監禁暴行被害者の場合-4
私達は別室に缶詰状態になって、涼子から提供された、
実録レイプビデオを、徹底的かつじっくりと分析した。
こういう公序良俗に反するビデオの類は、何度かお目にかかったことがあるが、
そのほとんどは、いわゆるヤラセに属するもので、
実録物でもこれほどの物は滅多に無い代物であった。
このビデオだけが持つ独特の雰囲気、それはレイプ被害者の子供までが
写し出されているのである。
母親が何人もの男に組み敷かれ、狂喜に悶え、善がり泣く側で、
何事が起こっているのか理解出来ずに、お菓子と玩具に夢中になっているシーン。
男の肉棒でバックから凌辱されながら、母親らしく子供を寝かせ付けている場面。
これらの画像は、幸せそうな母子の、日常的な生活場面を織り交ぜながら、
その母親が性地獄に叩き落とされていく様が、見事に描かれていた。
こんなビデオが世に出ていったなら、あっという間に裏社会に流布するだろう。
現に、このビデオを元に、販売業者を突き止めた時、既に大量のコピーが
出荷された後であった。
我々は通常通り、今までの捜査内容を元に、現場検証を行うことにした。
また事件の内容を考慮して、被害者のプライバシーを守るため、
現場検証も隠密に行うため、以前使用したことがある
『刑事課分室』を使って行うことにした。
また立ち会う人間も、我々2人の最小限のメンバーとした。
そしてその場の指揮を執るのは、もちろんベテラン刑事の方である。
正確を期するため、事件当日の服装を依頼したが、すでに処分したとのことで、
この時着てきた服装は、以前自宅を訪問した時のスリット入りスカートであった。
「奥さん、わざわざこんな所まで御足労をかけて、申し訳ない。
本当は被害現場で捜査するもんだが、場所が特定出来ないし、
あまり公に現場検証すると、多くの目に触れることにもなるんでね。
そんなことになると、奥さんも困るでしょう。」
「は・・はい。でも、現場検証というのは?」
「現場検証というのはね、証拠固めをするために、事件を再現するんですよ。
再現するといっても、まあ、真似事をするようなもので、
お子さんまで連れだして、なんてことはやりません。
お子さんは置いて来られたんでしょう?」
「ええ、実家に預けてきました。」
「それは良かった。1回で終わらせるために、夜遅くまで掛かるかも知れない。
奥さんも何度も出かけてくるのは大変でしょう。
ですから、今回で現場検証が終わるよう、協力して下さいね。」
「はい、分かりました。」
涼子はこの1度だけで終えてしまって、早く子供の元に帰りたいと素直に答えた。
この先、どんな卑劣な罠が待ち受けているか、知る由もない。
「普通、現場検証を行う時は、もっと多くの人間が立ち会うんだがね、
奥さんの気持ちを考えて、私達だけで行うことにしたから、
何でも素直に従って下さいね。」
涼子はゆっくり頷いた。
「では拉致された時のことですが、1BOXタイプの車でしたね。
こちらのソファーを、車のシートに見立ててやってみましょう。」
刑事はソファーの側に涼子を立たせた。
「車には、いきなり引きずり込まれたのですか?
後ろから羽交い締めで・・・、こんな風に・・・」
いきなり彼女を後ろから捕まえると、ソファーに押し倒した。
「きゃっ!!」
あまりにも急なことに、涼子はスカートの裾を翻して、ソファーに倒れ込んだ。
はっと気が付いて、太股まで露わになったスカートを押さえる。
その手をベテラン刑事は、ぐっと捕まえた。
「奥さん、出来るだけ正確さが必要なんですよ。犯人は3人だったはずだ。
ということは、手も押さえ付けられ、スカートの乱れも直せなかったのでは?」
涼子は怯えながらも、ゆっくり頷いた。
しかし、せめて下着までは見えないようにと、いじらしく足を動かす。
「こんなことはどうでしたか?」
そう言いながら、今度はスカートを大きく捲り上げ、スカートの中を覗く。
「いやっ!! 止めてっ!!」
「奥さん・・・。これから奥さんをレイプしようとする奴らだ。
スカートの中を覗くなんてことは、当たり前の事でしょう。」
涼子は、完全に怯えきっている。
と、その時、誰かが分室の玄関を叩く音がした。
ここで現場検証をしていることは、誰も知らないはず。
一体どういうことか不審に思っている内、以前会ったことがある
T警部補が鍵を開けて入ってきた。
「いやぁ、非番なんでね。何かお手伝いでもと思って・・・」
「おお、これはいい所に来てくれた。いや実はね、この奥さんが3人がかりで
レイプされた時の検証中なんだがね、人手不足で困っていたんだ。
それにこの奥さんが、なかなか協力してくれなくてね・・・」
あまりにもタイミングが良すぎる。
しかも、この事件と何ら関係の無い部署の人間である。
しかしT警部補は、そんな私の懸念をよそに、K刑事に頼まれたとでも
いうような態度で、さっさと涼子の手を後ろ固めに縛った。
私はこの時、全てを悟った。
これから2人がかりで、現場検証という公務を名目に、
被害者である涼子を、嬲るつもりなのだ。
今までにも会ったことがあるこの警部補は、我が先輩刑事の悪徳仲間なのであろう
。
おそらく今までにも、警察組織を利用して、何らかの悪事を働いたのかも知れない
。
また、このような性犯罪被害者の女性に対し、捜査のためと誤魔化して、
非道を働いたこともあったことだろう。
それが、涼子を餌食として、今まさに目の前で展開されようとしていた。
-つづく-