忘れられない体験

会社の新年会が終わったあとのことです。
私は、みんなの後に続き駅に向かって歩いてました。遅くまでやっている果
物屋さんの店先に、串ざしの苺が並べてあり、つい立ち止まってました。週
末なのですごい人出です。あっというまに会社のみんなと離れ離れになりま
したが気にもとめませんでした。裸電球にてらされた赤い苺が、とてもかわ
いくてキレイでしたので、ぼおっと見てると「食べる？」と声がして、見る
と隣りに、いつも仕事でお世話になってる先輩がいました。入社２年目の私
は、まだ失敗ばかりで、この先輩にはよく怒られてしまいます。ただ怒るだ
けじゃなくて、頑張ったときは「上達したね」と笑ってくれる、優しい人で
す。奥さんもちいさな娘さんもいるって知ってたから、あわいアコガレを抱
いてました。「えっ？なぜ」「だってふらふらしてて危なっかしかったから」
私たちは、苺の串ざしを手に、新宿の雑踏を歩きました。あまりに人が多い
ので、途中でシャッターが閉まってるお店の軒下に行きました。
「私とＴ村さんが苺で二次会してるなんて、みんなが見たら驚きそうですね」
「そうだね」先輩が弱く笑いました。そして「その裏行こうか目撃されない
よ」お店とお店の隙間を見ました。私はそのとき（これって、もしかして）
と怖くなったのですが、先輩に好意を持っていたので、「わーい」と、わざ
とはしゃいで、薄闇に潜りこみました。「やっぱり危なっかしい」後ろで声
がします。「警戒しないのか？」私の背中は、先輩を待っていたと思います。
「何を警戒するの？」私が笑うと、先輩は後ろから、私をそっと抱きしめて
きました。「えっ」私が声をあげると、彼は「ごめん、いやならすぐやめる」
と言ったのです。私があわいアコガレを持ってることに、きっと気づいていて、
だから、そうしてきたのでしょう。「信じられない」私の声は震えていました。
「僕もだよ」「どうしますか？」「どうしましょうか」と言いながらも、先輩
は迷うことなく私の体を撫で始めました。酔いもあったし、何より私は彼に恋
心を抱いていたので、抵抗するちからなど、出ませんでした。私はその手に手
を重ねていました。いけないと思いながらも、重ねた手を、撫でていました。
先輩の手がそっと私の胸に触れました。「はあっ…ん」思わず声が出てしまい
ました。すると先輩はますます激しく体を愛撫してきました。「どうしてぇ？」
「理由と僕と、どっちが欲しい？」先輩が言います。すごく悪そうに響く言葉
で、私は感じてしまいました。「奥さんとうまくいってないの？」先輩は答え
ません。「浮気したい気分なの？」答えません。「私なら拒まないと思った
の？」ちいさく、先輩が頷いたように思います。私が顔をあげると、彼は曖昧
に苦笑いして、キスしてきました。そのまま私たちは何度も何度もキスをしま
した。苺とウイスキーの味がしました。
そのまま、くちびるから、首、耳、慣れた手つきでシャツのボタンをはずされ、
ひらいた胸のあたりにまで…。途中で我慢できなくなって「ん、く」って声を
漏らしてしまいました。先輩は「もっと声きかせて」と言いました。「はずか
しい」「そうだね、いつもの君と全然違う」囁きながら、ひらいたシャツの中
に手をすべりこませてきました。少しつめたい手の感触。「かわいいよ」する
りといきなりブラの中に手が割りこんできました。「あっ、や、やぁん」「こ
れ？」「やぁぁん」ブラのカップをぐいと押し上げて、こぼれた胸を、手のひ
らで包むようにまるめるように揉まれて、私はもう我を忘れてました。「ああ、
いい」先輩が呼吸を荒くして言いました。そして、その指が私の乳首をみつけ
てしまい、そこを優しくころがしてきたので「あっあっやぁぁぁん」声はとま
らなくなってしまいました。「信じられない、Ｔさんと、こんなこと、するな
んて」私は普通にしゃべろうと努力しながら、言いました。でも、できずに、
声がうわずってかすれて、喘ぎ声になってしまいました。「はずかしいよぉ」
すると先輩は、また「かわいいよ」と言いました。
私は悲しくなりました。男の人は、欲しがるときだけ「かわいい」とか「す
き」と言います。ことが終わって、それぞれの家に帰ったあとは、もう二度
と先輩から「かわいい」なんて言われないだろう･･･そう思うと、悲しくな
りました。だから私はひそかに「もっと言って」と願いました。
私たちはそのまま、繁華街の裏にあるホテルに行きました。