夜10時過ぎ、悦子は近所の銭湯に出かけた。
職場ではコンタクトをしているが、自宅から数百メートルしか離れていない銭湯に出かけるときなどはメガネである。
番台に座る馴染みの女将に入浴料を払って、他愛もない会話を交わしながら着衣を脱ぐと、悦子は洗い場に入った。
遅い時間帯のせいか、女湯は入ってから出るまで「貸し切り状態」だった。
入浴を済ませて洗い場から出ると、脱衣場の床に滴を落とさないように湯上りマットを敷いた上り口で、股間を含むカラダ全体を絞ったタオルで丹念に拭った。
悦子が最後の客のようで、男湯の方からも物音は聞こえて来ない。
カラダを拭い終わると、悦子は前も隠さずロッカーに向かった。
女将とお喋りしながら着衣を脱いだので、利用したロッカーは番台から程近い。
風呂の道具が入った籠をロッカーの上に置き、番台に目を遣った悦子はギョッとした。
番台にはいつの間にか中年男が座っており、全裸の悦子をジッと見ていたからである。
店は10年程前から月に2~3回利用しているが、番台はいつも女将かパートの中年女性で、男が座っているのは初めてだった。
悦子はメガネを外しているし、相手はマスクをしているので顔の表情までは分からないが、舐めるようなネットリした目つきだけは感じた。
上り口で股間を含むカラダ全体を丹念に拭い、前も隠さず番台の方に近づいてくる全裸の悦子をずっと見ていたのだろう。
全裸の姿を男の目にさらすのは、4年前に急逝した夫以来のことである。
でも、それは灯りを暗くした寝室の中で、今回のようにカラダ全体を隈なく照らす蛍光灯の下ではなかった。
悦子は胸の膨らみがほとんどない貧乳で、乳首だけが飛び出ている。
おまけに5歳年下だった相思相愛の夫と死別し、40歳代後半で閉経してからというもの、ヘアがごっそり抜け落ちてしまった。
下腹部はプックリとしたデルタ地帯と、その中央を走る縦筋が露わになっている。
男の露骨な視線は、その胸と下腹部に注がれているようだった。
悦子は思わず胸と下腹部を手で覆って身を屈め、背中を番台に向けたが、そんな恥じらいに満ちた仕草も、男の性欲を刺激するだけだったかもしれない。
大急ぎでロッカーから取り出したバスタオルを纏り、素早く下着を着けて服を着ると、一刻も早くその場を逃れたくて濡れ髪のまま店を出た。
番台の横を通り過ぎるとき、夫の死後忘れかけていた異臭を感じた。
男が全裸の自分をジッと見ながら、番台で何をしていたかを知った悦子はゾッとした。
上がり口では上体を深く屈めて股間や太腿の裏側をタオルで丹念に拭ったので、男に陰部まで見られたのではないかということが、帰り道で気になったばかりか、知らぬ間にスマホで盗撮されたのではないかという不安も頭をよぎった。
自宅の風呂では得られない寛ぎと安らぎを与えてくれる近所の銭湯だが、自分を文字どおり視姦した男がまた番台に座っているかもしれないと思うと、悦子は今後とても利用する気にはなれないでいる。
職場の先輩・悦子さん(仮名)から聞いた、隣町の銭湯でのおぞましい体験談です。
二人で天然温泉を利用したときに告白されたことを、小説ふうに仕立ててみました。
内容に創作はありませんし、以前から一緒に温泉を利用する仲で悦子さんのカラダつきは見知っていますから、描写にも誇張はありません。
悦子さんは50歳代前半のとても美しい未亡人で、職場でも中高年の男性客に抜群の人気があります。
彼らがこの一件を耳にしたら、さぞかし番台の男を羨ましがるでしょうね。
番台の男についての情報も得られました。
道で出会った銭湯の女将に悦子さんが訊ねたそうです。
悦子さんが利用している隣町の銭湯では、毎日の簡単な清掃に加えて定休日前日の閉店後に本格的な清掃作業を行うのですが、そのために最近雇われた40歳代の独り者で、作業を行う日には閉店間際の時間帯に女将に代わって番台に座ることもあるとのこと。
女将は「イヤだった?ごめんなさいね。普段はいないから、安心して」と謝ったそうですが、番台の横を通り抜けるとき感じた異臭の正体が男の放出した精液であることは、悦子さんもすぐに分かったようです。
番台式銭湯の店主のように普段から女性客の裸を見慣れているわけでもなければ、女体に接する機会もない中年の独り者ですから、全裸の美しい悦子さんをジッと見ているうちにガマンできなくなり、番台でオナニーしてしまったのでしょう。
男はそれ以降、記憶に焼き付けた悦子さんの裸をオナネタにしているに違いありません。
番台の男に裸をガン見されたばかりか、その場で射精までされてしまったのですから、悦子さんが受けた精神的ショックは大きいと思います。
銭湯で番台の男にイヤらしい真似をされたという経験がある女性は、悦子さん以外にも結構いるのではないでしょうか?