1985年は色んな出来事が起こったが、桑田・清原という同い年のスーパースターの姿をテレビで視て自分の凡庸さを悲観し、阪神タイガースが掛布・バース・岡田のクリンナップで27年ぶりに優勝したり。
そして、初冬の冷たい雨が降っていたある朝、国鉄の環状線がゲリラテロのターゲットになり、始発から全線ストップして、母親に叩き起こされ、普段は使わない地下鉄谷町線で学校に行くことになった。
今もそうだが、京橋あたりから天王寺に行くには環状線か地下鉄谷町線しかないので、皆が地下鉄谷町線に集中したために、車輌はすし詰め状態だが、俺はいち早く扉脇の三角スポットを確保して、一息ついていた。
慌ただしかった朝からのことを頭で整理しつつ、人生初めてのゲリラテロ事件に遭遇したことに、ほんの少し興奮を覚えた時、次の停車駅で新たな乗客が乗り込んきた。
ここで中に流されては、さっきの苦労が水の泡になると、少し身構えたが、新たな三角スポットへの来客を素直に受け入れることにした。
新しい来客は、憧れのS天王寺女学院のJKだった。
こんな事件でもない限り、きっと出会うことがなかっただろう。
S天王寺女学院は地下鉄谷町線に最寄り駅があり 、自分が普段利用している国鉄(当時)環状線ではほぼ出会わない。
なぜなら、自分の通う高校は、天王寺からまだ1時間はかかる田舎町にあったからだ。
扉脇の三角スポットは、少し窮屈になったが、今度はその窮屈さが、なんとも心地よい。押し込まれた時、ほんの一瞬、自分の前面と彼女の背面の柔らかい部分が触れたようだ。次の瞬間、反射的に身をかわしたので、触れたかもしれないが、大丈夫です。
ん?
彼女の髪はなんともいい薫りがする。
また少しテンションがあがった。
今なら逆に、その薫りを嗅ぐ楽しさを十二分に堪能するだろうが、当時は、何事にも未経験の高校生だから、
女子高生の薫り、即
脳に行くより早く、勃起センサーが働いた。
そして、また次の停車駅。車輌内の人口密度と、身体的圧力も増してくる。いや、好むと好まざるとだ。
今や、完全に自分のカチンコチンな部分は、彼女の背面の柔らかい、そしてぬる温かい部分に包まれている。
頭の中は、一瞬で沸点に達してしまった。
我を失っていた。
いや、むしろ次の衝撃のの方がより衝撃的だ。
自分の、
カチンコチンのチンポが、誰かにつかまれた、
か?
・・・?
ん?
ん!
なんと、
なんと、
背中越しのS天王寺女学院の彼女の左手が、
ガッチリと俺のチンポをつかんでいた。
まるで傘の柄をつかむ様に。
頭は完全にオーバーヒート。
これが何なのか、全く理解できない。
気持ちいいわけではない。しかし、当時大阪ナンバーワンに賢いと言われていた、S天王寺女学院のJKが、現実にこの瞬間俺のチンポをつかんでいる。
興奮した。
というか、脳内は真っ白だ。
次の行動をどうすべきか、全く思い浮かばなかった。
彼女の手は?
全く動かない。
相変わらず、ガッチリとチンポをつかんだままだ。握っていると言うべきか。
自分のチンポのカチンコチンのまま。
周りの誰にも気付かれない絶妙な体勢で。
彼女は、
確信犯だ。
「痴女だ」
心の中で、思わず叫んだ。
親の部屋の押入で見つけた、月刊「宝石」のエロ小説の中だけに出てきそうな、妄想の中だけの出来事が、今この瞬間現実に起こっている。
しかし、次の行動は何も出来なかった。
今なら絶対に、(恐らく彼女も湿っていたはずの)彼女の生温かな部分に指を這わすのに。
ふと、
彼女の手の握力が緩んで、我に還った。
車内放送がS天王寺駅への到着を告げていた。
扉が開き、彼女の後ろ姿が遠退いて行く。
大きな寂しさが心と身体 に急に襲ってきた。
きっと、10分間以上はギュッと握られ続けていた からだろう。
追いたい。
だって、顔も見てないし、それにこの続きも期待したい。
「これで終わり?」
また心の中で叫んだ。
よし、後を追おう。
足を1歩踏み出そうとした瞬間、彼女が
俺の心の叫びが聞こえたのか、
彼女の左手が、
小さくバイバイをしていた。