2025/07/12 13:46:48
(IGAP/JM4)
駅前のロータリー。ふと自分の家のある方向を向く文也だったが、クミに「そっちに行くかい」と言われる。家族に聞かれるのは絶対に避けたいと思い、すかさず反対方向に行く。
入っていったのはビル街の路地裏。
「さて、文也くん。早速だけど本題に入ろうじゃないか。君、小学校の頃はイケメンで可愛いと思ってたんだけど、こんな趣味を持ってたとはね…」
文也は何も言えず、その場に立つ。
「佐久間先生…印象薄かったけどね…。文也のクラスの担任だったの?」
「はい…。僕は音楽が好きだったので、その関係でちょっと仲良くなって…。そんなに美人じゃなかったんですけど…なぜか僕の性癖に刺さって…」
自分の性癖を読み上げさせられる文也。
「あの、隣にいた深緑の制服の子は誰?」
「和明…木戸和明…。」
「その子って、どんな子?」
「学年は僕と同じ2年生で、1年の頃クラス会長やってたって…」
「…クラス会長…。普段は真面目な子なのかしらね。」
「た、多分…」
路地裏の薄暗がりで、クミは文也の言葉を聞きながら、どこか納得したように頷いた。
「なるほどね。クラス会長か。普段は真面目そうに見える子が、ああいう時に本音を出すと、余計にインパクトがあるってことね」
クミは腕を組み、文也から視線を逸らさずに続けた。
「それにしても、和明くんの方が、あなたよりえげつないことを言っていたように聞こえたわね。ボクササイズを習ってる先生に、ボコボコに殴られて手コキとか……。なかなか具体的で、聴いてるこっちが引いちゃったわよ」
文也は顔を真っ青にして震えるばかりで。クミはそんな文也の様子をじっと見つめ、小さくため息をついた。そのため息は、呆れを含んでいるようにも、どこか面白がっているようにも聞こえた。
クミは、文也の震える姿を一瞥すると、ふと興味を失ったかのように表情を緩めた。
「まあいいわ。今日はもう遅いし、この話はまた今度ね」
文也は、その言葉に安堵と困惑が入り混じった顔を見せた。クミは、彼のそんな反応を見ても特に何も言わず、くるりと踵を返した。
「じゃあね、文也くん。あんまり変なことして、学校で問題起こさないようにね」
そう言い残し、クミは路地裏の奥へと歩いていく。文也は、その背中が見えなくなるまで、ただ立ち尽くしていた。夕闇が迫るビル街の路地裏に、ひとり残された文也は、ようやく大きく息を吐き出した。