ある若手女優と一緒に食事する機会があった。俺が役員をしてる会社のTVC
Mは彼女を起用していた。これからの若手ということで予算も適当であった
し、以前、たまたま見た映画のDVDで観た彼女の演技がとても良かったから
だ。当時、十代の彼女は美しくもさわやかな印象だった。わが社のイメージU
Pになると思い、俺が強く押して実現したことだった。
実は、時節柄4月からのTVCMは打ち切る予定だった。これは、いわゆるエ
ージェントを超えての事務所側からのアプローチなのだが、俺の力ではなんと
もなりそうにない。
待ち合わせたレストランのテーブルに着き、しばし関係者を含めての会話。で
は、ということで俺と女優2人だけ残されての食事が始まった。初対面ではな
い、彼女は年に1度は挨拶に来社してくれている。彼女が「あの事」を切り出
す前に、今度ばかりは力になれないと切り出すべきだが、世間話ばかりでキッ
カケがつかめなかった。
食事が終わりかけるころ、彼女は切り出した。
どこか静かなところでゆっくり飲みたいですね。
彼女を見ると悲痛な表情だった。必死なのがわかる。この不況が、清純な女優
をここまで切羽詰らせていたのか。
じゃあ、行こうか。俺は席を立った。
その後、どうにかこうにか彼女のCMは継続されることになった。どうにか約
束を果たすことが出来たのだ。あの時彼女を思いっきり抱けたことは良い思い
出にというか、ズリネタなりそうだ。いずれ時間を作って彼女出演のDVDを
ゆっくり観てみたい。