これは、実際に私が経験した体験談です。
私は42歳で子供はおりません。主人は大手電気メーカの海外駐在員で私も昨年
の10月まで5年近く、一緒にタイのバンコクに住んでおりました。ちょうど夫た
ちがマレーシアの工場に、出張するという事で、夫の上司の奥さん達や現地で知り
合った大使館にお勤めの奥様達と御一緒に、夫達がいない間に、たまには女性だけ
で羽を伸ばそうと食事をしに行く事になりました。
初めはちゃんとした高級レストランで食事をした後、繁華街のハッポンに行って
みようということになったのです。ハッポンというと怖いイメージがございます
が、中にはちゃんとしたお店もございまして、
「東京の新宿とおんなじよ。」
バンコク生活10年の大使館員の奥様がそうおっしゃり、彼女の案内でホストク
ラブへ行く事になりました。私はハッポンも初めてでしたし、ホストクラブという
のも初めてで、凄く緊張して入りましたが、その様子を見てか、私には一番マジメ
そうな若いホストさんを隣りに座ってもらいました。大学で電子工学を学んでいる
というそのホストさんは、流暢な日本語で、昨年旅行した日本でのことを話してく
ださいました。 京都より奈良がよかった。奈良よりも倉敷や萩など都会から離れ
れば離れるほど日本の美しさが残っている。と、普通、こちらの若者は日本の技術
や芸能関係に付いて話すのに、今時珍しく純粋に日本文化を賛美してくれて、私も
この若者に好感を持ちました。彼も4人の中で私が一番奇麗だ、着物を着たらきっ
と似合うだろうと、私に好感を持ってくれたようでした。一緒に入ったみんなもそ
れぞれ隣りの男性と楽しそうに話し、みんな時間を忘れてお話しに興じていまし
た。
そのうち大使館員の奥様が、
「じゃ、私はお先に…。」
と言って、隣りの男性と立ち上がりました。
私は驚いて、
「あっ、お帰りになるのですか、」
と聞きますと、その奥さんも、他の皆さんもニヤニヤと笑いながら私の方を見た
ので、全ての意味が分かりました。みんなは初めからこのお店で抱かれる男をあさ
りにきたようなのです。
私はもともとそんなつもりではございませんし、そんな事はイヤでした。かと言
って、ここでひとり真面目くさって出ていくのも相手が悪すぎました。今後の夫の
立場を考えると、どうしたらいいか困ってしまいました。すると隣りの彼が
「大丈夫、あなたはそんな人じゃないですよ。わかってます。私が指一本触れず、
無事におうちへ送りしますよ。だからスマイル、この場を繕いましょ。」
そうささやいてくれたのです。私は彼の言うとおり、「総てわかった。」という
顔で隣りの彼の肩に頭をもたげながら笑顔をつくりました。それから残る二人も
次々に隣りの男と立ち上がり店を出ていきました。
「もう少しだけ、お話ししていいですか。今度は私からスペシャルカクテルをおご
りますから。」
彼はそう言うとチャメッケたっぷりの顔でニコッと笑いました。私は彼の言葉と
笑顔に負けて、もう一杯だけお付き合いする事にしました。その時は彼のことを信
じておりましたし、正直、女同士とはいえ気を遣う相手と離れたことで開放的な気
持ちになっていたのです。
運ばれてきたカクテルはチチのようなココナッツミルクベースで、ちょっとスッ
パい気もしましたが、喉ごしのいいものでした。ところが、これは後から聞かされ
た話ですが、そのカクテルにはポナペとかパナペとかいう催淫作用がある薬が入っ
ていたのです。店内は、もともとボックス席とパーテションで区切られていて、他
の様子を見る事は出来ませんでしたが、もう殆ど他のお客もいないようでした。
彼はまっすぐに私の目を見ながら、自分の夢について話してくれます。10分く
らいの間、リラックスして、それでいてちょっとトキメキもある楽しい時間を過ご
しておりました。それでも、今、目の前で今まで信頼し尊敬していた上品な奥様達
が男に肩を抱かれて出ていくのを見送った後では、今まで通りに青年の話しを聞く
事は出来ませんでした。そのころから私の頭の中で、変なことばかり考えるように
なっていたのです。あんなことあったばかりですから当然です。
今頃あの奥様達はあの男達に抱かれているんだわ、そんな事を想像すると、私の
方も胸が苦しくなり、頭が重くなり喉が渇く感じです。私は今と同じカクテルをお
代わりしました。その二杯目のカクテルを飲んだあたりから、私自身の身体の変化
にも気づいてきました。相変わらずのどは渇き、身体が熱く火照り、胸がなんかキ
ュンとしてきて、誰かに思いっきり抱きしめられないと、何処かへ飛んでいてしま
うような不安な切なさを感じました。
目の前の彼もお客さんと夜の相手をするのかしら、今日が初めての手伝いだと言
っているけど、それに話しからすると、そんな仕事が出来そうも無いいい人。
でも彼も男、かわいい男、でもたくましい男。胸まで開けられたシャツから、
赤銅色で筋肉質の胸が覗きます。触ってみたら堅そうな腕、やわらかなシルクのシ
ャツにくるまれた筋肉質の胸、腹筋、そして自然と股間に目が移ってしまう。
実際、その時のわたしはいつもの私ではありませんでした。なんでそんな事ばか
り考えるのか、その時は自分でも分かりませんでしたが、お酒でだいぶ酔っている
のに性的行為に頭の中が支配されて他に何も考える事が出来ませんでした。股間に
彼のモノがくっきりと形を浮かばせていることが見えます。触りたい、おもいっき
り握って、口に含みたい。そして私の身体の中に奥の奥まで突きいれたい。
もう私の身体も心も自分のものではありませんでした。私はそんな気持ちを振り
払おうと目を一文字につぶって、ひとりでハァハァと呼吸をしながら、彼の肩にも
たれかかっていきました。彼は優しく肩を抱き寄せてくださり、その肩をまわした
手で、細い湿った指で私の髪を撫ぜてくれます。髪から肩、髪から首筋、彼の手が
動くたびに、身体中に電気が走り、全身が性感帯に成ったように震えがきて、私は
表面上では感じているのを悟られないようにしているつもりでしたが、心の中では
彼のしてくれる行為を、それにつれて操られる快楽を楽しんでいたようです。他人
事のように申しますが、実際、そのときの私はもう頭の中が混乱してしまっており
ました。そのうち、彼はブラウスのボタンをはずしてきました。
(このままじゃいけない、このままだとドンドン落ちてゆく)そう思いながら、
彼の愛撫に耐えられなくなり、ため息とともにやっと「ダメ」と言うのが精一杯で
した。
彼の手の動きが一瞬止まり、私も目をあけて見つめあうかたちになりました。
彼の目はとても純粋で無垢でした。じっと見つめられると吸い込まれていきそう
で、彼に見つめられた私は、まるで催眠術をかけられたようで、私の身体からドン
ドン力がなくなっていくのがわかります。
彼の顔がドンドン迫ってくる、40歳の私は13歳の少女のように、心と身体の全
てを彼にささげようとしていました。それがカクテルに入れられた催淫剤のせいな
のかどうかわかりませんけど、私は目をつぶり彼の唇を受け止めていました。
それは、今まで味わったことのない快楽への入り口の儀式だったはずです。
ですけど、その後8日間に亘って薬を打たれ、男をそそらせるような衣装や化粧を
させられ、性人形として見知らぬ男たちに身体を奪われ続けた地獄への入り口でも
ありました。
気持ちに整理をつけたくて書き始めましたが、また思い出しているうちに、
頭がおかしくなりそうですので、ここまでにします。