G市の千石湯は家族営業の昔ながらの銭湯だった。
番台は脱衣場の真ん中で、女側の入り口からは男はよく見えるというか、丸見え。
たまにそこの大学生くらいの娘が座っていた。まあかわいい感じで、小説を読んでいることが多かったが、牛乳とかひげ剃りを買うときなど、客を見ることもあり、P丸出しの中学生なんかは半ぼっき状態で、見られていた。
そこには70くらいのじじいがいて、掃除係をしていた。ステテコだけはいて、男湯と女湯をいったり来たりしていた。毎日のことで常連客からは空気みたいな存在かもしれないが、初めて行ったときはびっくりした。
彼女とはそこにときどき行ったことがあったが、定期的に女湯のゴミなんかを片づけに、じじいは入ってきたそうだ。脱衣場も浴室も遠慮なし。それどころか、湯加減を尋ねたり、世間話もしていた。夏は大学生の合宿があり、20人くらいが一気に入ることもあったが、そこにもじじいは入っていった。
洗い場のゴミかごを1つ1つ見ていくので、髪を洗っている女子大生が並んでいてもその間に入ってゴミを片づけるから、乳も丸見えというか、いっぱい見たそうだ。おれの彼女はあまり前を隠していなかったそうだが、コンタクトをはずして入っていたので、すっぽんぽんも見られたらしい。おまけに湯加減はどうかと声をかけられたこともあった。
たぶん、この世で一番幸せな老後を送っていたひとりではないだろうか。
でも聞くところによると、10年以上前からそうだったらしく、60前に女湯へフリーパスだったのかもしれない。あー、うらやましい。