財団法人女性のためのアジア平和基金の委託研究「高校生の性暴力被害実態
調査」が,8月27日東京で報告された。
それによると,「無理やりのセックス」被害は,回答を寄せた女子高生全
体の5.3%に及んだ。その相手は「恋人」が35.9%で最も多く,場所も「相手
の家」が57.7%だった。調査にあたった大阪教育大学講師の野坂祐子さん
は,レイプに関しては「暗い夜道で見知らぬ人に」と思われやすいが,特に
高校生の場合は「デートレイプ」に注意が必要と強調した。
●調査協力をためらう高校
調査対象は,東京および九州地域の12の高校の生徒2346名(女子1463名,
男子883名)。研究班の知人の紹介などの方法で調査を依頼したが,その時点
で20以上の高校に協力を拒まれ,いったん承諾が得られた22校のうち10校に
も最終的には拒まれた。
生徒の性暴力被害は学校関係者にとっては,触れたくない問題,対応が分
からない問題ということだろうか。研究班責任者の大阪大学講師・野坂祐子
さんは,性暴力被害の実態を明らかにすることは,被害者支援,社会啓発な
どのために欠かせないと,今回の調査の意義を語った。
調査方法は,無記名・自記式。教室で用紙配布,回答者各自が用紙を封入
したものを回収することで,プライバシーの保護に努めた。有効回答率は
98.3%だった。
性暴力の定義は「本人の意に反する性的言動・性的接触」とし,脅迫や身
体的暴力の有無は問わない。
主な質問項目と,それぞれの回答結果は次のとおり(数字は被害率)。
Q1 あなたの体について,からかわれたり,いやらしいことを言われたこ
とがありますか。
女子 33.0 男子 20.7
Q2 相手の裸や性器を,わざと見せられたことがありますか。
女子 35.1 男子 12.7
Q3 無理やり,体を触られたり,抱きつかれたことがありますか。
女子 37.2 男子 13.6
Q4 無理やり,セックスをされそうになったことがありますか。
女子 13.2 男子 2.7
Q5 無理やり,セックスされたことがありますか。
女子 5.3 男子 1.5
Q6 携帯電話や,出会い系サイト,インターネットで性的にいやな体験を
したことがありますか。
女子 10.1 男子 2.4
●「身近な場所で,親しい人から…」
野坂さんは,これらの調査結果から,高校生は性暴力被害の高リスク期に
あることを指摘した上で,特に「デートレイプ」の頻度の高さを強調した。
前項のように,女子の場合,レイプ未遂の被害は13.5%,既遂は5.3%とか
なり高い。その相手は未・既遂とも同様な傾向を示しており,既遂の場合,
「恋人」35.9%,「知り合い」34.6%,「友だち」29.5%,「知らない人」
11.5%,「教師」5.1%,「家族」「その他」各1.3%だった。
その被害の場所は「相手の家」57.7%,「自宅」11.5%,「学校内」
7.7%,「乗り物」5.1%などであった。
また,自由記述欄から高校生の声を聞くと,ショックや怒り,人間不信・
対人恐怖などを残しているケースが多い。また「満員電車に乗りたくない」
などの回避,「だれにも相談できない」といった孤独感の訴えも目立った。
以上のように,高校生を対象とした性暴力被害の包括的調査は,日本では
初めてのものであり,「身近な生活圏における,親しい人からの被害という
特徴」が浮かび上がった。
被害者支援,社会啓発あるいは被害防止のための実証データとして,今後
の活用が期待される。
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