イカれたところはあるが、彫り師としての腕前は一流だった。弟子入りしてから2ヶ月後に美しい若い女性が店に訪れた。その女性は新しいタトゥーを望んでいた。水着姿になった女性の肌は真っ白で繊細だった。
先輩は電気針の回転数と針先の出具合を調整し、スピードを変えて始めた。治療用の電動ベッドにうつ伏せになった女性の肌に針を差し込み、痛みに耐えながら彫り進めた。
しかし、先輩の執念が過ぎることが明らかになった。
電気針の回転数が速すぎ、針先の出具合が深刻になっていた。女性は痛みに我慢しようとしたが、次第にその耐え難い痛みに耐え切れなくなり、失神してしまった。それでも、先輩は続けていた。驚いたが止めさせることもできず、見守るしかなかった。
少し時間が経つと、先輩は作業を中断し、休憩するからコンビニに行ってタバコと珈琲を買ってくるよう頼まれた。コンビニは小走りで行っても往復で10分はかかる場所だった。
時間が掛かり慌てて施術室に戻ると、何故か女性が電動ベッドに仰向けになっていた。先輩は部屋の隅にある椅子に座り、スマホを操作していた。買ってきた物を渡した後、さりげなく女性の体を見た。トップスの水着は両胸とも少しズレていた。ボトムスの水着は横にめくれていた。半分ほどインナーショーツが見え、食い込むようにシワができていた。
すぐに部屋を出ると追いかけるように先輩が出てきて、極度の貧血を起こしたらしく、その日の施術は中断と言われた。女性の緊急連絡先へ電話して、店の前で待機していろと言われた。女性が気になったけれど逆らうことはできず、店の外で待機していた。40分ほど経つと、何も知らない彼氏らしき男が息を荒げながら現れた。
嫌な予感がするけれど店内に入るしかなく、大きな声で迎えにきましたと発したあと施術室へ向かった。女性は寝台に移されタオルが掛けられていた。男は動揺しながら女性の体を揺すり名前を呼び始めたが、先輩がすぐに止めさせた。気を失っているだけだと説明したが、救急車を呼んで欲しいと言われた。結局、彼女は病院に運ばれた。
痛みに対する許容範囲の超越に驚いたらしく、2度と店には戻ることはなかった。
その1ヶ月後、10代ではないかと思われる学生風の女性が来店し、同じく背中と腰にタトゥーを望んでいた。水着に着替えた彼女はうつ伏せになり、身体中に大量の汗をかきながら痛みに耐えていた。最終的には耐え難い痛みによって失神してしまったが、先輩はそのまま続けていた。
目の前で見学していることを気にもせず、ボトムスの水着を下げ、丸見えのまま掘り続けた。もう少しで休憩するからタバコと珈琲を買ってこいと言われ店を出た。戻る寸前に電話がかかってきて、水も買ってこいと言われ、2度も往復することになった。
彼女の緊急連絡先に電話するも繋がらず、先輩に告げると片付けはしておくから今日は帰っていいと言われた。
お願いしますと返事をして、その後2度と店には戻らなかった。
大袈裟にイヤらしく表現したが、経験した実在する店である。