ひろさんの連絡先に「会いたい」とメッセージを送った。
平日の早い時間に、私が盗まれた場所へもう一度行く。ひろさんの欲望を満たしたかった。ひろさんには人の妻を盗んで身体を奪って精を放つ。
そういう欲望がある。しかも私のように、大人しめで世間に所属して、自分の役割をしっかり果たし、私のような年齢の女性がいいのかもしれない。
若くてきれいな女性はいくらでもいる。私のように妻であり、母であり、娘であり、部下を持った社会人として活躍している自律した女性がいいのだと言い聞かせた。正直、女性的な魅力には自信なかったし、だからこそ世の中の片隅に隠れるように息づいてきた。それをわざわざ私を見つけ出して、しかも乱暴に犯すというのは、若くて美しい女性ではなく、私なのだと思った。彼の必要としているのは「私」であり、それ以上でもそれ以下でもない。
それならひろさんの欲望の形に添った犯され方をしたいと思った。訴えるなんてとんでもない。私は犯されたかったのだ、彼のような存在に。それは互いに求め合っている。彼の意に沿った形で好きなように私を遣ってほしいと思った。数時間なんて足りない。子供たちを送り出して、子供たちが帰ってきて食事の準備するまでが私の限られた時間。私の身も心も、ひろさんの色に染まり、形になり、性の玩具になりたかった。
こうなるともう男と女というよりは、何世代も通り越してめぐり会った人と人との出会いであり、身体と身体を通した語らいだと思った。
他人は分かってくれないだろう。犯す目的で路上で捕らわれて好きに犯されて、たっぷりと胎内に精子を放った男性に、好きにされるためにまた会って、同じような目に遭いに行く。そんなことを理解してくれる人がどこにいようか。陰と陽ががっちり噛み合った月と地球照のように満ちては欠け、欠けては満ちする一つの球体が重ね合わさるだけなのだ。
世の中は分からないことだらけ。男女の性的な関係なんて、未知。そのことを見ようとしない、知ろうとしない方が多い。私はひろさんに見つけられたのだ。私ではないとひろさんを満たすことができないとすら思った。ミクロボディにくたびれた肉片のついた華奢な器に、どこまでも凛として自分の運命と未来を託するだけの勇気と祈りのある清らかな存在だと信じていた。自分の心身を捧げたかった。そのためにまた犯されに行く。
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