「いえいえ、そんな私のようなものが…恐れ多いです。」と断ったが、S先生が「まあ、いいからいいから♪学部長を待たせてしまうよ」と促され、後部座席に入れられてしまった。すぐにS先生も後部座席に乗り込んだ。私に 言い様のない不安が襲う。しかし、私には何も出来なかった。
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