かれこれ10年前になるお話ですが。
私が中学に入学した直後、一番最初に仲良くなった子は、出席番号順で後ろの席だったマミちゃんという子でした。隣町といっても所詮は中学の学区内なので自転車で行けば近いもので、よくそれから二人は私の家で遊ぶことになりました。
マミちゃんは私の家にはよく来るけれど、私はマミちゃんの家の下までしか行ったことがありませんでした。マミちゃんの家は、今ではもう影も形もみない文化住宅という、昭和な雰囲気が流れる家屋の2F部分で、洗濯機を玄関前の通路に置き、洗濯物とかも玄関の前に干しているような、いいかた悪いですけど、「貧乏な」感じの家だったのです。
私はきっと、家が少し貧しいから、中を見られたくないんだな。。って察し、特に家に入れてほしいとかは言いませんでした。しかし、仲良くなって数ヶ月経ったころ、マミちゃんのほうから珍しく「今日、うちにこない?」と誘ってくれたのです。学校から見れば、私の家よりマミちゃんの家のほうが近いので、私たちは学校帰りにマミちゃんの家に寄ることにしたのです。
そして実際に中に入ってみると、やはり想像通りでした。おいてある電化製品も昭和チックなレトロな雰囲気を出しているものばかりであり、トイレも鎖を引っ張るタイプの和式。決して裕福とは言えない家庭環境でした。そしてさらに聞くところによると、お母さんは小学校低学年の頃に離婚し出て行って、今は父親と二人で生活しているというのです。
さらに、その父親というのも仕事はせず、実母(マミちゃんからみれば祖母)が少しお金を持っているのをアテにし、他には親戚から金を借りて歩き、生活保護を受け、挙句の果てにはパチンコ三昧という生活ぶりだと言うのです。
私は心配になり、「お父さんは殴ったりしてくる人?」と聞きましたが、「厳しいけどそれはないよ」と言ってました。そしてお父さんは最近になって、週に4回くらい、知り合いの建築現場で働くようになった。とも言ってたのです。だからお父さんが仕事でいない間にいつも招待してもらってばかりだから、私にたまには家にきてもらおうと思ったそうでした。
マミちゃんは家庭環境こそは苦しいものの、至って普通のいい子。でした。
そして私たちはそれから暫く、私の家で遊んだり、学校帰りにマミちゃんの家で遊んだりを繰り返しました。そしてその日もマミちゃんの家に学校帰りに寄っていたら、なんと突然、玄関の扉がガチャリと開き、酒によって顔を赤くし、すごい形相で私を睨み付けながら入ってくる、マミちゃんのお父さんの姿があったのです。