監禁暴行被害者の場合-1
性犯罪で最も多いのは痴漢行為だが、以外と多いのが婦女子への暴行事件である。
最近の犯罪の凶悪化の傾向として、年頃の女性に対するものだけでなく、
中学生や小学生にまで被害が及んでいる。
中にはDV、すなわち家庭内暴力として、幼児への性虐待事件も発生している。
また単に暴行を加えただけでなく、揚げ句には殺人にまで発展するケースもある。
このような事件になると、当然警察が動くことになるが、
よく言うところのレイプ被害では、警察が知らない場合が結構多い。
ご存じのように、レイプ事件の場合は、親告罪すなわち被害者からの
告発によって、初めて刑事事件として成立する。
この被害者側からの告発が必要というところで、何も届けが無いままに、
うやむやになってしまうケースが相当数あると見てよい。
正確な統計データは無いが、うやむやになる場合の被害者としては、
独身女性よりも既婚女性に多いようである。
普通に考えると、奥さんがレイプされたら、夫が黙ってはいないはずである。
ということは、何故かは判らないが、夫にも隠しているのである。
レイプの様に無理矢理犯されたとしても、結果的には夫以外の男と
SEXしたことになってしまう。
レイプされた女房を、優しく抱きしめてくれる夫ならよいが、
男特有の理不尽な解釈をする夫なら、場合によっては離婚問題まで発展しかねない
。
こんなことを考え巡らせる内に、結局誰にも言えないまま、
一人でレイプの傷に耐えているのかも知れない。
この事件が我々の知るところとなったのは、実は被害者からの告発ではなく、
病院からの通報によるものであった。
そしてこの事件は、主婦を被害者とする、非常に特異なものであった。
被害者の涼子(仮名、敬称略)は、当時33才の普通の家庭の主婦。
夫と幼稚園に通う子供との3人暮らしであった。
夫は建設関係の仕事で、ほとんど毎月のように1週間ほどの海外出張があったよう
だ。
被害に遭ったのも、夫が出張中の時で、幼稚園後の幼児塾から子供と
帰宅する途中、子供と一緒に車で誘拐された。
犯人は3人組の男で、一晩中乱暴を受け、翌日子供と共に解放された。
ここまでならば、よくある事件かも知れないが、この事件の特異性はここから始ま
る。
夫は極度の潔癖性で、例えレイプと言えども、他の男のペニスを受け入れた妻を
許すはずがないと思われた為、彼女は全てを胸の内にしまった。
そして2ヶ月後、体調の変化から妊娠していることが判る。
涼子は子供の父親が、レイプ犯の誰かであることを確信した。
夫に言えない彼女は、今度の夫の出張中に、密かに堕胎することを決意した。
そして夫が出張で旅立った後、再び子供と共に拉致され、
今度は5~6人の男達に、3日間に渡って昼夜を問わず犯され続けた。
その後、前回と同様子供は無事のまま解放されたが、彼女は解放された直後、
激しい痛みに襲われ、担ぎ込まれた病院で流産の処置を受けた。
この時診察した女医が、傷ついた女性器を診て事件性を確信し、
警察に通報してきた訳である。
最初、夫に知られることを恐れて、頑なに拒否していた涼子だが、
医者にも内密にさせることを約束させて、初めて事件の全貌を語り始めた。
こういう事件の場合、犯人に暴行などの前科があれば、
写真などから被害者に特定してもらうことが出来るが、
そうでない場合は、犯人に辿り着くのが、非常に困難になる。
また例え写真があったとしても、レイプの被害者のような場合は、
自分を襲う暴漢の顔を、冷静に覚えているはずも無く、
時によっては、目隠しをされて暴行されるケースもある。
一応モンタージュの作成を試みるが、手がかりとなるのは、
恐怖に怯える被害者の記憶でしかない。
そして物的な手がかりとしては、被害者の体内に残された、
犯人の精液くらいのものである。
これで犯人の血液型や、DNAの型を知ることは出来るが、
これは犯人が判った時初めて役立つ物であって、犯人を捜し出すには、
何の役にも立たない。
このように、犯人を検挙することは、至難の業と言っても過言ではない。
しかしこの事件の場合、物の見事に犯人グループを挙げることが出来た。
それは、今までのレイプ事件では、表だって見られなかった、
重要な証拠物件があったからだ。
被害者に暴行を加えている現場の『レイプビデオ』。
こういうものを犯人が撮影し、被害者の口を封じる口実にすることはあるが、
犯人側の思惑が功を奏してか、警察が知るところまでには至らない。
しかし今回は、医者による的確な判断により、警察に通報があったことと、
このビデオが、被害者本人に手渡されていたことにより、
これを糸口として、徹底した捜査により、犯人を捕まえることが出来た。
我々がこのビデオを、重要な証拠として、提供を受けた段階で、
こういう裏ビデオに相当するものを扱う、業者関係を調べて回った。
ビデオの販売を促すため、業者自身がレイプ事件の首謀者となることもあるし、
犯人側が小遣い稼ぎのために、業者のところに売り込むこともあるからだ。
我々の予想通り、ある業者から事情を聞いたところ、
そのものずばりのビデオを持ち込んでいた。
そしてこのビデオを持ち込んだ人間を、何とか絞り込むことが出来たため、
後は芋蔓式に、一挙に犯人グループを逮捕することが出来た。
しかし被害者の涼子が受けた暴行は、ビデオに記録されたものだけに
留まらなかった。
彼女は、腐りきった者達に、更なる暴行を受けたのである。
-つづく-