親元を離れるために遠くの大学に進学し、ひとり暮らしをしていたある日のこと。
夜、アルバイトが終わり、アパートに戻った。いつものように鍵をあけ、入り口の壁に
あるスイッチで部屋の電気をつける。しかし電気がつかない。「あれ?」一瞬不思議に思
ったけれど、前の晩、電気を消したのはその壁にあるスイッチでではなく、電気について
いる紐を引っ張って消したのだと思った。鍵を2つ閉め、紐を引っ張って電気を付けよう
と、真っ暗の部屋の中へ入る。
突然後ろから羽交い絞めにされた。犯人は部屋の一番近くにある風呂場に隠れていたの
だ。まさに犯人の思う壺だった。密室で声を出しても聞こえない、聞こえたとしても、助
けに入ることはできない。そして部屋は真っ暗で、犯人の顔を見ることはできない。
一瞬何が起こったのかわからなかった。犯人の目的は何か。この人は何をしようとして
いるのだ。とにかく抵抗しなければいけない。私は声を出し、抵抗した。すると、信じら
れないことが起こった。犯人は無言のまま私を殴り、蹴った。私は、殺されると思った。
人はこんな酷いことをできるのだろうか。できるらしい。そして目隠しをされた。
犯人は私のシャツを裂いた。ボタンが床に落ちる音がした。そしてズボンも、下着もあ
っという間に脱がされた。抵抗している人の服でも、簡単に脱がせることができるのだ。
私は全裸になった。そして、ベットにうつぶせに寝かされ、後ろで手を縛られた。犯人の
目的が分かった。私を犯そうとしている。そんなのは嫌だ、絶対に嫌だ。
挿入だけはされたくなかった。挿入を逃れる方法を考えた。「口でするから許して」と
必死で訴えた。犯人は無言のまま私のカラダを触り続けた。もうダメだ、最後の力を振り
絞り、抵抗した。また、殴られ、蹴られた。そして腕を噛まれた。とても痛かった。しか
し抵抗を続けた。すると犯人は私の口を押さえた。「え?何?」今度は苦しくなってきた。
もう死んでしまうと思った。苦しくて、苦しくて、息をしようと必死だった。そして、意
識を失った。どうなったのかは分からない。
気が付くと、哀しい現実だった。中に出されたのは初めてだった。トイレに行き、お風
呂で洗い流し、服を着た。
どうしようかと考えた。そして、遠距離恋愛をしていた恋人に電話をした。「あのね、
私レイプされた」 「は?」 電話の内容はよく覚えていない。彼は私の友達に電話してそ
こへ行ってもらうから待ってろと言った。少しして、友達が来た。友達のお兄さんも一緒
だった。外へ出た。友達の家へは電車で一駅。歩いていると、もちろん人がたくさんい
る。みんなが私を見ているような気がした。駅の前で、友達のお兄さんが「タクシーにし
ようか」と言った。とても嬉しかった。
友達の家に着くと、友達のお母さんが何とも言えない顔で出迎えてくれた。そして、お
風呂に入るようにすすめられた。私はお風呂に入った。自分の体を見て、驚いた。青あざ
だらけだ。噛まれた腕には歯型がくっきりと付いている。カラダのあちこちが痛む。顔も
腫れていた。
朝が来て、恋人が会社を休んで私を連れに来てくれた。彼も、何とも言えない顔をして
いた。そして、何も言わなかった。